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「そのTシャツいいね!」と英語で言えますか?

いきなり問題です。

あなたの外国人の友人が待ち合わせに
面白いTシャツを着て現れました。

あなたは彼に「君のTシャツいいね!」と言いたいです。
これを英語で表現しなさい。

頭の中でOKです。制限時間10秒。
下にスクロール禁止ですよ!




はい。


どうでしょうか?
思い浮かんだのは
Your T-shirt is Nice.    Your T-shirt is Good.
とかではないでしょうか。

正解です。


もちろん正解です。
ですが実は、もっと自然な言い方があります。
しかも、NiceやGoodを使わない言い方です。
もう一度考えてみましょう。
制限時間5秒。



思い浮かんだでしょうか。




難しかったでしょうか?

最も自然な言い方はこう言います。

I like your T-shirt.(そのTシャツいいね)

これが一番自然な言い方です。

たぶん、「likeでいいのか!」ってなる人が
多いんじゃないかと思います。


そう、これがネイティブも使う
一番自然な「~いいね!」の言い方です。


あなたも一歩ネイティブに近づきました!
勉強になりましたね!
チャンチャン。


ではなくて、実はここからが本題である。
ここで面白いのは、僕たち日本人は皆、このlikeが全く思い浮かばないことである。

何でか?

なぜなら日本語文に「好き」が入っていないからだ。
「いいね」なので、どうしても good や nice が思い浮かんでくるのだ。
間違いじゃない。正解である。
でも、これは何を意味するか?

つまり僕たちは、頭の中で like=「好き」と、完全に意味を固定化してしまっているのである。上でも言った通り、「好き」が文字上にないと like が使えないのである。これは少し問題だ。

これは散々、中学校の授業や宿題で
I like baseball. I like swimming. I like a dog.「~が好きです」
とやらされてきた影響だ。
どんな文章でも like が出てこれば「~好きです」
と反射的に訳してきた。

だから、学校で習った通りに訳せば

I like your T-shirt.
「私はあなたのTシャツが好きです。」

となる。

でも、実際のところ、どうでしょうか?
相手のTシャツが気に入った場合、
「あなたのTシャツ好きですよ。」
とはあまり言わないだろう。
「そのTシャツいいね!」という方がよっぽど自然でしょう。
だから、I like your T-shirt. は「そのTシャツいいね!」であって
「私はあなたのTシャツが好きです。」と訳したらダメなのである。

つまり、文脈によっては、likeは「好き」だけじゃなく、「~いいね」「~が良いと思う」と訳した方が自然な場合もあり、常に like=「~が好き」と固定して考えていると、like を活用できる幅を自ずと制限してしまうことになる。これが単語を教科書通りに訳したり、英文を直訳する習慣の弊害だ。

そうではなく、大事なのは、いつも英語を日本語に変換する際に自然な表現になるように意識すること。そうすれば、「この単語ってこういう使い方もできるんだ!」と自ずから単語の活用の幅が広がっていくのである。

*ちなみに今やSNSにおいて一つの文化となっている「いいね」、
Facebook が発祥らしいが、この「いいね」も、
もともと英語では「like」である。
これが日本に輸入された時に
「いいね」の訳をつけたのは秀逸だなと思う。
「好きです」じゃなくて良かった。
「いいね」の方がよっぽど自然な感じだもん。

まあ、それはただの雑談として、

この like と同様のケースが、
僕たちが「マジで!?」「ほんとうに!?」「ガチで!?」的なリアクションをすべて Really? で済ましてしまうことにも共通して言えるのである。

Really? は「ほんとうに?」と習っており、割と日常でも
使いやすい意味で覚えているので、どのようなケースでも流用してしまいがちだ。それでも別に間違いはない。
しかし、日本語で「ほんとうに?」と言うのと「マジで!?」「ガチで!?」と言うのには多少温度差があるように、英語でもその辺りは程度によって使い分けられている。

日本語の「ガチで!?」「マジで!?」(激しい驚き)と言いたい場合
英語では Really? よりも No way! (ノー ウェイ!)や No kidding!(ノー キディング) と表現した方がそれらしい響きがある。

実はこの辺りの表現は中学で習うのだが、
それでもとっさに出てこないのは、なぜだろうか?
(もちろんその表現自体を忘れているのもあると思うが、、、)

なぜなら、単語帳や教科書だとNo wayは「まさか!」「とんでもない!」と、No kiddingは「冗談じゃない!」などと習うからだ。

僕たちはこれを文字通りそのまま覚えているのである。

No way=「まさか!」「とんでもない!」
No kidding=「冗談じゃない!」
と、完全にこのまま覚えているのだ。

でも、今時「まさか!」とか「冗談じゃない!」なんて言う人はそんなにいない。そんな表現、マンガで見るぐらいだ。
つまり、これらの表現を教科書や単語帳そのままの意味で覚えている限り、日常生活でNo way! やNo kidding !を使う場面はほとんどないのである。

こういう時こそ、自分の普段使う自然な表現に沿って、変換して覚えるのである。
No way! だったら「まさか!」じゃなくて、「ウソッ!」とか「ヤバッ!」とか「ガチかっ!」とか「ありえん!」とか。
No kidding! も No way! とほとんど似たような意味だけど、少なくても「冗談じゃない!」って覚えるのはやめる。自分が「冗談じゃない!」と思う時、実際に普段それをどのように表現しているかを考える。
「ウソでしょ!?」とか「ハァッ!?」でもいい。
とにかく自分の表現に寄せて覚える。これが大切なことだ。

じゃあ、以上を踏まえて試しにこれはどうでしょうか?

期末試験当日にある学生が、クラスメートの友人に
「おれは昨日、英語をガチで勉強した」
と言いました。
これを日本語訳してください。

とりあえず10秒考えてください。


ガチなんて教科書で習ってません。
でも若い人は自然にこういう表現をします。
じゃあ、この場合の「ガチ」は、
どういう意味で使われているかを考える。
さあ、どうでしょう?



ヒント


I studied English (  ) yesterday. 



答えは

I studied English ( hard ) yesterday. です    *very hardでも可

この文脈で学生が言った「ガチで」は
「一生懸命に」とか「必死で」など
の意味であり、それは英語の「hard」に当たります。

最近は「ガチで」って「一生懸命に」って
意味でも使われたりしますよね。
何かに真剣に取り組む人たちのことを指して
「ガチ勢」と言うような使われ方をするように。

「hard」 は教科書では「一生懸命に」「必死で」としか
習いません。しかし、この学生にとっては「一生懸命に」「必死で」のカジュアルバージョンが「ガチで」であって、逆に言えば、この学生からしたら、hardは「ガチで」とも訳せる訳です。

つまり、少し極端に言えば、その英単語に相当する日本語訳なんか
人によって、いくらでも変わるのである。
あくまで英単語帳や教科書の語訳や日本語訳は、ただの基準であって、
ちゃんと自分のフィルターを通して、自分の中で自然な言葉に変換して
インプットする。これが重要なのである。

***

最後に、以上の話に関連する、夏目漱石の有名な逸話を紹介して終わりたい。(知っている人も結構いると思います)

夏目漱石が英語教師をしていた頃、あるとき生徒が
「I love you.」を「私は君を愛ています」と訳したのを見て
このように指導したのだと言う。
「そんな言い方はしない、『月がキレイですね』とでも訳しておけ」と。

え?と思いますよね?
「月」も「キレイ」も英語に出てこないし、普通に「私は君を愛しています」で合ってるじゃん!と。

しかし、実はこれもこの記事で書いた内容と同じ問題である。
漱石は、日本人が好意を抱く相手に「あなたを愛しています」なんて言うのは少し不自然だと考えた。その伝え方は日本人の感覚から少しズレていると。
だから、「I love you」をただ直訳するのではなく、日本人だったら、どのような言葉で「I love you」を伝えるかということを考慮して、その一例として「月がキレイですね」を挙げたのである。
好きな相手にじゃないと、そんなこと言わないのだから。という話だ。

なんか情緒ある話ですよね?

実はこの話、夏目漱石がそんな指導をしたという記録はなく、
どうやら都市伝説だという説が濃厚らしいが、
エピソード自体はかなり興味深い。

つまり、「I love you」の訳し方なんて人によっていくらでもあるということだ。「大好きだ!」とか「愛してる!」でももちろんいいし、「君にゾッコンだ!」でもいい。「横顔キレイですね」とかでもいい。(ああ、これはちょっと気持ち悪いな)

まあ、ここまでくると、ちょっと極端だが
要は教科書や単語帳通りの日本語にとらわれないことが大事なのだ。
自分が使う自然な言い方に変換して、自分の中にインプットする。
僕らは外国語を勉強する上で、これを怠ってはいけないだろう。

もう直訳はやめよう!ジャパニーズピーポー!(僕も含め)


ここまで読んでくれて、ありがとうございました。









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