ノスタルジア 4K修復版
■言葉というものを離れたときに、伝わるものがある。
ストーリーを追おうとすれば離れていき、
映像に身を沈めれば、心がそこに広がっていく。
これは、そういう映画だ。
遠ざかれば遠ざかるほど強くなっていく故郷や家族への想いと
どうにもならない現在と
それでもなお、そこに希望を生もうとする私
色彩と画面構成が、
それを区分しながら同時に溶け合っていく
■アンドレイ・タルコフスキーに出会ったのは
シネヴィヴァン六本木だったろうか
いや、たぶん文芸坐あたりだったような気もする
『ストーカー』と『鏡』の二本立てとか
たぶんそんな感じだ。
かなり響いた映画なはずなのに
不思議なことに、記憶はあいまいだ。
何度も繰り返し見た『惑星ソラリス』を含めて
残っているのは、身体感覚を伴う強烈な「イメージ」であり
それがタルコフスキーなのだと思う。
■圧倒的な存在感で包み込んでくる水の感覚
時間的区分や地理的区分の境界線が完全に消え去って
溶け合いつつ同時に存在する感覚
美しい映像を見せてくれる監督はいろいろいるけれど
こういう身体感覚に迫ってくる映像は
やはりタルコフスキー唯一無二のものだろう。
■ラストシーンの長い「間(ま)」。
まだ、エンドロールに入らないのかと
つい、そわそわしてしまった。
この「間」こそ、今の僕らが見失っているものなのかもしれない。
久しぶりに、いい時間を過ごせた。