もうひとつの世界、16 竜神さまが くしゃみした 2/3
龍神さまが くしゃみした 2/3
次の日は、朝から雨がふっていた。
そして昼からますます雨がつよくなり、風も吹きだした。
四人は放課後(ほうかご)、雨を気にしながら、そろって職員室(しょくいんしつ)にやってきた。
「高橋先生、ちょっとおしえて?」
健人(けんと)がいちばんにたずねる。
「きのう見つけたんやけど、この生き物なんかわかる?」
四人は携帯をとりだして、写真をみせた。
高橋先生はびっくり。
「なんや、へんな生き物やな?」
いちばんよく映(うつ)っている、未希の写真をじっとみている。すると洋子先生が、
「先生なにを見てるんですか?」
よってきて、高橋先生に顔をちかづけると、いっしょにのぞきこんだ。
なあ、やっぱりやろ。
四人は、顔をみあわせなっとくした。
高橋先生はふしぎそうにみている。
「どこでみつけたんや?」
いちばんきかれたくないことを、はじめにきいてきた。
「とった場所がわかると、そこにいる生き物もわかる。で、どこや?」
どうしようか、四人はまた顔をみあわせた。
未希はおそるおそるこたえた。
「小さな滝の底にいてた。」
「小さな滝?」
こんどは高橋先生がかんがえている。
「尊彦神社の裏山の小滝か?」
未希は、小さくうなずく。
「あそこは神聖な場所で、立ち入り禁止(きんし)とちがうんか?」
「うん、こっそりはいれる。」
へんなへんじだ。
「そうか、こっそりはいれるんか・・・。」
高橋先生は、へんにかんしんしている。
洋子先生は四人をおこれなくなって、
「先生がそんなこといったらだめでしょ。」
かわりに高橋先生をしかっていた。
高橋先生は、じっとかんがえていたが、なんどかんがえても、ひとつしかおもいうかばない。
「うーん、やっぱり竜の子かなあ?」
未希は、さすが高橋先生やとむねをはった。
健人はびっくり。
なんで未希とおんなじことをいうんや、とおどろいている。
洋子先生もびっくり。
「先生、竜は空想上の生き物ですよ。先生がそんなこといったら、子どもたちが信じますよ。」
しかし高橋先生はまじめな顔で、
「いくらかんがえても、竜の子にしかみえないんですよ。
たしかに顔はタツノオトシゴみたいですけど、ちゃんとひげがはえてるし、細いからだに手足がついてるでしょ。どうみても竜の子なんだけどなあ。
それに、もうひとつ気になることがあって、天気(てんき)予報(よほう)で今日は晴れるはずなのに、黒雲(くろくも)におおわれて大雨、強風で天気があれてる。
きっと、竜神さまが子どもをとられておこってるんですよ。」
真顔で洋子先生にいうと、ちらっと子どもたちをみた。
「えっ、この雨はぼくらのせい?」
健人はびっくり。
ワタルはキョトンとしている。
「先生、ほんまか?」
洋子先生は笑いをこらえている。
高橋先生はまじめな顔で、
「早くもとの場所にかえさんと、災(わざわ)いがおこるぞ。」
ワタルはまだわかっていない。
「先生、災いてなんや?」
高橋先生は、にがわらいすると、
「竜神さまは、水の神さまだから、竜神さまが怒ると、たとえば、きょうみたいに大雨がふりつづいて、強風がふいて、川がはんらんして洪水(こうずい)になったりとか、強風で屋根や瓦(かわら)がふきとばされて、人がけがしたりとか、とんでもないことがおこるということや。」
健人もワタルも、たった一匹、小さな生き物をつかまえただけやのに。と、とまどっている。
でも未希は、先生のいったことをしんじていた。
「先生、写真を送るからちゃんとしらべといてくれる。ほんとうやったら大変や。」
「そうだな、月曜日までにしらべとく。そのかわり、雨がやんだら元の場所にちゃんとかえしにいくんだぞ。」
高橋先生にいわれて、四人はしぶしぶうなずいた。
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