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もう一つの世界25,  なんか妖怪3/4

なんか妖怪 3/4


  次の日、健斗はひとりで虫とりにでかけました。
 しかし、残念ながら、クワガタも、カブトムシもとれませんでした。
 ざしきわらしが おくざしきでまっています。
「健斗 みんなが また花火を やりたいって。」
 健斗のもってきた花火は、昨日の夜に、ぜんぶつかってしまいました。
「そんなら、でんわするわ、むかえにくる時に買ってきてもらう。そうしたら、さいごの夜に、また花火できるやろ。」
 ざしきわらしは、よろこんでいます。
「そのかわり、おれも たのみがあるんやけどなあ。」
 健斗は ちゃっかりしています。
「カブトムシとクワガタのいる木をおしえてほしいねん。おれがとりたいから、ばしょだけおしえてくれたらええねん。でないと、大阪に帰ってから、 友だちにじまんできひんやろ。
「カブトムシとクワガタは、この森にはいっぱいいるよ。
 今夜、とりに行く?」
 健人は、大きくうなずきました。
「源じいが寝てからな。」
 ふたりでこっそりやくそくしています。

 さて夜になると、家のまわりに、妖怪たちがぞろぞろあつまってきました。
 みんな手に、クワガタ、カブトムシをもっています。
 健斗はびっくり、
「なんでや!
 あんだけとってこんでええで言うたのに。見つける楽しみがなくなるやろ。みんな いっぺんにがしたって。」
 妖怪たちは「せっかくとってきたのに。」と、もんくをいいながらしぶしぶにがしました。
「じゃあ とりにいこか。」
 妖怪たちをひきつれて、健斗の虫とりがはじまりました。
 さすがに森にすんでいるだけあって、妖怪たちはよく知っています。
 カシの木、ナラの木、ニレの木、タブの木、どれも古い木で、木のウロや、樹液にあつまる虫たちを、ワイワイ、ガヤガヤいいながら、どんどんつかまえていきます。
また、妖怪たちは、この森に古くからつたわる言い伝えや、歴史をいろいろおしえてくれました。
 源じいが、子どものころに妖怪たちといっしょにあそんだ話しもきかせてくれました。
 健斗の知らないことばかりです。
 ちょっと妖怪たちを 見なおしました。 
「みんな えらいなあ、べんきょうなるわ。」
 すっかり かんしんしています。
 一時間ほどで、虫かごが一杯になりました。
「小さいのは にがしたろ。」
 それでも虫かごに、大きなクワガタ、カブトムシが、十匹ほど入っていました。
 健斗は、大まんぞくで妖怪たちと帰っていきます。
 一つ目小僧がたずねました。
「健斗、こんどはいつ花火する。」
 健斗は 少しかんがえて、
「あさっての昼に、おとうさんが来て、そのつぎの朝に帰るから、あさっての夜や。」
「明日は どうする?」
 カッパが、たずねます。
「おれは、魚がいっぱいとれるところを知ってる、手づかみでも、モリでついてもとれる。 あした行くか?」
 それをきくと、健斗はうれしそうに、
「よっしゃ、あしたは川あそびや、およぎかたもおしえてや。」
「おれはカッパやで、およぎをおしえるなんて、へのカッパ。」
 ダジャレなら 健斗もまけていられません。
「アユたらこう言う、何かイワナ。」
 魚のなまえでダジャレを言いましたが、もうひとつうけませんでした。
 ざしきわらしだけが、くすくすわらっていました。

 次の朝、ざしきわらしに おこされました。
「もうみんなまってるよ。」
 まだ六時だというのに、みんなまちくたびれています。 
 健斗は、あわててとびおきると、顔をあらわず、あわててごはんを食べて、おもてにとび出していきました。
「顔ぐらい、あらったらどうじゃ。」
 源じいが言うと、
「ええねん、どうせ川に入るから、その時あらうわ。」
 健斗は、モリをもって、いそいでかけていきます。
 カッパが手まねきします。ほかの妖怪たちも、後ろからぞろぞろついてきます。
 二十分ほど谷を下っていくと、小さな滝に出て、その下に深い大きな  水だまりができていました。
 カッパは、魚に聞こえんように小さな声で、
「ええか、この大きな岩のうらがわに、大イワナがすんでる。」
 そうして、そっともぐっていくと、しばらくして、五十センチちかいイワナをくわえて、もどってきました。
 カッパのとくいそうな顔。
 さっそく妖怪たちは、石をくんで、かれ木をあつめ、火おこしのじゅんびをはじめました。
「健斗も もぐるか?」
「あかん、おれ およがれへん。」
 健斗は めずらしく よわきになっています。
 カッパは、
「およがんでいいんや、もぐるだけ。そうしたらからだはかってに浮いてくる。ええか、もぐることがさきや、およぐのはそのあとや。」
 カッパの教え方は、もぐることから。
「へんな 教え方やなあ。」
 健斗は、ともかくもぐってみました。
 するとたしかに、なんどもぐっても、からだはかってに浮いてきます。
「そうか、浮いてきたときに 息をしたらええんや。」
 こつがわかると、もぐっては岩のすき間を モリでついていきます。
 すると、かってに魚がささっています。
「おもしろいなあ、ええことおしえてくれたなあ。」
 魚をとっては、みんながまっている岩にほうりなげました。妖怪たちは、魚をくしにさしてやくもの、また生でそのまま食べるもの、いくらとっても、魚はすぐなくなりました。
 その時、やぶがごそごそとうごくと、大きなイノシシが、のっしのっしとあらわれました。
 やいた魚の おいしそうなにおいにつられ、やってきたのです。
 妖怪たちも、大イノシシにはかてません。
「森のぬしや!」
 みんな大きな岩の上にとび上がりました。健斗も岩の上ににげました。
 カバンの中をごそごそさがして、
「あった、このスプレーや。」
 こわいけれど スプレーをつかえるチャンスです。わくわくしています。
 イノシシが、岩の下までやってきて目と目があうと、思いきってスプレーをふきかけました。
「グヒー、グヒグヒ。」
 びっくりしたイノシシは、前が見えず、岩や木にぶつかりながらにげていきました。
 健斗はこうふん、妖怪たちは手をたたいてよろこんでいます。
 おわってみると、きゅうにおなかがすいてきました。
「おれの魚は?」
 見ると、一匹ものこっていません。
 妖怪たちは、みんな知らん顔。
「そんなアホな、あんだけとったのに。」
 その時、一つ目小僧がかくしていた魚を、そっとだしてくれました。
「イノシシをたいじしたおれいだよ。」
 健斗はほっとして、ひとくちガブリ、
「おいしいなあ、これは大阪帰ったら、みんなにイワナ。」
 すると かっぱが、
「それはイワナじゃなくて、アマゴ。」 
 健斗は、へんなダジャレで言い返します。
「アマゴだけに、アマっちゴうた。」
 妖怪たちは大笑い。
 みんな、へんなダジャレを言う健斗が大すきです。

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