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ワイルド科に、分け入る

前の時間にプロジェクターを使ったのか
休憩時間だというのに
月あかりの海のように
なぜかカーテンを閉めて、電灯もつけず、騒がず、
静かに話しているらしき クール科橫の廊下を素通りして
隣の教室に近づくと、
・・・
もう大笑いと叫び声の喧噪が聞こえてくる
ワイルド科である


この学校は伝統ある実業高校
多くの部活はよく鍛えられていて
県では強豪として知られている
なかでもワイルド科は体育会系で、
遠目には、
みんな同じような勇ましい男子に見えるが
実は多民族国家、「各運動部のサラダボウル」である









チャイムが鳴る
勇気を持って踏み込む……









するとまず、
野球部員たちが毎回必ず、ビシッと
声をかけてくれる
「ちわっす!」「ちわっす!」
野球部は、この県の強豪チーム
とてもとても礼儀正しい彼らは
わたしに話すときは、まるで
目上の人と話すような敬語である
(案外授業中は寝てたりするんだけどね。
   練習、ハードなのかな)
わたしも礼儀正しく「こんにちは😊」





次に話しかけてくるのはサッカー部員たち
「先生、今日は何見るんすか~?」(毎回言う)
「もう今日は進むのは止めにして、動画見ましょう!」
「先生、あいつがスマホ出してました!没収してください!」
と、いきなりあちこちから攻撃を仕掛けてくる
同時多発的に攻撃されるので、いちいち返事ができず、
とりあえず鎮まるまで、にこにこするしかないわたし。
子どもの友達みたいなフレンドリーさ。




次に加わってくるのはバスケ部員たち
彼らは圧のある大きな見た目に反して、多少の気遣いがあって
「先生、こいつらはもうほっといて、やって下さい。ばかですから。」
「あ、先生の今日の服装、なんかかわいいですね?
 高かったんですか?」
(かわいくも、高くもないけど、そうだった……
 確かに今日は新しいセーター)
と、わたしでもなんとかキャッチできそうなパスを
投げてきてくれる
さすが。




ここまでは、やっぱりチームスポーツ。
授業の流れを
断ち切ってくることはない







ところが、授業に入ると、なぜか活気づくのが
バド部員たちとソフテニ部員たち(特に前衛ポジション組)。
野球部やバスケ部に比べて小柄なため、
一見大人しそうに見える彼らだけれど、実は手ごわい
授業中、突然、
「このウクライナの女の子、かわいくない?」(不謹慎!)
とか、
みんながせっかく鎮まって来たときに限って、
「先生、○○君が寝ています。
 ○○君😊起きて😊って呼んであげてください。」
とか、ぼそっと、つぶやくのはバド部少年たち
意表を突く配球(?)に、
つい吹き出してしまいそうになる。
というか、吹き出してしまう。


でもこれはまだ、かわいいほう。
ソフテニ部(前衛)少年たちは、さらに過激で、

ピー

が入りそうなことを、これまたし~ずかな時に
ぼそっとつぶやくのである。
反則に近いドロップ
まったくもう。彼らも有名プレイヤーなのに。






最後にバレーボール部員たち
彼らは、授業中は、本当に大人しい。
サッカー部やバド・ソフテニ部の
からかいも煽りも涼しくスルー
が、コメント欄は妙に頑固。
新聞記事を読もうが
動画を見ようが
彼らがそれによって、表面的にでも影響を受けることが
まずないのはなぜだろう?
「自分はやっぱり、・・・・・・・だと思います(キッパリ)」
ブロック?
バレーボールは役割分担がはっきりした競技だからでしょうか







まあいい、授業授業。

「・・・・さて、これら、戦術核、中距離核戦力、戦略核の中で、一番危険視されてきたのはどれだか知ってる?どれでしょう?」

「中距離核戦力!!」


こんな風に見えて、彼らは実はしっかり賢くて、手際も良く、
よく知ってたりする面まであるのだ。

「そうなんだよね~、
1987年に”INF(中距離核戦力)全廃条約”が……………………」

うん、まあ、いいや。







世間の流れでは、部活、だんだんなくなっていってしまうのかな?
みなさんは、入っていましたか? 部活。












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