【毎週ショートショートnote】非力面接をブンブンしてみる  

「それで? 志望動機は?」

俺の前には、あの秘密警察の人事部がいる。

俺は生唾をのみこみながら、答えた。

「危険な仕事じゃないんだろ? だからだよ」
「ふうん、なるほど」

これは相棒のためだ。

人事部は、頭をかきながら、質問をつづける。

「あなたを調べさせていただきました。もともと、こちら側の人間だったのに、なぜ、今の組織に?」
「だからだよ」

はったりをかませ。
もともと、俺は不利だ。
この人事部さえ、かき回せなければ、俺の価値はない。
相棒が、ハンドミキサーでメレンゲつくるように、ブンブンかき回せ。

「わかりました。合否は後日に」
「ありがとうございます」

よし。
組織に恩を返せる。
昔よりかはマシだな。5重スパイしたときは、キツかったからなあ。


「ただいまー」
「おかえり。飯、できてるぞ」
「今日はなに?」
「魯肉飯だ」
「あの台湾飯ですか!」
「食いたいって、言ってたからな」
「うれしー」
「さっさと座れ」

「「いただきまーす」」

この日常は、俺が守る。