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Pure

大きな木の下に 4頭の白黒牛
くすんだ緑の牧草
黄色い麦畑で収穫している 白いシャツの人たちに
家のほうから呼びかける  えんじ色のブラウスの女性

向こうの丘は 薄みどり
遠くの山々は 赤っぽい、青っぽい 淡い紫
空は もっと薄い紫と 桜色





絵の中の
人も、牛も、家も、
どれも 小さめで、
分かるのは
ただ、ポーズだけ










9月と10月の間
ずっと壁に掛かっていた
カレンダーの絵
母にもらった
画材店のカレンダー

ごく、ふつうの、田舎を描いた古い絵。
と、思っていた
31日を過ぎても
めくるのさえ忘れてしまうほど
何気ない、ふつうの、田舎の絵だ、と。












今朝、11月をめくり忘れていることに
ふと 気づいた

切り取りの
点線のところに 手をやって、


ぴりっ ぴりぴり ぴっ……










すると、グランマ・モーゼスの 声が。
















「ぁぁ、なんていい季節なんだろうねぇ……」
















景色を目の前に眺めて 描いている人の
体に入って その目で見ているような
ゆっくりした息づかいを 感じるような……


そうか、この絵は
きれいな景色だけが
描かれているんじゃないんだ









絵には 描かれようもないのに
間違いなく 描かれている、
キャンバスの手前にいる 彼女の存在









これは、  技巧   じゃないですよね?











それとも、やっぱり、ちょっとは 入っているのかな?








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