Reborn:オタク
みなさんにとって、「生まれ変わった」かのように自分の変化を感じることが、ありますか?
どこにでもいるありふれた大学生の私にとっては、オタクとしての自分でした。
ある時期まで、色々な音楽を広く浅くなんとなく好み、流行ものは絶対チェックしている、といったミーハーだった私が本格的なオタクへと変貌を遂げたのは、約3年前のことでした。
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友人が好きなアイドルの話をしていた時のこと。その子が「WannaOne」というK-POPアイドルグループが好きで、そのアイドルたちは過酷なオーディション番組を勝ち抜いてデビューした"選ばれし者"であること、自分の好きなメンバーについて語ってくれたんですね。
それがきっかけでそのオーディション番組を視聴してみたんです。その番組中、積極的にチームメイトを助け、時にはリーダーシップを発揮して、自分が結果的に報われなくてもそれを事実として淡々と受け止める、そんな姿が印象的な、とある出演者がいました。
はじめは目立たない存在でしたが少しずつ成長していき、やがて自身も人気を獲得していく、そんな彼に猛烈に惹かれていきました。
それからというもの、一回につき約2時間の長尺の番組(番組全部を見るのにかかる時間は、日本のテレビドラマ1クール分の総再生時間よりも長い)を僅か1週間で見終え、彼の近況を調べ、番組でのデビューは叶わなかったものの、どうやら番組終了後アイドルデビューを果たしたらしい、という事実にまで辿り着きました。
その後は公式SNSをフォローし、慣れない韓国語に苦戦しながらファンクラブに加入したり、イベントがあれば足を運び、CDがリリースされたら自分のバイトの給料の許容範囲で最大限購入して、特典を手に入れる。清々しいほどわかりやすい"オタク"となるのに時間はかかりませんでした。
グッズが発売されれば飛びつき、公式SNSの更新が多い時間にはソワソワしながらスマホを見つめ、生配信があればなるべく見る。このように、"彼"が私の生活の中心になっていったのです。
こんな私のオタクライフが一変したのは昨年春。私の推しであった"彼"が、飲酒運転をしてしまい、その当時所属していたグループを脱退してしまったのです。
日本のアイドルであれば、しばらくの活動謹慎を待つということ、推しの社会的外聞が悪くなるということぐらいで、特に大きな問題にはなりにくいのですが、推しの活動拠点は韓国。運転代行サービスが一般化し、飲酒運転に関する法律も日本以上に厳罰な韓国では、致命的なスキャンダルでした。そしてそれは、彼のアイドル生命、並びに芸能生命の終わりをも意味していました。
こうして「1点集中で愛を注げる対象」がなくなってしまった私は、途方にくれました。なぜなら、嬉しい時も、辛い時も、"彼"の映像を見、オタクとして過ごすことで私は精神を保っていたからです。つまり、アイドルであり推しであった"彼"に、精神的に依存していたんだと今なら思います。
その飲酒運転事件の後すぐは未練もたらたらでしたが、しばらく経つと愛は冷めて"オタク"としての私は一度死にました。
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一度オタクとして死んだ私が蘇ったのは、約半年後のこと。人生で初めてとも言える「推し」がいた、かつて好きだったグループが、オンラインのプラットフォームを使ってアニバーサリーコンサートをする、ということでそのオンラインライブを見てみたんですね。
すると、そのグループに夢中だった頃のこと、親におねだりしてたまにCDを買ってもらっていたことを思い出し、そして「推し」が年を重ねても尚さらに進化していたことに胸が高鳴りました。
一周回って、私はまたそのグループのことを好きになりました。
それ以降は、好きなグループのCDがリリースされるタイミングで買うCDは1枚と決め、K-POPで好きだった"彼"を推していた頃のようにグッズを大量購入することもなくなりました。
その結果、「オタ活」にかかる費用の節約に成功、浮いたお金を貯蓄に回すほか、自分用の服や小物、コスメや生活雑貨等にお金をかけるようになり、自分に対して投資する楽しさを知ることができました。命を削る勢いで(お昼ご飯代すら節約して、ご飯がおにぎりだけという日も)、"彼"にお金を投じていた頃とは大違いです。
オタクではない他の人から見たら、何も変わっていないように見えるかもしれません。けれども、自分の中の意識や、優先順位の高い対象物、お金の使い方まで変わりました。
そして、元々好きだった「推し」だけではなく、これまでは勧められても目もくれなかったジャンルにも興味を持ち始め、視野を広げていくようになりました。
以前ほど流行にがっつくこともなくなり、しかしながら自分の好きなものを増やし、それらに囲まれて生活する「オタク」へと変わりました。
1点集中型ではないので、いつもいつも完璧に情報を追えている訳ではないのですが、それでも「あぁ、やっちゃったなー」ということすら楽しく感じています。
狭く深いコミュニティで競い合うようにオタクをやっていた頃と比べ、現在は驚くほどに精神も安定していて、やはり視野が狭くなることはよくないのだなと、身をもって知ることができました。
みなさんにも、辛い経験や、それをきっかけに変わったことってあると思います。私の場合は、趣味との向き合い方、お金の使い方であったわけですが、どういった経緯であれ、結果であれ、「前に進んだ」ということは変わらないと考えています。
もしいま、辛い状況にあったり、悩みがあって足踏みをしている人がいたら、こう声をかけたいと思います。「時が解決してくれるよ、だけど自分でも懸命に抜け出そうと足掻いてみるといいよ」と。
その足掻きが、新たな自分と出会うきっかけになるかもしれませんから。
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