「乙嫁語り」を読んで思った事

「結婚相手は親が決める」
「親の命令は絶対」
今の価値観からするととんでもない概念
今を生きる人の大多数には直感的に拒否反応が出る考えだと思う

なぜ拒否反応が出るのか?
きっと「自由が何よりも大切である」との価値観と正反対のものだからだと思う

しかし、自由恋愛を禁止されていないからと言って、だれでも思い通りに恋愛できるわけじゃない
親の忠告を無視することも違法ではないが、自分の選択がもとで致命的な失敗をし、さりとて親に頼ることもできず途方に暮れるなんて事も起こりうる

自由は素晴らしいが、自由にも副作用はある

逆に「自由」とは程遠い価値観や文化にも良い面があると思う
アミルさんには恋愛をする自由はなかったし、職業や住む場所を自分で決める自由もなかった
それでも作中で彼女が笑顔になる描写の流れに不自然さや違和感を感じることは無かった
夫や家族のために、家事や裁縫、狩りと、家族のために一生懸命に尽くす中で、「ありがとう」や、食事が「おいしい」、みたいにあ本当に些細な言葉や態度の一つ一つに対して幸せそうに微笑んでいた

大切な人のために骨を折り何かを施す
そして、それを受け取り喜んでくれる
当たり前で、ありきたりな、普通の生活の中にある、じんわりと心が温まるような幸せ
この心の動きは、私自身も日々の生活の中で感じるのでアミルさんの心情にとてもシンクロできた

この幸せを享受するために「自由」が必須とはどうしても思えない
逆にいくら「自由」でも、この幸せが欠乏していては生きていけないとさえ思う

とかく刺激的なモノにあふれる世の中では、こういう幸せには目が向きにくいと思う

実際「乙嫁語り」を読んでから、日常のちょっとしたことが以前にもまして愛しく感じるようになったということは、
私自身、日々の生活で感じる幸せに鈍くなっていたと言うことだろう

森先生、素敵な作品を本当にありがとう


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?