日本茶は農薬まみれ?週刊現代の記事に怒ります

週刊現代が「日本茶は農薬まみれ」という記事を書きました。

内容は、日本は残留農薬基準値が緩すぎるというもの。

「日本の残留農薬基準値はEUと比べるとガバガバであり、ほとんど規制されていないに等しい」とのこと。

「ネオニコチノイド系農薬のひとつであるジノテフランは、EUでは1㎏当り0.01㎎(0.01ppm)が基準として設定されていますが、日本では25㎎となっており…」とあります。

EUでは、あらゆる残留農薬基準値が0.01ppmであるのに、日本はそうではない。日本の基準は緩すぎるという主張について、反論します。

EUとか関係なく、その国で使っていない農薬の残留基準値は、みな等しく0.01ppmとなります。これは日本も同様です。

食品衛生法に基づく残留基準値が設定されていない農薬等が一定量以上含まれる食品の販売等を原則禁止する制度(ポジティブリスト制度)が施行されています。 この制度では、今まで残留基準値がない農薬には、0.01ppmという数値が基準値(いわゆる「一律基準」)として設定されています。

日本では、多く使用される農薬について、しっかりと検査・調査を行い、安全な残留農薬基準値を出しています。下記は厚生労働省のHPの農薬残留基準値の決め方の抜粋です。

・毎日一生涯にわたって摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される一日当たりの摂取量 (ADI:許容一日摂取量)
・24時間又はそれより短時間の間に摂取しても健康への悪影響がないと推定される量(ARfD:急性参照用量)
 
 をそれぞれ超えないことを確認しています。

 なお、このADI及びARfDは、動物を用いた毒性試験結果等の科学的根拠に基づき、リスク評価機関である食品安全委員会が食品健康影響評価(リスク評価)を行い、設定しています。これを受けて、厚生労働省において、上記の考え方に基づき、薬事・食品衛生審議会での審議を経て、残留基準値を設定しています。


毎日、一生涯摂取し続けても、又は一気に大量に摂取しても問題がない量、それが、農薬残留基準値です。

日本の残留基準値が、EUよりも低いからガバガバなのではなく、EUは使用していないから基準がない(=0.01ppm)一方で日本はしっかりとした調査を行ってその許容度を把握しているのです。




週刊現代の主張の中で、ネオニコチノイドの危険性について書かれています。

ネオニコチノイドは、ミツバチが大量死する原因になっているのではないか?と議論になり海外では多く使用制限が設けれらています。

一方で、日本では、ミツバチの大量死とネオニコの因果関係がはっきり認められるものではないとして使用制限がそこまで厳しくありません。

前述のネオニコ(ジノテフラン) 0.01ppmの議論は、EUのネオニコ使用制限によるものなので、これについては、日本とEUの見解の相違ということになります。

どちらが正しいというものはありません。

ただ、日本は、しっかりと試験を行ったうえで使用を認めているという事実は確かにあるということはお忘れなく。

日本の科学力を信じるか、EUの科学力を信じるか。

見解が異なるのはおかしな話ですね…

日本でも、ネイニコ剤の使用を控える生産者は少なくありません。そんな中で、週刊現代に書かているような「一般的な茶葉農家は年に10回以上もネオニコチノイド系農薬を散布しています」というようなことは、99.9%有り得ない話です。

お茶に散布するネオニコチノイド系農薬の代表格は、「スタークル」という剤ですが、こちら、使用したとしても年1回。大抵、0回だと思います。

まぁ、こういう記事が書かれてしまったからには、もう使用できませんよね…

ネオニコ剤の取り扱いメーカーは週刊現代を訴えるべきですね。

兎に角、茶農家みんなが年に10回、ネオニコを散布しているという誤解されそうなコメントが、堂々と記事に載っているのはおかしな話です。

あと、この年10回、ネオニコを散布する生産者ですが「自分の子にはお茶を飲ませない」そうです。

普通の生産者なら、こう思うはずです。

まず、ネオニコを1年に10回も使うのは絶対に間違っているので、農薬の使い方を勉強しましょう。そして、自分の信念を曲げて、ネオニコ剤を使うのもやめましょう。生産者には、自己の責任をもって安心・安全な農作物を生産するべきです。ネオニコが怖いなら使うのをやめましょう。


あと、記事の中で、「茶葉は収穫後には一切洗われず、そのまま蒸されて製茶工程に入ります。…つまり、農薬を散布された茶葉が原料のお茶を飲むのは、農薬を飲んでいるようなものです」というコメントがありましたが、この方は、農薬が分解されることを知らないのでしょう…

農薬工業会のHPを参照すると、「散布により作物に付着した農薬成分は、降雨により洗い流されたり、太陽光や微生物の分解により短期間の間に減少・消失します。また、吸収された農薬成分は植物体内で分解されて減少します」ということです。

農薬には、作物ごとの使用基準が決められており、消費者のもとに届く時には、必ず残留農薬基準値以下になるように厳しく取り締まられています。

農薬まみれというのは、あまりにも語弊がある表現です。

なぜ、こういう記事が出回るのでしょうか?

不安を煽り、話題性を掻っ攫うのが目的でしょうか?

炎上商法? 何処かの誰かの利益の為でしょうか?

もし、これが誰かが正義感をもって発信していることだとしたら、大きな間違いでしょう。

この記事のせいで、(一部を除く)日本全国の茶生産者が苦しむことになるのですから。

もしサポートしていただけたら、大変有難いです。頑張って記事の更新やらせて頂きます!