一人暮らしは快適?
スーパーで買物をしていると、男の人がひとりで買物かごを持っている姿をよく見かける。今では当たり前のこの光景が、ひと昔前は異様だったなんて、信じられないだろう。よっぽどの買物好きは別として、男の人にとってはちょっと勇気のいることだったと思う。なぜなら、特別な事情があるにちがいない、という好奇の目が少なからずあったからだ。
また、わたしが子供の頃は女の人が車を運転していることが珍しかったので、モタモタと運転技術が下手な車をみると、運転手は女に違いない、という偏見があった。
今思えば、なんとも窮屈でマイノリティに厳しい、息苦しい時代だった。男女の役割がはっきりしていて、短大を出たお嬢様が、花嫁修業を経て専業主婦となり、良妻賢母として生きることが女性の最高峰とされた時代があったのだ。
裕福ではなかった我が家では、母も家業を手伝ったし、会社勤めもして家計を支えていたこともあり、わたしは結婚しても子供を産んでも仕事はするものだと思っていたが、夫は家にいて欲しいという気持ちもあったらしい。
今は女性が働くことは結婚前も後も当然のことであり、買物も料理もゴミ捨てもパパの仕事だったりする。わたしも30年くらいしてから生まれたなら、ワンオペ育児とは無縁だったかもしれない。と、いうかそもそもワンオペ育児なんていう言葉が現れたこと自体、言語化してくれてありがとう!って思うが、とにかく今は、ある意味いい時代だ。
弱い立場の人が声をあげやすくなってきたのは、もちろん、怒りとか悲しみを爆発させてきた人たちの勇気と努力の賜物であると思う。
車を運転する女性がどんどん増えて、運転技術も徐々に上がってきたこともあるけれど、車を自ら運転して行動範囲を広げる女性達が増えてきたことで、今は女性ドライバーだから下手くそなんてイメージはお門違い、ということがはっきりしてきたし、九州から高速で新潟まで友だちに会いにくるような、フットワークの軽い若い女性や、ひとりで外国旅行するのが楽しいという女の子もいる。
自分の推しに会いに行くために、自分の稼いだお金をつぎ込んで自由に闊歩する女性が果たして束縛やしがらみでがんじがらめになってしまいそうな、結婚をする、その意味を見出すことができるだろうか。
スーパーで買物をする男性が増えたのも、男子厨房に入らず、なんていう変な価値観があったのね、くらい、今は人気の男性芸能人が料理をするTV番組があったり、一人暮らしでも、料理が出来なくても、お惣菜やインスタント食品が充実してきたこともあるかもしれないし、何よりお店に入ってから出るまで、一言もしゃべらなくても用が足りる便利さも一助となっているだろう。
マイノリティ、いやむしろマジョリティかもしれない独身男性が生活を維持しやすい今の時代は、たいして料理上手じゃなくて、扱いにくくて面倒くさい女性とわざわざ結婚して、お小遣い制の窮屈な生活を強いられるくらいなら、快適な一人暮らしを選ぶ方が得策と思い込んでいるかもしれない。
便利な世の中の副作用とも言うべき、未婚率の高さにため息することしかできない自分が情けなく、何とかならないものかと気を揉むばかりである。
将来、この自由な独り身の男女が、はた、と老いを感じ始める頃、次の世代が結婚の価値を再発見して結婚ブームが来たとしたら、時代に取り残されて寂しい思いをしないか、時代が変わってもブレない自分が確立されているのかどうか、今一度、自分を見つめ直して欲しい。オバさんの取り越し苦労なら、それでよいのだが。
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