残陽 あとがき

悲劇の刻は訪れました。
何の変哲も無い
ただいつもと同じ夕刻の事でした。
これが残陽という物語です。

この話の主人公は紫乃です。
武家の娘としての謹みを持つが故に
紫乃の表現はこうでありました。

作者も信幸には共感を持っていませんでした。
だから何処か淡々と書いていきました。

紫乃の中にあった思考が
次作の「痛快アクション時代劇」である筈の
「まほろば隠れ人」の裏にあるテーマと重なります。

紫乃と信幸は上辺だけの憧れのまま
夫婦になったのでしょう。
本質的には相容れない人物だと思っています。

信幸の中にいる紫乃は
どこまでも理想で空想の人物でしかありません。
紫乃自身を見、紫乃の言葉を聞いていない。

「きっと喜ぶ筈!」

そんな決め打ちでしか事を行っていない。

だから、ふとした瞬間に紫乃の心根を呼んでしまう。
紫乃という女を武家の流儀でしか見ずに
武士を捨てたというのは愚かしいのです。

紫乃を1人の呼吸している人間として扱っていない事が1番の問題であり、信幸をより独りよがりの情けない男として浮き彫りにしました。

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もし僕の書き物や思考を知ってくれている方がいたならば、、、

「あれ?」

と思われるかも。

この残陽は本質的にSide.と同じ事をしているのです。
これがSide.を凍結した1つの理由でもあるんです。

この立ち位置によるすれ違いの思考が、Side.という
現代劇のツボでして、、、

残陽でここまで淡々と纏められてしまうと
最早長編としての意味が吹き飛んでしまうんです。

未熟の極みです。

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さて、読書様が多くないのは知った上で
残陽は如何だったでしょうか?
是非感想を頂けたら幸いです。

残陽は最初から言っていた様に悲劇です。
それは被害者である紫乃にとっての言葉です。
貴方は心の奥底で憎む相手と一緒に暮らせますか?

この悲劇を未来に繋いで下さい。
上辺だけで流されないで下さい。
自分の気持ちと向き合う時間を忘れないで下さい。
作者にはそんな願いがあります。

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さて悲劇の主•紫乃のその後は、、、

読書様が残陽で僕を嫌いになっていなければ
紫乃とはまた会う事が出来ます。

何故なら
残陽はまほろばの江戸の中にあるのですから。


マブ

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