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樹木と愛を育むとしたら

まず、桜は無いなと思います。

1年に1回盛大な咲き誇り方をして散る、なんてかっこ良すぎる。
中2のわたしならいざ知らず、臈長けたおばちゃんであるところのわたしは、こういう美し過ぎるものには心惹かれなくなったのです。

まぁ、お花見のついでに団子を食べるのは好きですけどね。
桜餅も美味しい。わたしは道明寺派です。

ハナミズキなんていいですね。
蕾の感じが丸くてかわいらしいし、上向きの葉っぱがちょろっと出てくる様なんて、いかにも初々しい。
でもちょっとわたしには何というか、清らかすぎるかしら。
ちょっと遠くから観賞用として見守る、くらいの距離感がちょうどいい気がします。

ジャスミン・沈丁花・金木犀・バンマツリなどの、見た目そうでもないのに香りでその存在感を示すやり方も独創的です。

特にわたしは夏が不得意ですから、秋が来ましたよ、ついにやってきたのですよと囁くような香りが鼻をかすめると、ちょっとフラッときてしまいます。

でも何と言っても、1番は梅です。

無骨な幹に地味な葉。
葉が散ってしまった後など殊に、ただのゴツゴツした木と成り果てて、もはや遠目には何の木か判別がつかなくなるほどです。

それなのに初春、寒さ厳しい冬を乗り越え、張り詰めた空気がかすかに緩んできた頃、この上なく可憐でささやかな花を咲かせる様といったら。
そんな愛くるしさ、どこに隠してたの?と思わず瞳孔が開きます。

ときにわたしは若い頃、あの有名な和歌にピンときませんでした。

人はいさ 心も知らずふるさとは 花ぞ昔の香ににほひける
紀貫之

恥ずかしながら、梅って、なんかニオイする?と思っていたのです。

大人になって、恐らく心に余裕が出来たことで、わたしは木々や花々を愛でるようになり、世界はカラフルであることに気付き、そして梅の香を楽しめるようになりました。

歩いていてどこからともなくフワッと香ってくると、これは梅だわ、どこで咲いているのかしらとつい探してしまいます。

ああ、春だ。
まだ体感としては冬から抜けきれていないけれども、着実に春は近付いて来ていて、これからあたたかな季節になるんだ、という予感としての香り。

その冬と春のちょうど狭間の頃合いを、梅はどうやって的確に見極めているのか。
ところで、動物の目って、植物から貰った説があるみたいですね。
植物には、光が見えている。

梅、いいですよね。
わたしは、樹木とお付き合いするなら梅がいいな。
あなたはどんな木が好きですか?

(妄想回でした)

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