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ミステリーオススメ本紹介。「石動戯作(いするぎげさく)」シリーズ

みんなのフォトギャラリーより、yamamotravel様から写真をお借りしました。なんと、はじめての写真です。
この牛ドーン!という感じが好きで、使用させていただきました。
今回紹介する「石動戯作(いするぎげさく)」シリーズで、私が一番好きなタイトルをイメージしたものでは、一番あっていました。
ありがとうございました。


よろこびを露にしたところで。

また、お会いできた方には、感謝を。
はじめましての方にも、感謝を。
縁がありましたね。
喋々(ちょうちょう)と申します。


今回は、殊能将之(しゅのうまさゆき)という作家の「石動戯作(いするぎげさく)」シリーズについて、お話していきたいと思います。
あ、石動戯作は人の名前です。

なお、「石動戯作」シリーズというのは、この記事でわかりやすくするために、そう呼ばせていただいてます。
実際のシリーズとしての呼び名は、なかったような…。
まあ、全部タイトルが違いますしね。
はい。


「石動戯作」シリーズというのは、「キマイラの城」が事実上の最終巻となっています。本音をいえば、もっと読みたかったです。

私は、ミステリーに関しては漫画は読むけど、小説で読むと関係性とかわかりにくいし、登場人物の名前覚えられないし、えーと、これ誰だっけ? が、何ページが読むたびに引き起こされる人間なのですが、「石動戯作」シリーズでは、そういうことがありませんでした。

なので、この記事はミステリーについて考察することではなく、「石動戯作」シリーズって、なにが面白いの? についてネタバレなしで、頑張ってお伝えしたい所存です。


では、早速、思い出を掘り起こしながら語ります。
つまりは記憶に頼って書いているので、間違っていることが多かったりもします。
しばしのながーいおしゃべりにお付き合いください。
今回は少し長いですよ!




メインの登場人物について


まず、石動戯作(いするぎげさく)って、どんな人?
という問いについてですが、かなり適当な人です。
いわゆる頭脳明晰ではありません。
30代で体格はちょっと太め、くすくす笑って、人を傷つけるようなことをあまり言わない印象があります。
愚痴を言ったりすることも多いので、かなり人間味にあふれている感じですね。

そして、アントニオという人とだいたいセットで出てきます。
もう、名前からしていろいろな憶測がとびかいそうな人ですが、私は好きです。活躍しているのが「黒い仏」「キマイラの城」のみなので、それが残念ですね。
人あたりのいい人ですが、少し意固地なところがある気がします。

物語のメインとなる人を紹介しましたが、この二人、めちゃくちゃ仲がよくて、仲のいいお笑い芸人の先輩後輩コンビのようなかけあいをみているような感じでした。
本当に可愛い…。



ネタバレなしを心がけた、おおまかな内容


では、石動戯作(いするげさく)シリーズのだいたいの内容についておはなししていきたいと思います。
全4巻ありますが、話はあまりつながっていません。
ただ、単行本の場合は「鏡の中は水曜日」→「樒/榁」→「キマイラの城」の読み順は崩したらいけない気がします。
「鏡の中は水曜日」の致命的なネタバレが後の巻にひきつがれていますので。

それより前の「美濃牛」と「黒い仏」はどちらから読んでも問題はないです。
唯一、つながっているものがあるのですが、それが「鏡の中は水曜日」でして、文庫版には「樒/榁」が収録されていたはずです。

確か「樒/榁」ができた経緯が密室本フェアをやってたから、その延長線上で書かれた作品であり、立ち位置的には特殊な作品となっています。
事実、「石動戯作」シリーズファンの中では、この「樒/榁」だけ読んでない! 読みたい! という方もいらっしゃるみたいです。
そうなると、石動シリーズは5冊なのでは? という新たな疑問が浮上してくるかとは思いますが、今回ばかりは4冊というていでおはなしさせていただきます。


では、1冊ずつ最初から紹介していきますね。


記念すべき第一作 「美濃牛」


個人的には一番好きな作品でした。
ミステリーって面白いんだなと思わせてくれたのが、一番かもしれません。
いろいろな事象がからみあっていて、最後に探偵が真相を明らかにしてくれる…という、探偵さんが最後にビシっと決めてくれるカッコいい人だなーと思った巻でした。

まさかここが伏線になっていたとは! なるほど、そういうことだったのか! という、腑に落ちるのを体感させてくれる作品でした。
一番真面目に読んでいた頃かもしれない。
雰囲気としては漫画の「金田一少年の事件簿」に慣れ親しんでいる方なら、ああいう感じの事件が起きる感じといえば、わかりやすいかもしれませんね。



人により評価が二分される第二作 「黒い仏」


いわゆる賛否両論をまきおこした作品。
この本がどういうミステリーか? という事前情報を知っているか知らないかでも、読後感が変わってきます。
私は事前情報を知ったうえで読みました。
個人的には、石動さんとアントニオさんが、たくさんおはなしして下さっただけでも満足でした。

最後まで読んで、作者の力の入れどころが変なところに注がれていたのを知って、最高だなと感じましたね。なぜ、そこに…とも思いましたが。
具体的に書くとネタバレになってしまうので、ぼやっと表現するなら、オムライス注文してたのに、親子丼が出てきた感じですかね。
ケチャップどこいった。



シリーズ最高傑作の第三作    「鏡の中は水曜日」


シリーズ順に読んでいると、もう騙されないぞ! となってくる感じですね。ちなみに読破後もタイトルの意味を調べたのですが、全く意味がわかりませんでした。
おそらく、私の検索技術の問題ですね。誰か教えて。

なんとなく、これなんじゃないかなーという想像だけはしているのですが。
たぶん、作中に登場する言語で韻を踏んでいるんじゃないかなーと思っています。
あっているかどうか調べるのが面倒なのでやってないです。

私もまたネタバレをくらってから読んでいるので、正確な判断はできませんが、石動さんってちゃんと仕事してたんだなーと思いましたね。
ただ、石動さんとアントニオさんの会話が少ないので、ちょっとだけ不満足だったのですが、それを打ち消すような衝撃があったので、最高でした。


もっとつづきが読みたい! でも、これで最終巻    「キマイラの城」


いい意味でボケとツッコミにまみれた作品でした。
どうやったら、そうなるんだ…。とツッコミを入れたくなるくらいには。
笑わせてやろうという明確な意識を感じました。
殊能将之さんの謎が深まる作品となっています。まあ、「黒い仏」の時点で、ただ者ではない感じが出ていたのですが。
なぜ、石動さんを探偵にしているのかが、疑問になるくらいには。

石動さんとアントニオさんもいっぱい会話をしていますし、なによりアントニオさんが活躍するシーンが珍しく多いので、アントニオさんが好きになったなら、読んだ方がいいかもしれません。


あたりまえですけど、ネタバレ全くなしで魅力を語るのは、難しいですね。




「石動戯作(いするぎげさく)」シリーズを読むにあたっての注意点


では、次は、こういう人に石動戯作シリーズは向かないのではないかという、個人的意見を述べます。
ネタバレ全くなしの説明なので、作品の雰囲気的なもの加味した結果の、ひとりよがりですので、話半分にきいてください。



ミステリー=トリックの良さと考えている人

ミステリーの華であるトリック。
これがたまらなく好きで、非日常に連れてってくれるんだ。
伏線とかを全部考慮して考えて、どういう展開で話が終わるのかって、想像するだけでも楽しい。
…というような人。

石動戯作シリーズはトリックありきで楽しむ作品とは一線を画しています。
というのも、作者自身がネタバレされてもいいやと考えていたらしく(そんな記述をどこかでみかけたが、どこだったかはわからないうろんな情報です)、確かにネタバレをくらった二作品も面白く読み通せました。

なので、トリックに重きをおかないという印象を受けます。
もちろん、だからといってトリックが凡庸なのかといえば、全くの逆であり、異質すぎて受け入れられる人が少ないだろうなという感じです。

私もよく分かっていないのですが、ノックスの十カ条という、ミステリーにおける定義みたいなものがありまして、これをすると、話が成り立たなくなっちゃうよー、という、いわば読者が結果に納得しないので、破らないでね、というものがあります。
まあ、密室とされていた部屋に抜け道があるなら、どこかにその伏線を入れて下さいということなんだと思っています。

つまり、ミステリーでは伏線が重要視されるということです。

その点においては、「石動戯作シリーズ」はちゃんとしています。
伏線というよりも、シーン構成であれっ?とわかりやすく教えてくれます。
ちゃんとしているのに、なんか納得できない。
そこが、魅力だったりするのですが。

もちろん、文庫版の解説(どの石動戯作シリーズかは忘れた)を読む限りでは、ミステリーに対してのお約束を完璧に熟知したうえで書いているということが明示されています。
このあたりは難しいので、私には説明できません。


長いものを読むのが苦手な人

一作目の「美濃牛」から読もう! 全部読破するぞ!
という方にはオススメできません。

とんでもない長さなので、読むとなると、かなりの労力が伴います。
ただ、長いものを読み慣れていなく、短いものほど書くのは難しいのだから、長い作品など読まなくていいという私の考えを根本から変えて下さった小説なので、個人的な感想としては、読んでほしい。

ただ、仁木悦子(にきえつこ)さんの本を読んでミステリーにハマりかけていた頃なので、そこのひいき目もあるかもしれません。
仁木悦子さんの本も大好きです。ちなみに仁木さんの本は短めです。
まだ全部よんでないですが、今、柄刀一(つかとうはじめ)さんの「天地龍之介」シリーズにハマってまして…。そっちを先に読んでいます。その記事もいつか書けたらいいな。




ミステリー云々問わず、読み終わったあとに爽快感を求める人


一番読んじゃいけないかもしれません。

もやっとした感じで終わる。
それが石動戯作シリーズに共通している雰囲気かもしれません。
現実感がないのに現実味があるというところが、いいのかもしれませんね。

よくも悪くも登場人物全員に血が通っているように感じられる。
おそらく人間関係の書き方が非常に上手いのだと思います。
曖昧な部分を多く含んでいるところに、好き嫌いがわかれてくるところなのかもしれません。



さて、ここまでお読みいただいて、とても残念なお知らせがあります


石動戯作シリーズ、全て絶版となっています。
なら、なんで紹介したのかといえば、電子書籍では読めるそうなので、そちらで。


『講談社BOOK倶楽部』で検索したところ、全著作合本の電子書籍がありました。

『殊能将之講談社全作品合本』というタイトルです。もちろん殊能将之著ですよ。

電子書籍で読めない方は、図書館に行っていただければ、あると思います。


と、いうのも。
殊能将之さんはデビュー作の「ハサミ男」が一番有名で、二度読み必須ともいわれるくらいの人です。
「ハサミ男」は、ミステリー好きな人なら避けては通れない作品です。
どちらかといえば、そのデビュー作を説明する方が難しい。


ちなみに私はそのデビュー作でも致命的なネタバレをくらいつつも、楽しく読めました。
そして、なぜかデビュー作は今も文庫となり、書店によっては販売されていたりします。

なによりも残念なのは殊能将之さんはすでに亡くなっているため、新作・続刊が読めないこと。
辛い…。

むろん、ネタバレなしの方が衝撃が強いかもしれません。
だけど、ネタバレありでも私は面白かったです。



以後、雑なひとりごと


人生においてどんな本を読むと、人生が潤うのか。
それは本を読むまで、わからない。
ある意味、本というのは、おはなしするまでわからない人間に一番近い存在なのかもしれませんね。
そんなに本を読んでいない私でも、人間っぽさを感じた「石動戯作」シリーズは、とても素敵な思い出をくれました。

だからといって、全ての人にすすめられるかといえば、そうではないですし。私はネタバレは大丈夫ですが、そういう方ばかりでないのも事実。
なので、極力ネタバレを減らしつつ、おはなししました。


本音をいえば、面白いシーンは、いっぱいあるんです。
小説はセリフが命だと思っていたのですが、地の文だけでこんなにも面白いのかと思ったので。
でも、人によって感じ方は違うため、あえて書きませんでした。
誰かに熱烈に薦められた本を読みたい。
そういう方には、おすすめしたいです。

もちろん、読むか読まないかは個人の意志なので、こういう小説があるんだなーとだけ思っていただければ幸いです。


おはなしを聞いていただき、ありがとうございました。
縁があれば、またお会いしましょう。


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