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TOKYO3am

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記事一覧

静寂と月

時間を錯覚させる程のライトの色は、もう消えた。
音楽も止んで今は時間通りの静かさに包まれている。

仲間が居た。
周りにも対面にも。
きっとこれが自分が生きている証拠なんだ。
ずっとそう思ってきた。

溺れそうな音の波。
それを作り出す自分たちの手。
感性と体感と、呼吸と鼓動。
自分の全ての命が生み出していた。

月が綺麗だ。
あの時間を思う。
仲間を思う。
終わりを告げた自分の時代を思う。

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砂の城

自分が誰かに好かれるってイメージが無い。
好かれたかった時代はあったけど、いつの間にかどうでも良くなった。

ちょっと気付く事は色々あって出来るんだよね。
でさ、お節介だしさ。
自分が無駄にした時間や失くした物や人、、
そんな中にはもしかしたら、幸せになれる鍵を持ってたかもしれない人がいたりする気がして。

思い出す事は痛みを呼び戻すから嫌いだなあ。
思い出は美しいままで永遠にそこにある。
同じ様

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雨と夢と

雨音を聞きながら眠りについたのは、覚えている。

気付くとあの女と一緒にいた。

「どうして、あの時?」

女の唇が動く。
その目が濡れているのが分かる。

「ああするのが君の為だと思った。
 最後のチャンスだって言ったろ?」

「でもさ、、
 傍に居てほしかった。
 隣で支えてほしかった。」

どこかで、こう言うよなあと冷めた自分がいる。

「あのままじゃ君は失敗したよ。
 そして後悔した。
 

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寂しさの辿り着く所

子供の頃、お母さんの作ってくれるご飯は魔法だった。

TVに映る料理はお店でしか出てこない物に見えた。

「これ美味しそう!食べたいなあー!」

無邪気にそう言った料理が晩御飯に並ぶと私は本気で驚いたし、本当に美味しくて嬉しかった。

だからなんだよな。
私は料理が趣味になった。
休日にレシピと睨めっこして、色々チャレンジするのが楽しくて仕方なかったんだ。

お給料日には、気になってたお店に行くの

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追憶からの手紙

タバコを吸う裸の背中にいつも

「タバコはやめなよ。」

と少し笑いながら言われる。

絡み果てた後には
どうしてもタバコが欲しくなる。

愛とか恋とか憧れてた時代は自分にだってある。
ただ、男って存在が自分の想いとは違う生き物だった。
ただ、それだけ。

毎回そんな気持ちを味わい
何となく大人になった。 

今の仕事だって成り行きだ。
別に嫌いじゃない。
色んな男を見られるのは特権だと思う。

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女の背中

自分でも遊び人だったと思う。
派遣で来てるこの女を食事に誘ったのだって
下心があったからだ。

ホテルでその柔らかさを存分に味わって
もっと普段見せない顔を見てやろうと笑ってた。

別に惚れた訳じゃない。
今夜だけで構わない。
だったら楽しんだもん勝ちだ。

ただそんな気持ちだったんだ。
あの電流が身体を貫くまでは。

女を伏せて後ろから責めた時
白い背中がうねるのが目に入った。
その時なんだ。

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TOKYO 3am

温もりのあるベッドを抜け出す。
キッチンの換気扇を回し、煙草を咥える。
使い捨てライターの火が
さっきまでの熱を思い出させる。

東京は綺麗だ。
窓を開ければ必ず光がある。
光があると
きっと人は安心するんだ。
でも静かな眠りには
僅かな光も邪魔になる。

きっと人間は我儘で身勝手なんだ。
だから俺は今夜もこの女と寝ている。
光に安心して
温もりに安らいで
暗闇に飲まれて眠りの中に落ちる。

落ち

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