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もう一つの世界25   なんか妖怪2/4

なんか妖怪 2/4

 家を出るとくらい夜道、健斗は歩きながら ときどきたちどまって、木の枝にひもを むすびつけています。
 ざしきわらしは ふしぎに思って、
「それ 何のひも?」
「これは めじるしや。夜でも光って見えるやろ。こうしといたら 帰り道も わかる。ほんとうは、虫とりえさのめじるしにつかうねんけどな。」
 こんな子 はじめてや
 ざしきわらしは かんしんしています。
 さて、そろそろ唐(から)傘(かさ)小僧(こぞう)が 健斗をおどろかしに あらわれるはずです。
 健斗とざしきわらしが、ぞうきばやしのくらい小道を歩いていると、後ろから、
「おーい。」
 とよびとめます。
 健斗がふりかえると 唐傘小僧が 大きな一つ目と、大きな赤いしたを ベロンと出して 一本足で立っています。
「妖怪の森に なにしにきたー?」
 健斗は おどろきながら、
「妖怪?なんか ようかい?」
 おもわず後ずさりします。しかし源じいに 妖怪のはなしをきいたあとなので、こわいながらもやる気まんまんです。
 ざしきわらしは、笑いをこらえています。ようこんなときにダジャレがでるなとおもっています。
「目くらましや。」
 健人は、とつぜんヘッドライトの光をつよくあてると、唐傘小僧がひるんだすきに、カバンからススキ花火をとり出して、火をつけました。
 こわがりながらも 笑っています。
 ざしきわらしは あきれています。
 唐傘小僧は 火花が唐傘にもえうつらないか ヒヤヒヤしています。そのうち いくつかの火花がとんできて、唐傘に小さなあながあきました。
「うわー!なにするんやー、これは たまらん。」
 唐傘小僧は、あわててピョンピョンと、小川にむかってにげていきました。
 健斗は ざしきわらしのほうを 見ると、
「なんや むこうがにげだしたで、だいじょうぶかなあ?」
 ちょっと しんぱいしています。 
 ざしきわらしも、
 こんな子 はじめてや。
 なかまにあわせていいんかな? 
 と、しんぱいしています。
                     
 ざしきわらしと 健斗は どんどん森に 入っていきました。
 しばらくすると 大きくひらけた野原(のはら)にでました。
 健斗が 野原のまん中に立つと、まわりから ぞろぞろ 妖怪たちが 出てきて、健斗を とりかこみます。
 カラス天狗、ろくろ首、三つ目入道、一つ目小僧、のっぺらぼう、ぬりかべ、化け猫、カッパ、二口女、さっき健斗をおどろかした 唐傘小僧もいます。  
 そして やまんばが こわい顔をして立っています。
 健斗は こわくて おしっこを ちびりそうでした。
 それでも いっしょうけんめい じぶんに言いきかせています。
 みんな いっしょや、人も 妖怪も みんないっしょや
 そして、左手には こっそりねずみ花火を 五つもっていました。
 いざとなったら いつでも火をつけて みんなをおどろかせて、その間ににげるつもりです。
 やまんばの おそろしいこえがきこえてきました。
「とかいの子は 食べるとおいしいか? いつも おいしいものばかり食べているから きっとおいしいじゃろう。」
 健斗は こわがりながら 言いかえします。
「おれより そっちの大きいこんにゃくのほうが おいしいと思うで。」
 やまんばは、ぬりかべを見て、思わず笑ってしまいました。
「そうか、とかいの子には こんにゃくのお化けに見えるか。」
「こぞう、おれは ぬりかべじゃ。」
 ぬりかべも おそろしいこえを 出します。
 健斗は 知りません
「ぬりかべは しらんけど こんにゃくは 知ってるで。
 こんにゃくは いつ食べる?」
 健人が たずねました。
「わしが知るか。」
「こんにゃくだけに、こんや食う。」
 だれも 笑いません。みんな キョトンとしています。
 ざしきわらしだけが クスクス笑っています。
 関西の子やなあ、と思いながら笑っています。
「ざしきわらし 何がおかしい?」
 ぬりかべがたずねると、ざしきわらしが、
「関西のダジャレや、『こんにゃく』と『こんや食う』をかけてるんや。」
 みんな みょうに なっとくしています。
 健斗は 頭をかくと、 
「おれも まだまだやなあ。」
 ひとり はんせいしています。
 すると 後ろのほうから、妖怪のこえがきこえてきました。
「そんなダジャレ 言うのは だれじゃ。」
 いっしゅん、シーンとしたかと思うと、 クスクス小さな笑いこえが もれてきました。みんなもつられてクスクス、クスクス。笑い声がしだいに大きくなり さいごは みんなの大きな笑い声につつまれました。
 健斗も 笑っています。
 やっぱり みんな いっしょや…
 みんなの きもちが やわらぐと、もうこわさは なくなります。
 健斗は みんなを おどろかせようと、かくしもっていた ねずみ花火に火をつけ、みんなの目の前に ほうりなげました。五つがどうじに シュルルシュルルルと とびまわり バンバンバンバンバンと 大きな音を ひびかせる。妖怪たちは ビックリ、とびあがってにげまわっています。
 健斗は とくいそうに、 
「つぎは へびを だすで。」
 みんなは どんな大きなへびがあらわれるのかと ドキドキしています。
 健斗が へび玉に火をつけると、みんなはみがまえています。
 すると かわいい黒いモコモコが、だんだんのびてきました。
「かわいい へびじゃのう。」
 みんなは ひとあんしん、ニコニコしています。
「こんどは みんなで 線香(せんこう)花火しようか。」
 みんなに 一本 一本 線香花火をわたしました。
 健斗は 一つ目小僧と 三つ目入道をみつけると、
「なんで 一つ目と 三つ目なんや、二つ目のほうが 見やすいのに。」
 すると 三つ目入道は
「それでは 妖怪でなく ふつうの人間になってしまうわ。」
 頭をかいて 笑っています。
「そうやな、二つ目は ダメダメやな。」
 言ったものの ざんねんながら ダジャレになっていません。
「妖怪て おもしろいなあ。」
 すなおにかんしんしながら、くばっていきます。
 すっかり健斗のペースで 花火をたのしんでいました。
 妖怪たちは 花火を見たことはありますが、じぶんたちで花火をたのしんだことがなかったのです。
 それから 吹き出し花火、スパーク花火、手筒花火、さいごにロケット花火をうち上げて、健斗の花火はおわりました。
 みんなまんぞく、健斗もまんぞく。
「たのしいかったなあ。はじめはこわかったけど、じっちゃんの言ったとおり、みんな いっしょや。」
 ざしきわらしと 健斗は、まんぞくして 源じいの家に帰っていきました。

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