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【小説18】勘違い女神の弊害(異世界転生したオレはスキル<コピペ>で人生を謳歌する)

18 王立学園に潜入


  王立貴族学園は王都の中央にそびえ立つグランダ城から、馬車で東に約30分程度の場所にあり、その一帯は小さな学園都市になっている。<透明化>して門をくぐると多くの生徒が行き交っていた。

学園内は広大で勇者達の居場所はわからず、仕方がないので通りすがりの少年に声をかけた。
「すみません。”渡り人”のタチバナ様に会いたいのですが。どこで会えますか?」
少年は少し俺の顔を見ていたが「あ、えっと、あっちの訓練所です。」そう言って示した方向に、俺はお礼を言って歩いて行った。

勇者達4人はすぐに見つかった。訓練所と言うのは魔物召喚訓練所の事で、召喚された魔物相手に4人は特別訓練を受けていた。(これだよ俺が欲しかった召喚施設は!)
訓練所の中は立ち入り禁止で、厚いガラス窓越しに4人を<コピペ>してみた。
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ジューク タチバナ<勇者>男
職業レベル 91
属性 全種 
特性スキル *クリティカル 聖剣召喚
シークレットスキル<xxx>
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4人のレベルは同じくらいだ。リクを<コピペ>して不安になる。
彼はPT経験値2倍を持っていた。
PTを組んだ4人はきっと実力に伴わないレベルになっている。

トーマ カガミ(剣星)雷 火*<多段切り><能力強化>
セイヤ ハマダ(聖魔導士)全種*<ヒール><シールド>
リク マキタ(神弓)風 聖*<PT経験値2倍>

4人は時間をかければきっと強力になるはずだが、まだこの世界に来て2か月弱。
いつドラゴンに対峙させるのか。死者が大勢出ているのを4人は知っているのだろうか。
不安を胸に俺は、楽し気に訓練している4人を見ていた。

気が付くと周囲が騒がしく、振り返ると多数の男子生徒に囲まれていた。
(しまった、子どもが制服を着て忍び込んでるのバレたか。)

「ごめんなさーい。」と言って俺は生徒達をかき分け
「あ、ちょっと、 名前・・・・」と、聞かれても俺は無視して走り去った。
それからはダンジョンで休憩しつつ<透明化>して昼まで学園を探索して回った。

昼食タイムになると4人が食堂にやってきて会話しながら食べている。
彼らは学校カーストで、良い意味での上位の男子だろう。
きっと人気者で俺には遠く無縁の存在に見えた。
そっと後ろに立って俺は耳を傾けた。

ジューク 「レベル100が遠いな。早くドラゴンを倒して日本に戻りたいよ。」
セイヤ 「ずっと訓練所は飽きるよな。 ダンジョンに行ってみたいぜ。」

トーマ 「俺はここが結構気に入ってる。ゲームみたいで楽しい。」

リク 「リセット効かないんだ。マジで怖い。100になりたくない。」

声を掛けたい衝動に駆られるが堪える。リク以外は恐れていないようだ。
王国はこの4人がいれば討伐が成功する算段があるのだろうか。

セイヤ 「ビビリク~他国の勇者達とSクラス冒険者達も参加するって言ってたじゃん。」
トーマ 「リクは後方支援じゃないか。後ろから矢を撃ってればいいんだよ。」
ジューク 「他の冒険者の足手まといにはなりたくないな。」
リク 「終わったら本当に帰れるのかな。嘘じゃないよね?」

トーマ 「王女殿下が言ってる事だからな。」
セイヤ 「イマイチ信用ならねーよな。」

ジューク 「話変わるけど、ユカ達はどうしてるのかな。」
セイヤ 「王宮でのんびり帰れる日をまってるんじゃねーの。いい気なもんだ。」
ジューク 「元気だといいけど。」
リク「会いたいよね。」

トーマ 「そういえば、俺らの訓練を見かけない美少女が覗いてたって。」
セイヤ 「その話詳しく!」

まさか俺? 聞くに堪えられず、俺はダンジョンに戻った。

レベルが100になるとドラゴン討伐が開始される話しぶりだった。
なんとも頼りなさげなジューク達に、俺の気持ちはやるせない。
今は他国の協力を要請中という事、なら強者の<コピペ>チャンスだ。

俺は学園での話をユカ達に伝えた。
ユカ 「いい気分で王宮で待ってる?失礼ね。牢屋にぶち込まれたのよ。」
トモ 「日本に戻れるって本当かな。また城に戻らないといけないのかな。」
ミラ 「渡り人が戻る方法を聞いたことがありません。異世界人の召喚は拉致となり、召喚する魔導士たちの命も危険なので禁忌となっているのです。」
イブキ 「嘘をついてるってこと?」
ミラ 「私はそう思います。」

俺 「他国の協力があるみたいだからドラゴン討伐は、3人は心配してないみたいだった。」
トモ 「リクは臆病なのよね。」

俺 「さすがにあの4人は前線には出さないと思うけど。」
テオ 「捨て駒にされる可能性もあるぞ。」
イブキ 「そうなったら、助けてくれるよね? マスター。」
俺 「約束はできないけど、協力はするよ。」

テオ 「シェルは本当に善人だな。いつかコスモスに到達するかもしれないな。」
「まさか、ありえないよ。」
俺は2人毒殺している。カオスに到達してグロスに闇落ちしてもコスモスはないな。

コスモスは善行を重ねると到達する領域だ。
ここに到達すると聖女や聖人になれて女神と交信できるという。
現在は聖女も聖人も存在していない。善人には生き辛い時代なんだろうな。

 
 



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