【毎週ショートショートnote】どこもお遍路

うっかり風邪をひいた。
布団をかぶり、うんうんうなりながら、考えるのは鎌犬のことだった。

あいつ、弁当二つ、つくってるだろうな。
だれかに告白したのかな。
告白したとして、受け入れられたとしたら、私は喜ぶべきだろうか。

喜ぶべきだろうな。
あいつに彼女ができたのなら。
でも、もし、私のことを待っていたとしたら。


「ここどこだ?」
長い長い階段の上に私はいた。
「夢の中だよ」
私のさらに上の階段にいたのは、
「鎌犬?」
「違うよ」
違うなら鎌犬の姿で出てこないでほしい。
「これからいっしょにお遍路に行こうよ」
「なんでだよ」
「お遍路だったら、長くいっしょにいれるよ?」
「今、風邪ひいてるから治るまでな」
「え、いいの」
「好きなやつの姿で出られたら弱いんだよ」
「好きなんだ。ねえねえ、いつから好きなの?」
「わかんねえ」
「えー、どこが好きなの?」
「うまい飯つくってくれるところ」
「うわー、所帯じみてる」

その後、階段をのぼりきって起きたら、熱はひいていた。