○○控除と住民税
普段何気なく徴収されている住民税ですが、一体何に使われているのでしょうか?
住んでいる自治体にもよりますが、主に高齢者、障害者の方への福祉事業、子育て支援、公園や道路などの整備、ゴミ収集や消防など、生活に必要な費用として使われています。
そして、住民税は会社員の方なら毎月給与から天引きされ、個人事業主などの方は4期に渡り自治体に支払うようになっています。
その際、所得割と均等割に分類され、所得割は所得に対し10%、均等割は5,000円と多少の差は自治体によってありますが、一般的にはこのようになっています。
その為、収入が多い方ほど住民税額が高くなる事から、一定の条件を満たせば支払い額を少なくしてくれる制度があります。
それが所得控除です。
所得控除とは
控除と言うのは差し引くと言う意味で、直訳すると所得から差し引くと言う事になります。
税金の計算では分かりづらい言葉が使われていますが、ここで簡単にご説明致します。
所得税や住民税は収入が多い方ほど納める金額が大きいですが、収入に対して税金が課せられている訳ではありません。
収入とは税引き前の総収入、いわゆる年収です。
そこから会社員の方であれば給与所得控除と言って、収入額に応じた金額を差し引いてくれます。
自営業者の方は経費にあたります。
この給与所得控除、又は経費を差し引いた金額が所得となります。会社員の方は源泉徴収票に給与所得控除後の金額と言うのが記載されていますが、それが所得となります。
そして、その所得から納税者の条件に合わせて、一定額差し引いてくれる制度を所得控除と言います。
この所得から差し引く金額が多い程、所得税や住民税額は少なくなり、納税者の負担を減らしてくれます。
所得控除は15種類ありますが、全てはご紹介しきれないので、よく聞く控除をご紹介させていただきたいと思います。少し長くなりますが、この控除を上手に活用出来るか出来ないかで家計は大きく変わりますので、参考にしてみて下さい。
基礎控除
基礎控除はどの方にも一律43万円が適用されています。確定申告をされている方は48万円じゃないの?と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、48万円は所得税額を決める際の基礎控除額になります。年末調整や確定申告は所得税額を計算する為の手続きになる為に、この金額が適用されています。
一方住民税額を決める際に用いられている基礎控除額は43万円となっています。5月頃に住民税額決定通知書と言うのが給与明細と同封、又は郵送されているかと思いますので、その通知書の基礎控除額欄を見ると確認する事ができます。
社会保険料控除
こちらは会社員の方では1年間に支払った、健康保険料と厚生年金保険料の全額、個人事業主などの方は国民健康保険料と国民年金保険料の全額が控除されます。
会社員の方は年末調整時に会社が社会保険料を計算してくれますが、個人事業主などの方は自分で申告する必要があります。
国民年金保険料はその年の11月又は翌年の2月に、日本年金機構から控除証明書が郵送されてきます。
国民健康保険料に関しては控除証明書がありません。その代わり、口座振替をされている方には、納付額のお知らせが世帯主宛に郵送され、振込用紙でお支払いの方の場合は領収書の合計額を計算し、申告するようになります。
配偶者控除・配偶者特別控除
配偶者の収入が一定額以下だった場合に、納税者は配偶者控除又は配偶者特別控除を受ける事ができます。控除額は納税者と配偶者の収入によってそれぞれ異なってきます。
例えば配偶者控除の場合、納税者の所得が900万以下で、配偶者の収入が103万以下だった場合は38万円控除。納税者の所得が900万を超えてくると、下記表のように2段回に分かれて控除額が変わってきます。
配偶者特別控除の場合は同じように納税者と配偶者の所得によって控除額が区分されています。
ですが、下記表のように納税者の所得が同じ900万円でも、配偶者の所得によって9段階に分かれています。
配偶者の収入が103万の場合は38万円控除。
201万円の場合は3万円控除といった感じです。
*数字は全て所得金額で記載されていて、収入額ではないのでお気をつけ下さい。
扶養控除
扶養控除とは生計を一にしている親族で、給与収入が103万以下となる人がいる場合に、受けられる控除となります。主に学生がいる家庭に用いられる事が多いですが、親も条件を満たせば対象とすることができます。
また、生計を一とは、必ず同居していないといけないわけではなく、仕送り等生活費等を定期的に援助している場合も、生計を一にしていることになります。
この扶養控除ですが、現在15歳までは児童手当が支給されている為、16歳からが対象となっております。その際、16歳から18歳までの子がいる場合には一人当たり38万円控除。19歳から23歳までの子がいる場合には一人当たり63万円控除となっており、私立高校や大学に通う子がいる家庭には、とても助かる制度となっております。(年収が103万以上ある子は対象外)
その反面、児童手当の支給対象年齢を18歳まで引き上げる法案が出ている為、18歳までの扶養控除が廃止される説が出ております。収入や子の人数によっては、児童手当を支給されるより、扶養控除を受けた方が世帯収入が良い家庭もあり、今後の政府の動きに注目です。
生命保険料控除
最近では生命保険不要説がありますが、皆さん何かしらの保険には加入しているのではないでしょうか?
医療保険、終身保険、ガンや介護、学資に外貨建て、個人年金などなど、殆どの保険が控除対象となっています。そして、加入している保険の種類や加入した時期によって控除額は変わってきます。下記は国税庁のホームページから引用したものです。
平成24年1月1日以降に加入した保険(新制度)
平成23年12月31日以前に加入した保険(旧制度)
制度変更時にまたいで新旧の保険に加入した方は少し複雑ですが、計算式に基づいて数字を入れていけば大丈夫です。また、新旧それぞれ同じ種類の生命保険料控除がある場合には、新制度が適用され4万円が限度額となります。
保険の種類
・一般生命保険
死亡保障、収入保障、学資保険など
・介護医療保険
医療保険、がん保険、介護保険など
・個人年金保険
個人年金
新制度では各種類の限度額は4万円となっています。該当する種類の保険にそれぞれ80,001円以上
年間保険料を支払っていた場合には、最大12万円の控除を受けられる事になります。
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済とは、個人事業主や企業経営者の為の退職金制度となります。個人事業主などの方には、会社員と違って退職金制度がありません。なので、もし廃業や役員等が退職した場合に生活資金が作れるようにと出来た制度になります。
この他に、確定拠出年金と心身障害者扶養共済制度と言うのがあります。
確定拠出年金は皆さんご存知のiDeCo(個人型確定拠出年金)と企業型確定拠出年金(企業型DC)があります。拠出するお金は企業又は個人で違いますが、いずれも加入者の老後生活の為の年金作りとなります。
心身障害者扶養共済制度とは、精神的又は身体的障害を持つ方を扶養している保護者が加入する制度になります。その保護者が亡くなった時などに、障害のある方に一生涯、年金を支給する制度になります。
上記3つの制度は、条件によって掛け金は変わりますが、いずれもその掛け金全額が所得控除となります。
例えばiDeCoの場合、勤め先の会社が企業型年金が無しであれば、月23,000円を最大拠出する事ができます。一年間で換算すると276,000円です。
この276,000円全額を所得から差し引いてくれるので、所得税・住民税を軽減させる事ができます。
ここまでは会社員の方であれば年末調整時に申告出来ますが、次にご紹介する2つは確定申告でしか出来ませんので、ご注意下さい。
医療費控除
医療費控除は1年間にかかった医療費が、一定額を超えた場合に受けられる控除となります。その際申告者以外にも生計を一にしている家族にかかった費用であれば、合算して申告をする事ができます。
また、介護サービスにかかった費用も全てではないですが、対象となります。
控除額は最大で200万円
計算式は所得額が200万円以上か200万円未満かで変わります。
所得が200万円以上の場合
1年間の医療費➖補填される金額➖10万円
所得が200万円以下の場合
1年間の医療費➖補填される金額✖️総所得の5%
・1年間の医療費とは、その年の1月1日から12月31
日までにかかった費用全額を示します。
・補填される金額とは、1年間にかかった費用に
対して高額療養費で返金された金額や、生命保
険会社から受け取った保険金など、そのかかっ
た医療費に対して何らかの形で戻ってきた金額
を示します。
・所得200万以上の方は上記から更に10万円を
更に差し引く為、年間の医療費が10万円を越え
なければ控除対象にはなりません。
・所得200万以下の方の場合は、上記から更に総
所得金額に対して5%の金額を差し引きます。
所得額によって差し引かれる金額は異なります
ので、年間の医療費が10万円以下であっても、
控除対象になる事があります。
寄附金控除
寄附金控除の主な代表はやはり、ふるさと納税でしょう!
ふるさと納税はご自分のお住まいの自治体に税金を納める代わりに、応援したい自治体へ寄附をします。そうすると寄附した自治体からお礼の返礼品が届きます。
寄附した金額から2,000円を差し引いた金額が所得から控除され、翌年の住民税が安くなり、所得税は還付される仕組みです。節税とはちょっと違いますが、納税する代わりに返礼品を受け取れると言うのは魅力的です。
また、会社員の方はワンストップ特例制度を利用する事で、確定申告をしなくても自動的に住民税から控除してくれます。
他にも日本赤十字社やユニセフ募金なども寄附金控除の対象となっています。
自分が支払うべき税金以上に控除される事はありませんが、世の中の役に立ちつつも節税が出来る唯一の所得控除です。
以上がよく耳にする所得控除ですが、他にも1人親控除、寡婦控除、障害者控除などがあります。
そして、最後に所得控除ではありませんが、もう一つだけご紹介させて下さい。
住宅ローン控除
住宅ローン控除は税額控除と言って、算出された住民税や所得税から差し引いてくれる控除となります。
内容は年末時点での住宅ローン残高の1%又は0.7%を所得税から控除。差し引けなかった分を住民税から控除してくれる制度です。
控除期間や対象者は借入れた年度などによって異なりますが、ローン利息分に値する金額が控除によって返ってきますので、かなりお得な制度です。
申請初年度は確定申告が必要ですが、2年目以降は会社員の場合、必要書類を提出すれば年末調整で申告する事が出来ます。
その後、所得税額は還付され、翌年6月以降の住民税が安くなりますので住民税決定通知書でご確認下さい。
ちなみに保育園の料金は住民税の所得割額で決定されます。その際、これまで紹介してきた所得控除は適用されますが、ふるさと納税と住宅ローン控除は対象外です。
従ってどんなにこの2つの控除を使って所得金額を引き下げても保育料には関係ありませんので、ご注文下さい。
最後に
難しい話しを最後までお読みいただき、ありがとうございました。
私も全てを理解している訳ではありませんし、税金や政府の考える制度はとても複雑で難しいです。
しかし、難しい言葉を一つ一つ紐解いていくと、言っている制度の概要が少しずつ理解出来てきます。対象者や対象条件は各制度によって異なりますので、その都度自分が該当するかを確認する必要はありますが、理解出来てくると以外と楽しいものです。
簡単にまとめた物ではありますが、今回の記事が少しでも皆様のお役に立ち、家計の助けになれば幸いです。
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