【私の話Vol 26:私の持つ誠実さ】

10年前、仕事で男性の高齢のお客様にプレゼントを頂いたことがあります。
誕生日でも取引の成果でもなく、日頃の感謝という事で頂きました。
高級なボールペンでとても恐縮したのを覚えています。
何故突然このような贈り物を頂けるのか尋ねましたが、とにかく日頃からの御礼であるという言葉だけ頂き、それ以上の意味は無いとの事でした。

会社に報告し、受け取って良いという事になり。大変有り難い機会なので、私の仕事に対する姿勢や、取り組み方、私の長所について、そのお客様に質問をさせて頂きました。

「君の最大の長所は、その誠実さだよ。
スキルや技術は磨くことが出来るが、仕事に対するその誠実な向き合い方は鍛えれば身に付くものではない。心の姿勢だからね。信頼しているよ。」

その言葉を頂く事が出来た時には本当に嬉しかったのを覚えています。そのお客様はとても要望が厳しく、社内でもお伺いする際やご対応する際には細心の注意を払うようにと指導を頂いていたお客様でした。数年前から担当をさせて頂くようになり、何度も叱られ、何度も会社に対してご指導を頂きながらも、何とか担当を続けさせていただきながらお取引をさせて頂いておりました。そのお客様に認めて頂けた瞬間だったので、物凄く嬉しくて感動したのを覚えています。

「誠実でありたい」という姿勢は私の中での信条になっていると思います。
仕事で接するお客様に対して、恋愛で好きになった人に対しては、とにかく誠実である事が何よりも重要だと思って生きてきました。

最近、自分の「誠実さ」について考える瞬間があります。誠実さとは、一体どういう生き方や姿勢を現すのだろうと考えました。

東野圭吾さんの小説「新参者」第二章〈料亭の小僧〉というお話の中に、料亭の見習いの料理人さんが料亭の主を庇い、最後まで口を割らずに嘘をつき続けるシーンが描かれています。主人公は周辺の事実から嘘を見破り料亭の女将さんに対して真実を追求するシーンがあるのですが、ラストのやり取りが私は大好きです。

主人公
「そういえば彼にはかわいそうなことをしました。ちょっといじめすぎたと反省しています。でも彼は大したものだ。とうとうご主人から頼まれたことを白状しなかった」

女将さん
「あの子は使えますよ。料理の腕はいくらでも磨けますが、口が堅いっていうのは客商売を目指す人間にとっては財産です」

私はこのやり取りが大好きで、時々読み返しています。
嘘をつく事は正しい事ではありませんが、大切な誰かを守るために、人生には時として嘘を付く事が必要な瞬間があります。

森田まさのりさんの名作「ろくでなしBLUES」VOL.11
「CAREER  OPPORTUNITIES」という話の中で、高校から就職先を斡旋された生徒の一人に対して、教員から、出世を早めるように働きかけてやるから主人公の悪行を暴露して退学に導く手助けをするように求めるシーンがあります。
この時の生徒が教員に対して断りを入れる際のセリフがすごく好きです。
「出世に10年かかろうが20年かかろうが、ダチを裏切って気まずい思いで生きるよりマシですよ」
私はこのセリフに出会い、例え自分にとってどんなに有利な話を持ち掛けられたとしても、大切な人を裏切り気まずい思いで生きていくくらいならチャンスを手放した方がマシだと心から想えるようになりました。

この生徒のエピソードには続きがあり、教員から圧力を掛けられ一人の仲間が主人公を裏切ろうとすることに気付いた生徒が、教員を殴って退学になり就職の話も全て白紙になるシーンが描かれています。
自分の将来だけ考えれば絶対に選択しないはずの行動、大切な人を、守りたい人を自分の力で助けるために生徒が取った行動に心を動かされました。

人は合理的な生き物ではありません。
大切な人の為であれば、時には嘘を付くことがあります。
大切な人の為であれば、自らの未来よりも優先して大切な人を守ろうとする事があります。大切な人のために貫く信念や想い、手に入れたい未来のために貫く心の事を人は真心と呼び、真心を持つ人を誠実と呼ぶのかもしれません。

愛するあなたへ
最近、嘘を付く事や他者を偽る事があった私自身に対して、私は、自分はもはや誠実な人間ではないのかもしれないと悩んでいました。

でも、自分自身で誠実さとは何かを考えた時、
自分が信じる道を歩み、
世界で一番愛する、
世界で一番大切な人のために、
貫く真心を誠実さと呼ぶのであれば、
私は自分自身が誠実であると十分に言えると思っています。

あなたの幸せを願い、
あなたの幸せを実現するために行動します。
あなたを世界中の誰よりも愛しています。
あなたのために、誠実に行動する事を誓います。
愛しています。ずっとずっとそばにいてください。



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