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予備校帰りの電車の中でふたたび

 ゴールデンウィークのこと。

 その日も、夜の8時すぎ、とある予備校生が「ただいま~」と帰ってきた。

とある予備校生:
「今日さあ、また、古いほうの勤務校のソフテニに会ったよ。また、練習試合に行っとったらしい。」
わたし:「おかえり。へ~、がんばるね。」
とある予備校生:「でさあ、生井金太郎が、さらに、やばいことになっとるらしい。」

 生井金太郎くんは、とある予備校生の中学時代の仲の良い後輩で、わたしの勤務校の生徒である。今年は教えていなくて、そういえば、四月に入ってから、1回しか見かけていない。かなり元気な、でも、いい若者である。

わたし:「ふうん、またどうかしたん?」
とある予備校生:
 「なんとさあ、アイツ、練習試合のあと、ソフテニ部副顧問先生に呼ばれて、『団体戦には出さんけど、いつでも替われるように準備しとけ』って言われたらしいんよ。」

 ソフテニ部副顧問先生は、この学校の2年前の卒業生で、わたしも授業で教えていた。いつぞや「先生の授業は覚えてます」とか、言ってたけど、ほんとかどうか疑わしい。職員室では、お隣の席である。
 あの、のんびりしたソフテニ部副顧問先生(多分まだ19)が、そういう役回りをせねばならないなんて、気の毒と言えばそちらもとても気の毒。



わたし:「本人がそう言ってたん??」
とある予備校生:
 「本人が言っとったよ。でさ、そう言われたってことは、番手を三番手から四番手に下げられたってことなんよ。」
わたし:「えー、かわいそうに。」
とある予備校生:
 「でもねえ、生井金太郎は、もうそれはそれでいいと思っとるらしいんよ。そういうとこが、アイツのある意味すごいところなんよ。」
わたし:「へ~。たしかに。」
とある予備校生:
 「団体戦には出んでいいから、個人戦は絶対◯◯(九州とか中国・四国とか近畿とかレベルの)大会には出たいと思っとるらしいんよ。」
わたし:「ふうん。」
とある予備校生:
 「去年アイツはオレらに勝って◯◯大会まで行っとるからね。
 でも、アイツは、去年行けたからって、今年も行けるって言うものでもないんだって言うんよ。実際そういうもんよね?
 うちの一番手は、三年間ずっと全国まで行き続けたけど、やっぱりあいつはすごい。普通はそうはいかんし、一年の時行けても、二年とか三年になったらだめになったとか、よくあるんよね。」
と、そういう身近な例を、あれやこれやと挙げていく。
とある予備校生:
 「とにかく、そういうことは生井金太郎はよく分かっとって、すごい練習がんばっとるらしいんよ。だいたい、古いほうの勤務校って、この時期すごい練習するんよ。」
わたし:「へ~。」
とある予備校生:
 「『今年の対戦相手は、去年みたいな安パイ(=とある予備校生ペアのこと)じゃないっすからね😄』ってさ。」

 生井金太郎くんのなまいきぶりは健在らしい。
 でも、かっこいい。そんなことが言える高校生、そんなにいないに違いない。

わたし:「ふうん、あり得ないようないい人だね~。」


つづきは、また次回。

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