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家計の健全性を保ったまま家を買う

『結婚して子供ができたら住宅ローンを組んで家を買う』と考えている人は多く、実際、不動産会社の新築戸建てのメインターゲットは30代のご夫婦だ。

私はこの固定概念を見直して、住宅購入のタイミングを20年後ろ倒ししたほうが、人生トータルで考えて家計の健全化をはかれるのではないかと考えている。

その理由はいろいろあるが、今回は税金と教育費・健全な家計の視点からご説明したい。


税金と教育費のピーク

自分や家族が住むための住宅をローンで購入すると、住宅ローン控除が受けられ、年末の住宅ローン残高の0.7%を13年間、その年の税額から控除してもらえる。

もし子供が生まれた年に住宅ローンを組むと、13年後、子供が中学生の時に優遇措置がなくなり、税額が上がる。

ほとんどの方が数千万円のローンを組むので、0.7%は数十万円単位だ。

そして子供が中学の頃から教育費の支払いのピークが訪れる。

その上建物は10年を超えると修繕費がかかり始め、また電化製品などの買い替えが必要な時期が来る。

優遇措置がなく税額が増えた上にローンの支払いがあり、住宅の修繕費が必要になる時期と、子供の教育費支払いのピークの時期が丸かぶりしてしまう。


健全な家計とは

ところで健全な家計とはどのようなものだろうか。

企業の決算書類のひとつである貸借対照表(バランスシート)は、『資産』『負債』『純資産』の状況が一覧表になっている。

こんな感じ。

「資産?純資産?名前が似ていてわかりにくい〜」と財務諸表の勉強を始めた頃に思ったが、知ってしまえば簡単だ。

これを家計に当てはめてみる。

左側の『資産』はプラスの持ち物。
預貯金・株や投資信託など・保険・マイホームや車・など、、、。

右側の『負債』はマイナスである借入。
住宅ローン、マイカーローン、カードローン、誰かから借りているお金など。

『純資産』🟰『資産』➖『負債』

つまり家計の実質的なプラスの部分が『純資産』

例1・貯蓄が100万円で借金が90万円あれば、純資産は10万円となる。

例2・たくさん不動産を持っていて3億円の資産があっても、借入金が3億円なら、実質的にはプラスにならない。

企業の財務健全性を図る指標の一つに『自己資本比率』があるが、これは単純化すれば『純資産』の比率で、その数値が高い方が健全性が高いということだ。

例1は10%
例2は0%

純資産の比率から考えると、家計の健全性は例1の方が高い。

ぜひご自身の家計のバランスシートを作ってチェックしてみてほしい。

借金は良くないと教えられてきた。
すぐに返すべきだと。

借金があっても預貯金がもっとあれば、家計の健全性はそう低くはない。

キャッシュは手元に置いておかないといけない。
貯金ができたからといって、慌てて全部を借金返済に回すのは考えものだ。


家を買った場合

現物のマイホームは価格変動が大きい

価格が上がれば資産になるが、下がると住宅ローン残高よりも価値が低くなってしまい、純資産比率はマイナスになる。

「ローンを払い終えれば自分のものになるから、マイホームは資産だ」という意見があるが、半分合っていて半分間違っている。

経済成長している国なら、マイホームを買えばその価値は国の経済成長と一緒に上がっていくが、日本は低成長なので、マイホームの価値が上がるか下がるかはプロでも読めない。

2020東京オリンピック後は東京の地価は大暴落すると言われていたが、実際は外資の資金流入でかなり上昇した。

今ではマンションの平均価格が1億超という信じられない状態になっている。

プロでも分からないことを、素人である我々が予測できるはずはない。

低成長の日本で住宅を購入するのは、まあまあギャンブルなのだ。

家庭があって子供を養育しなければならない立場で、普通はギャンブルには手を出さない。

ところが、友達も買っているし、親も買って大丈夫だったし、『普通子供が生まれたら家買うよね』という固定概念で、不動産屋さんの勧めに応じて住宅ローンを組んでしまうことが多い。

将来、古家は残るが、もしその価値が500万円しかなく、トータルで支払ったローンが5000万円だったとしたら、それは本当に資産と言えるのだろうか。

その5000万円は、自分の大切な時間を使って産み出した宝のはずである。

コツコツ貯めた数百万円を頭金にして住宅ローンを組んで家を買った場合を例にとる。

貸借対照表の左側の資産にマイホーム、右側の負債に住宅ローン。
現金は頭金支払いで減り、純資産の比率はかなり低くなる。

家計は不健全な状態になるが、多くの人はその後頑張ってまた貯蓄をし、家計の健全性は少しアップする。

そして13年後、税金とローンと修繕費と教育費の支払いピークが訪れ、せっかくの貯蓄を取り崩し、また家計の健全性がダウンしてしまうというパターンが多い。


人生全体の長期的な目線で考える

私はここで貯蓄を取り崩してしまうのは、もったいないと思う。

積立で複利の爆発的な効果がでるまでには、30年〜40年かかる。

『72の法則』を聞いたことがあるだろうか。

例えば100万円を6%で運用した場合、
72÷6=12 
12年で2倍の200万円になる

という、複利の効果をざっくりと計算するときに使うものだ。

これはまとまったお金を運用する時の計算であって、積立で運用していく場合はもっと時間が必要(30~40年)だ。

しかし複利は時間が経てば経つほど爆発的な効果が出る。

ただ最も重要なことは、『取り崩さず、投資を続ける』ということ。

若い人には時間という最強の味方がついている。

30歳から40年間投資したら70歳だが、50歳から始めたら90歳になってしまう。

70歳ならちょうどリタイアの時期、老後資金が確保できる。

とにかく投資を途切れさせなければ、将来も家計の健全性を保った状態を維持し、資産を作ることができる。

若い時に住宅ローンを組んで30年間返済をしていくのは、全く逆の行為である。

ローンは複利でお金を失っていく行為だから。

健全な家計とマイホームの両立

とはいえ、マイホームは多くの人の夢。

そこで住宅の購入時期を20年ずらすということを提案したいと思う。

子供と過ごせる時間は思いのほか短く、子供は20歳前後で家を出て独立することが多い。

人生100年時代、そこからの時間のほうがずっと長い。

教育費がかかる間は賃貸で過ごし、教育費のピークが過ぎてからマイホーム購入を考えることで、住宅資金と教育資金の支出の時期をずらし、積み立てで資産形成の土台を築いて欲しいと思う。 

この資産は引き続き投資をし続け、決して頭金に使うようなことはせず、無理のないマイホーム購入をする。

この時フルローンで住宅を購入しても、金融資産があるので純資産比率は比較的高く家計の健全性は保たれる。

50代でも住宅ローンは組めるし、その時の資産額に応じて、小さい家を買うか、駅近のマンションにするか、そのまま賃貸にするか、将来の老人ホーム入居に備えるか、どこかに移住するかなど、他にもその時代に応じていろいろ考えられると思う。

子育てが終わった時に選択肢がたくさんある状態にできる。 

未来の社会がどうなるのかは、誰にもわからない。

リスクは最小限にして、安全運転で家計を運営してほしいと考えている。

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