エンピツ・コレクション/短文バトル222

 小説家を目指していた拓海は下書きにトンボ鉛筆を使うことに決めていて、ちびた鉛筆は捨てたらバチが当たると鳩サブレーの缶に溜め込んでいた。別れるとき全部捨ててやろうかと思ったが、一生恨まれそうなのでやめておいた。そういえば古井由吉の名前を間違えて「ゆきち」と読んでしまい、さんざん笑われたことがあった。訃報を知った拓海はわたしのことを思い出しているだろうか。小説をまだ書いているだろうか。

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