真夏の昼の事
亡くなった親父が現れた。
夢の中に。
そして、夢から覚めた自分のすぐ傍に。
夢から覚めた後に現れた親父が、現実かどうかは分からない。
でも、すぐそこに親父が立っているような気がした。
3週間ぶりに娘が泊まりに来たので、2人で親父の墓参りに行くことにした。
墓参りを終えて、帰りがけにスーパーで買い物をしてから家へと向かった。
昼前に昼食を済ませ、いつものように、ベッドで音楽を聴きながら昼寝をする。
夢を見た。
妹が、自分の名前を言えなくなってしまう夢。
何度聞いても、真顔で毎回違う名前を答える。
怖くなった自分は、入浴中の親父にそのことを伝えると、親父はすぐに入浴を終えて、自分と妹のところに来てくれた。
親父は、妹にいくつかの質問をした。
その質問に対して、不機嫌になって怒り出す妹。
「ごめん、今のはお父さんの聞き方が悪かったな」
親父がそう言って謝る。
自分は驚いた。
親父が、そんな丁寧に謝るのを見た事がなかったから。
すぐさま、自分は親父に伝えた。
「もっと前から、そんな言い方をしてくれていたなら、もっと分かり合えたのに」
親父は、自分のことを見つめたまま何も言わず、涙をこぼした。
その顔を見て、自分も涙してしまう。
夢はそこで覚めた。
ベッドから起き上がれずにいる自分。
仰向けになったまま、寝る前に聴いていた〝真夏の夜の事〟を、スマホで歌詞を見ながら聴き直すことにした。
その時だ。
ベットのすぐそばに誰かが立っている気配を感じたのは。
何となく親父だと思った。
謝りたかったのか、墓参りのお礼だったのか。
ただの勘違いだったのか。
分からない。
それでも、親父と少しだけ仲直りが出来たようで、何だか嬉しい気持ちになれた。
今宵は親父と酒を酌み交わそうか。
なんて、ただ酒を飲みたいストーリー。
初恋の嵐〝真夏の夜の事〟
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?