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Musée du Louvre、レオナルド ダ ヴィンチ、“モナ リザ” (1503-1519)

ご存知モナリザ。あまりの知名度に語るのも気恥ずかしいくらいだが、影を描くこと、輪郭をぼかして表現すること、空気を表現すること、で平面に立体を表現するという西洋絵画の基本路線を完成させ、しかもその頂点を極めてしまった。付け加えるならば、この西洋絵画の基本路線はその後400年、基本的には20世紀初頭の抽象絵画の出現まで続くことになる。
知名度について、試みにインターネットで主な泰西名画を検索してみたが、文字通り桁違いのヒット数である。
モナリザ    161,000  (5,160)
ゲルニカ      41,800    (805)
ひまわり      32,600    (626)
真珠の耳飾の少女   7,710    (107)
オランピア      6,210    (144)
晩鐘         5,450    (117)
裸のマハ       5,180    (145)
水浴                      1,150     (11)
           * カッコ内は画像のヒット数
この絵を鑑賞する際、このことが少なからず影響を与えている。つまり、この絵に関する限り、マスメディアを通じ氾濫するモナリザのイメージがこの絵そのものを鑑賞することを殆ど不可能にしている。
多くの鑑賞者がこの絵の前に立つ前に、何らかの複製を見ているであろう。そして多くの場合、単なる複製ではなく、剽窃されたもので、これらのモナリザの画像を幾度も見ることで、漠然とした“モナリザ”のイメージを“本物”を観る前にもつことになる。そして、このことは好むと好まざるとこの“モナリザ”のイメージを通してしか“本物のモナリザ”を鑑賞できなくしている。結果としてこの絵を鑑賞に訪れる観光客は今まで抱いていた“モナリザ”のイメージをこの絵の前で再確認することになる。それは商品を商品そのものの性能、デザインではなくブランドで購入する消費者の行動と似ていなくもない。マスメディアのおかげでダビンチよって描かれた500年前の肖像画は“モナリザ”と言うブランドになってしまった。
今日も多くの参拝者が訪れ“本物”のモナリザを確認する。一方のモナリザはと言うと、これまで幾度となく誹謗、中傷、剽窃されてきたにもかかわらず、その罪を問うこともなく、やさしく(分厚いガラス越しに)“謎の微笑み”を投げかける。

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