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【読録】銭湯から広げるまちづくり/加藤優一

若い頃は風呂が嫌いでもっぱらシャワーで済ませていましたが、おっさんになるにつれてゆっくり湯に浸かることを幸せに感じるようになりました。

特に、息子と一緒に行く銭湯は最高のコミュニケーションの場になります。

普段話せないことも湯船に浸かりながらなら何となく話せたりします。

良い空間ですよね。

さて、今回読んだ本は『銭湯から広げるまちづくり 小杉湯に学ぶ、場と人のつなぎ方』です。

この本、日本が金とモノに溢れていた時代を知らない40代より下の世代は特に共感しやすい内容ではないかと個人的に思います。


内容は、東京都杉並区高円寺・JR高円寺駅近くにある銭湯「小杉湯」の常連である著者が小杉湯のオーナーや他の常連客、地域住民を含む様々なプレイヤーと、どのように銭湯のある暮らしをつくってきたかが描かれています。(と勝手に解釈しています。)


HPを見るだけでもとても惹かれます。行ってみたい。

本の詳細は書きませんが、強く共感した内容を記録しておこうと思います。



○「居場所」をつくるのは誰か

住民アンケートなどでは「自分たちの居場所が欲しい」とか「若者の居場所が必要だ」という回答をよく見かけます。

でも自分のことを知らない人が用意した居場所って自分にとって本当に心地良い場所なんでしょうか。

理想とする居場所があるのなら、そこを使っている・使っていきたい人たちが自ら考え、つくっていく方が自然な気がするし、一斉供給・大量生産の時代の後の世代である僕らにとっては、画一的で無機質な空間はむしろ居心地の悪さを感じるかもしれません。

小杉湯の例に限らず、居場所や暮らしをまちの当事者である自分たちがつくっていく動きはこれからどんどん加速していくでしょうね。



○誰に届けるか

やっていることや考えていることを自分たち以外の人に広げたいと思うとき、なるべく多くの人に広く届けることを考えがちです。

一方で、この本では「全員に届けようとせず、強い共感を集める」ことこそ伝わる価値の総量が多くなると解いています。

これはまさに今自分自身がチャレンジしていることと一致していました。

大きな組織の中で価値観を同じくする仲間を増やすことはとても難しことです。

限られた時間の中でより多くの仲間を見つけるには、広く考え方を伝えていくよりも、強く共感してくれる仲間を少しずつ、だが、確実に増やしていく方がはるかに近道であることに気づきました。

つながりは強い共感と同じゴールを見ることが重要ですね。



○オープンエンド

この本で一番印象深かった記述を抜粋させてもらうと、

「まちづくりとは、事業を伴う場づくりの連続的なプロセスの結果であり、事前に計画できることばかりではない。一連の流れに身を置きながらフィードバックを繰り返すことが大切なのだ。」

まさにその通り、と何度も頷きながら読みました。

最初から何が起こるかを全て想定されているまちづくりなどあり得ないし、そもそも何が起こるかわかっているまちづくりなんて何の面白味もないですよね。

点の動きが他と繋がって線になり、面として展開していく。

その過程で立ち止まったり、軌道修正しながら、時に当初と違う未来を目指していくことも許容できると良いし、何十年も前に作られた事業計画をただひたすら形にしていく「作業」的なまちづくりはまちづくりと言えないのでしょうね。

平成よりももっと早いスピードで変化する令和とその先の時代にあっては、「終わりを決めない」「完成を求めない」、そんな進め方がしっくりくるのかもしれません。



※メモ(レベニューシェアの可能性)

「レベニューシェア」(レベニューシェア)は、ビジネス取引や契約の一形態であり、収益を分配する仕組みを考えます。以下は、レベニューシェアに関する一般的な情報です: 1. パートナーシップや提携:レベニューシェアは、事業パートナーシップ、提携、アフィリエイトプログラム、出版者と広告主の関係、アーティストと音楽販売プラットフォームの契約など、さまざまなコンテキストで使用されます。 収益を分配する方法は契約や合意に基づいて決めます。 2. 収益の分配方法:収益の分配方法は契約によって異なる。

ChatGPT

この本の事業でも、いきなり建物一棟を借りるのではなく、レベニューシェア型契約をしてトライアル期間を設けることをやっていたとのことです。

スモールスタートするのに適した契約形態と言えそうです。

行政の仕事でいうところのSIB(Social Impact Bond)に近いんですかね。

従来の指定管理者制度や業務委託が要求水準以上の成果をあげられない仕組みであるのに対して、「成果報酬」というビジネス視点の考え方はこれからの社会課題の解決の一端を担っていく可能性があるかもしれません。


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