Musse Royaux Des Beaux-Arts、Bonnard、“逆光の裸婦”（1908年）

裸婦は逆光の中でオーディコロンをつけている。入浴の後、体を拭き終わった直後だと言うことが、左下の浴槽、足元の黒いタオルから窺い知れる。
逆光の中に浮かび上がる裸婦の形と影となっている体の色彩がこの絵の主題であるが、それを効果的に表現する為に、ボナールは上部の窓とそれに続くソファーの明るい色面を背景として周到に用意している。
レンブラント等、主題を強調する為に背景を暗色で覆ってしまう前代の手法とは対照的で興味深い。
先の浴槽とタオルは、女性が、入浴し、体を拭き、オーディコロンをつけるという一連の仕草を暗示する（物語性、時間性）と同時に造形上の意味合いも持たせてあり、そのことが絵画としての完成度を高めている。即ち、浴槽の円形はソファーの四角と呼応し、タオルの黒は窓からソファーに至る明るい画面を受け止め画面全体を引き締めている。試みに、この黒を隠してこの絵を眺めると、なんともしまりのない絵となることが確認できる。