蓮華山麓(19)─若い日の放浪
あとになってからそう思うのだが、若い一時期、自分がどこへむかっているのか自分でもわからない放浪の時代を過ごすのは決してムダではない。
会社を辞めて、行った夏の山小屋で、私は女房と初めて会っている。いやそのときは、後に夫婦となるとは互いに夢にも思っていなかった。彼女もまた、勤めを辞めて放浪をはじめたところであった。
山小屋が閉まって下山した後、私はシンキチ君の家にしばらく居候して彼と一緒に農協の米集荷のアルバイトをした。シンキチ君はやはり大学生で山にバイトにきた後、