田中康介君の日常 2

確かに運動は人並みに出来なくは無い。
ただ走るのは苦手なんだ。

特にマラソンは無理だ!
瞬発力はあるけど持続力が無い。

サッと動くのはいいんだけど、動きっぱなしは続かない。

それでも紗代子に言われて、早朝のランニングには付き合ってる。

「康介はさ、背も高いんだからバスケとかやればいい
 のよ!」

「だから、、途中でバテるから、、はあ、、」

「バレーボールなんかは得意なのにさ。走り込みが足
 りないからよ!」

「その走り込みがキツいんだけどさ、、」

「やってれば体力上がるのよ!」

「てか、、走りながら、、よく普通に喋れるね、、」

「走り込みの成果よ!」

「ちょ、、待って、、」

紗代子がスピードを上げて、朝の澄んだ空気を切り裂いていく。

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「はあ、はあ、、」

「だらしないなあ!」

「言っとくけどねぇ、、バレー部だって走り込んでる
 からね、、俺なんてバレーボール出来るってレベル
 じゃないからねぇ、、」

「何、それ!?」

「バレー部の名誉の為にさぁ、、」

「変なトコ、気にするよね。」

「いゃさあ。同じ走ってる人と結構すれ違うだろ?
 もしその中にバレー部の人がいたら気を悪くする
 かもだからさあ。」

「そういうトコ、気ぃ使いだよね。」

「そんな褒められる事でも無いんだけど。」

「褒めてないわよ。」

「えっ?あーそう。」

「もう少しさ、周りの目ばっか気にしないでさ!
 康介が思った通りにしなよ!」

「そんな気にしてる訳じゃないけどさ。」

「そっかな。私には、、まあ、いっか。」

何だよ、その引っ掛かった感じは?とは思ったけど、
朝から文句を言われ続けるのも避けたいから黙って流した。

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春は好きだ。
暖かくなると空気に木々の匂いが混ざる。
その中を走るのは中々に気持ちいい。

帰って登校前にサッとシャワーを浴びる。
新学期早々に絡まれたけど、それが日常的にある訳じゃはい。

大抵は平和な学校生活を送れる。
2年になったんだから、そろそろ朧げながらに進学の事も考えなくちゃならない。

受験するつもりはあるけど、まだ明確な希望は無い。
何がしたいとか、何になりたいとか。
まだ考えてもいないし、考えられもしない。

そう言えば紗代子も進学希望組の筈だけど、そんな話をした事は無かった。

今度聞いてみよう。
アイツの事だからスポーツ推薦もあるかもしれない。
そしたら、ついに同じ学校じゃなくなるなあ。

熱いお湯を首元に当てながら、そんな風に考えた。

ウチの学校には春の大運動会という行事がある。
秋には登山があるから、運動会は春にやってしまおう!というつもりなのかもしれない。

だから紗代子の早朝ランニングも、普段より気合いが入ってる気がする今日この頃だった。


つづけてみる。


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