直してほしくないところ

僕たちの洗面所には、
僕の化粧水、ニベアの缶、
彼女のジェル、もう一つジェル、
という順にものが置いてあるのですが、
彼女はどうも、
僕のニベアの缶の上に彼女のジェルの容器を置くのが好きなようで、
毎晩、僕がお風呂上がりにニベアの缶を取ろうとしますと、
彼女のジェルの容器が重ねて置いてあることに気がつきます。
ですので、
僕は彼女のジェルの容器をどかしてから、
ニベアの缶を開けることになりまして、
一秒にも満たないことでございますので、
特に嫌な気分を抱くようなことではないのですが、
またか
と、笑ってしまいます。
一度、いや、何度も、
僕のものを左端に、
そして、彼女のものを右端に、
真ん中をあからさまに空けて置いておいたことがあるのですが、
それでも、
お風呂上がりそこを見ますと、
僕のニベアの缶の上には、
ご丁寧に彼女のジェルの容器が鎮座しておりました。
ニベアの缶は、青くて丸くて、平らで、
彼女のジェルの容器はそれよりも一回り小さくて、
重ねて置くには最適な色合い、サイズなのかもしれませんが、
それにしても、
ずっと続くわけでございます。
彼女はなんの悪気もなくそうしているのだろうと思います。
というのも、
お風呂上がりに冷水で全体を流してくれたら嬉しい、だとか、
使用したお皿は水に浸しておいてほしい、だとか、
床にものを置きっぱなしにしないでほしい、だとか、
そういう煩わしいだろうお願いであろうとも、
必ずお願いを聞いてくれまして、
次回はからは気をつけてくださいます。
感謝。
ですので、
このジェルの容器に関しましても、
一度お願いしますと、
終わることだろうと思うのですが、
どうしてか僕はこのジェルをのける一手間を楽しんでいるようでして、
この先もずっと、
彼女のジェルの容器が僕のニベアの缶の上に鎮座しておりますのを、
毎晩、楽しんでいきたいなと感じております。
ともに暮らしております方の、
目につくのだけれど直してほしくない、
そのようところを持っている方は多いのではないでしょうか。
自分ではない誰かと暮らしますのはやはり面白いですね。