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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
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『狼は眠らない』ストーリー考察

私がめちゃくちゃ好きななろう小説、『狼は眠らない』について語らせてください。
6年前に連載開始して2年前に完結した支援BISさんの作品です。

狼は眠らない
https://ncode.syosetu.com/n3930eh/

支援BISさんは『迷宮の王』『辺境の老騎士』などの作品も執筆されていて『狼は眠らない』も含めて書籍化されています。
どれもストーリーがアツくて重厚で奥深いんすよ…
連載当時は毎日24時の更新が楽しみで仕方なかった…

浸るのはこの辺にして、『狼は眠らない』について語ろうと思います。
この作品ですが、読み返しているうちに作中で明確には語られてない裏側的な物語が進行していたように思えてきたので、この記事で言語化したいと思います。

この記事に書かれている内容は私の妄想を多分に含んでいるので、そこをご了承のうえ、お読みください。
物語の重篤なネタバレが含まれますので、必ず読了してからお読みください。


ストーリー(神々視点)

レカンの世界の神であるアポードロス神は困っていた。
レカン世界は乱世に陥っており、国家間での戦争が常態化。
それと並行して魔獣も大繁殖しており、人間という種の存亡が危ぶまれていたのだ。
神はこの事態を収拾するためには、強大な力を持つ1人の英雄が世界に現れ、その英雄の元に人類を団結させる必要があると考えた。
しかし、この世界にはそれほどの資質を持った人間が存在しなかった。

そこに救いの手を差し伸べたのは異世界の神である女神ライコレスである。
人間は倒したことのない魔物を迷宮で倒すことで、凄まじい経験値を得ることができる。
異世界の迷宮に現れる魔物は当然、元の世界には存在しない魔物なので莫大な経験値を一気に稼ぐことができる。
英雄の卵となる人間を異世界に呼び込み、この方法で鍛えようと提案したのだ。
この試みは過去に何度も行われており、歴代の英雄を何人も輩出している。

このような提案をした女神ライコレスにも、ある目論見があった。
実はライコレスの巫女の血を引く最後の一人である、ルビアナフェル姫(以下ルビーと呼称)にいくつもの死亡フラグが立っており、このままでは巫女の血筋が途絶えてしまうところだったのだ。
ライコレスは英雄を鍛える見返りとして、その英雄にルビーを守護させようと考えたのだ。

アポードロス神はこの提案を受け入れ、その候補となる人間を選別した。
こうして選ばれたのが冒険者レカンである。
レカンは能力面でも精神面でも未熟ではあるが、その精神は善であり、なにより迷宮での戦闘をこよなく愛する迷宮狂であった。

こうして選ばれたレカンはアポードロス神が生み出した黒穴を通り、女神ライコレスの世界へと転移した。
転移した先はルビーの最初の死亡フラグ、『魔獣襲撃』現場のすぐそばであり、神々の目論見通りにレカンはこの危機を救った。
レカンはルビーの屋敷を当面の滞在先として過ごし、その間に発生した次の死亡フラグ『暗殺者の襲撃』からルビーを救った。
女神ライコレスはルビーに自身の宝石とレカンが所持している宝石を交換するようお告げをし、これを実行させた。
レカンの宝石には体力自動回復と魔力自動回復の効果がついており、死亡フラグのひとつである『衰弱死』を防ぐために必要なのだった。
ルビーの宝石には巫女が選んだ相手に絶大な力を与える効果があり、これもレカンが英雄となるために必要となるアイテムだった。
こうして数々の死亡フラグを乗り越えたルビーは無事に次期ユフ公爵の元に嫁いでいくことができた。

レカンには英雄となるための試練の一つである地竜トロンが差し向けられ、レカンは宝石の力を使いこれを倒した。
地竜トロンは神々の助けがなければ絶対に倒すことができない存在であり、倒したものに英雄となる運命を与える神獣である。

その後のレカンは冒険の中で様々な人々と出会い、いくつもの迷宮を踏破して力をつけていく。
裏では神々によるいくつかのサポートがあった。
そしてルビーの最後の死亡フラグである『クーデター』を阻止した。
女神ライコレスは安堵した。ルビーに子供が生まれ、血筋が途絶えることは最早なくなったからだ。

その後レカンは2人の妻を娶り、子供も何人もできた。
そして頃合いを見計らい、レカンは元の世界に戻された。
元の世界に帰還したレカンは神々の目論見通りに英雄となり、乱世を平定。
大陸統一国家の王となった。

しかし、神々にとって困ったことが起きた。
王となったレカンが後継者を作らないのである。
レカンは異世界にいる妻達を深く愛しており、いずれは異世界に戻るつもりであった。そのためこちらの世界で結婚する気がなかった。
そして統一国家はレカンの圧倒的な強さとカリスマ性によりかろうじて成り立っている状態であり、代わりになれるような人物が存在していなかった。
この状態では何らかの事故でレカンを失うことがあれば再び乱世に逆戻りしてしまう。

神々は決めた。
レカンが子供を作らないなら、既にいる子供を連れてくればいい。
すなわち、異世界にいるレカンの子を呼び込み、統一国家の後継者とする。
幸いなことに、レカンの長男は野心に溢れ、能力的にも精神的にも王になる素質が十二分にあった。

ライコレスはルビーに信託を与えた。
〈十年後同じ場所に再び異界への門が開く。レカンと同じ血を持つ者は、そこを通ってレカンのもとに行くことができる〉
この信託を知らされたレカンの長男と長女は自分たちが異世界に行き、そして父を帰還させようと決意。
ひたすらに自分を磨いた。

そして、2人が異世界に飛び込んでいくシーンで本編は幕を閉じる。

何年か後、レカンは魔法の師匠であるエルシーラの助けを借りて家族が待つ異世界に帰還することができた。
レカンの長男ホルスは王としてレカン世界に残り、妹とともに国を治めた。

こうしてレカンを巡る神々の計らいは最良の形で実を結んだ。

世界観考察

黒穴

異世界同士を結ぶための黒い穴。
神々の意思で生み出すことができる。
基本的には迷宮の踏破報酬として出現する。
神がお気に入りの人間を死なせたくないときに、目の前に出現させることもある。
レカンの世界には「黒穴の先で富や力を得ることができる」という言い伝えがある。
ルビーの世界にはそういう言い伝えがないため、レカン世界の神の能力なのかもしれない。
逆に「落ち人」という存在が多分レカン世界には存在してない。

黒穴に飛び込んだ人間は、飛び込んだ先の世界でもう一度黒穴と出会うチャンスがあり、再度飛び込むことで元の世界に戻れる。
レカンの場合、元の世界に戻ってもらわなくては神々が困るため、ソファでくつろいでいる足元に特大の黒穴を出現させるという荒業で無理やり元の世界に戻した。

後にレカンの師匠である魔女エルシーラは黒穴のメカニズムを解き明かし、ある程度の制御を可能とした。これによりレカンを連れて帰ることができた。
なお、エルシーラが任意で黒穴を出現させるには莫大な魔力量を必要とする模様。

白炎狼

超好戦的な神獣。
神々の恩寵を受けた人間がパルシモ迷宮の最下層に行くと通常のボスの代わりに出現する。
神々の恩寵を受けた人間ということは、英雄候補ということなので、鍛えるという名目で付け狙ってくる。

竜滅剣

コグルスの大商人ザックが地竜トロンを倒すために作った大剣。
地竜トロンはレカンに倒させるために大森林の中に配置していたのだが、それがザックに見つかってしまった。
トロンは神の手助けがなければ倒せないが、竜滅剣は信託を受けた剣であり、この剣を使えばトロンが倒されてしまう可能性があった。
ライコレスは剣の引き渡しに対する妨害工作を行い、結局ザックは受け取りできなかった。
この神の介入によってザックも剣匠も大いに苦しんだ。
ザックは非道の商人ではあるが、信心深い敬虔な信徒であるため、ライコレスとしてもこれは悲しい決断だった。

竜滅剣自体はレカンの手にわたり、<アゴストの剣>としてレカンの窮地を幾度も救った。
制作した剣匠もこの剣を作ったせいで不幸に陥っていたが、レカンが救済した。
ザックも別件で深刻な呪いを受けたが、レカンと妻たちのおかげで解呪され、幸せな晩年を過ごすことができた。

これら3つの救済には、先の件で負い目を感じていたライコレスの意思がかかわっていそう。


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