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大学研究者が「サステナビリティ」を考える。

サステナビリティ = 持続可能性。

地球温暖化による気候変動が顕在化し、異常に熱い夏を何度も向かえるようになった頃、これまでの研究テーマをガラッと変えてカーボンニュートラル研究を始めたことは、自身としては自然な流れだった。

いわゆる基礎研究から応用研究に舵を切り、今ではシーズを社会実装するにはどうすればいいかを考える日々である。

カーボンニュートラル技術を新規開発するためには、技術を「環境調和型」にデザインしなければならないことは言うまでもない。要するに、環境負荷のかかる試薬を用いたり、高エネルギー負荷を要する反応ではそもそもカーボンニュートラル技術になりえないのである。

そんなことを考えながらコツコツ研究を進め、カーボンニュートラル技術の開発がうまくいき始めた頃、「持続可能性」の意味をよくよく考えるようになった。研究開始当時はあまり深く考えず、開発する技術が「環境調和型」であれば、その技術は「持続可能」であると短絡的に考えていたのだ。

しかし、開発する技術を「持続可能」たらしめるには、「経済合理性」を同時に成立させなければならないことを日に日に理解するようになる。

これはおそらく、経営者であれば当たり前の感覚であろう。その感覚に疎い研究者にとって、そのような発想をはじめから持つことは難しかった。

つまり、どんなに素晴らしい技術を開発したとしても、利益を出さなければ、その技術を永続的に使い続けることはできないということである。誰かに使ってもらうこと、それが、社会実装するということである。要するに事業化である。フィールドは若干違うが、ソーシャルビジネスがまさにそのようなビジネスモデルである。「環境調和」「経済合理性」の両立によってはじめて、カーボンニュートラル技術を「持続可能」にし、社会実装することができる、ということをようやく知るようになったのである。

しかし、カーボンニュートラル技術というのは、今まさに新しく創出されるものであり、産業革命以降、洗練に洗練を重ねてきた石油化学技術に比べて、経済合理性で敵うはずがない。それでもカーボンニュートラル技術を実用化するためには、研究と同様に、経営に関しても新しいアイデアが必要なのである。

そんなことを徒然考えながら、今はディープテック・スタートアップを目指して営々している。険しい道のりであることはよく分かっているが、そこに面白さを見出すのが研究者だと思うし、実際、難しい方が面白い。そして、方向を間違えず、諦めずに邁進すれば、いつかきっと辿り着くはずである。

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