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親を扶養にしたら…

子供の頃は自分が親の扶養に入っていましたが、ある程度の年齢になると、逆に親を自分の扶養に入れた方が良い場合があります。


扶養に入れるとどうなる?
①所得税、住民税の減税になる
②親の健康保険料、介護保険料の負担がなくなる


1.なぜ所得税、住民税の減税になる?

扶養には税制上の扶養と社会保険上の扶養の2つがあります。税制上の扶養は条件があえば15種類ある所得控除のうち扶養控除が適用され、所得額から決まった金額が控除(差し引き)され、その結果、所得税や住民税が減税されます。

扶養の条件
1.納税者と生計を一にしていること
2.年間の合計所得金額が48万円以下であること
3.青色又は白色申告者の事業専従者として、その
 年に一度も給与の支払を受けていないこと。

1の生計を一とは、同居・別居に関係なく、仕送りなど生活費を同じ財布から出して養っている状態を示します。

2は親に給与収入がある場合は年収103万円以下
(103万-給与所得控除55万=所得48万になる為)
年金収入がある場合は65歳未満は108万円以下
(108万-年金控除60万=48万になる為)
65歳以上の場合は158万円以下
(158万-年金控除110万=48万になる為)
*年金収入とは振込み金額ではなく、保険料や住
 民税など引かれる前の総収入になります。
 また、父親が母親を扶養している場合、同一人
 物を複数で扶養する事は出来ない為、子は親を
 扶養する事は出来ません。

扶養控除額
・所得税
一般の扶養親族 38万円
(19歳から22歳を除く16歳以上70歳未満)
老人扶養親族 
70歳以上で同居していない場合 48万円
70歳以上で同居している場合  58万円

・住民税
一般の扶養親族 33万
老人扶養親族 
70歳以上で同居していない場合 38万円
70歳以上で同居している場合  45万円

親を扶養に入れる事によって、上記金額が所得税
住民税から控除される為、手取り金額を増やす事が出来ます。
もし、親を介護している場合など費用はかさみますので、助かる制度です。



2.親の健康保険料、介護保険料の負担がなくなる

社会保険上の扶養とは
自分が会社で加入してる社会保険に被扶養者(扶養を受ける人)を加入させる事ができ、同等の保険を追加保険料なしで適用出来る制度になります。
被扶養者は扶養に入る事により、健康保険料や介護保険料を支払う事がなくなる為、給与の手取り額を増やせると言うメリットがあります。 
(年金の扶養を出来るのは配偶者のみなので、子供が親を扶養に入れても親自身は国民年金の保険料を納付する必要があります。尚、年金の扶養は国民年金の加入のみで、配偶者は厚生年金への加入は出来ません。その為、配偶者は将来年金額が少なくなってしまいます。)

扶養の条件
1.納税者と生計を一にしていること
2.収入の制限額を超えていないこと

納税者と生計を一にしている事は、税制上の扶養と変わりませんが、収入の制限については同居と別居で異なります。

・同居の場合
 親の年収が130万円未満であり、扶養者の年収の
 半分未満であること
・別居の場合
 親の年収が130万円未満であり、扶養者の仕送り
 額未満であること
(60歳以上または障害年金受給者は年間収入が
 180万円未満になります。)

社会保険の扶養は税制上の扶養と同じ言葉でくくられますが、全く別の制度となり申請方法も異なります。
税金制上の扶養に親を入れる場合には、子供が勤務先の年末調整で扶養控除等申告書に親の情報を記載する必要があります。
社会保険の扶養に親を入れる場合には、勤務先を通して協会けんぽなど、加入している健保組合へ手続きを行います。
2つは全く別の制度となり、内容も複雑です。


社会保険の扶養疑問?

1.傷病手当金は貰えない
傷病手当金は保険加入者が病気や怪我で働けない場合に生活を保障する制度になります。 被扶養者は、扶養している人の収入により生活が守られている事になる為、傷病手当金を受給する事は出来ません。

2.高額療養費の限度額が高くなる
被扶養者は扶養に入る事により、健康保険料や
介護保険料を支払わずに済みますが、その反面、
医療費の限度額は、子供の所得が基準になりますので、結果として自己負担の限度額が増えてしまいます。

3.介護保険料は65歳以降支払う必要がある
親を扶養に入れている場合でも、65歳以上は介護保険第1号被保険者となる為、親は年金から介護保険料が徴収されるようになります。

4.社会保険の扶養に入れるのは75歳になるまで
親が75歳になると自動的に後期高齢者医療制度へ加入する事になります。その為、75歳になった時点で子供の社会保険から外れ、親自身が後期高齢者保険料を支払うようになります。
尚、家族で国民健康保険に加入していた場合は、親は75歳になった時点で後期高齢者保険に加入する事になり、残った家族の国民健康保険加入者は、それぞれ収入に応じた国民健康保険料が発生します。
また、保険料の支払い通知書は合算した保険料が世帯主の元へ届くようになっています。


最後に
高齢の親を扶養する際には、医療費や介護費用の負担が大きくなる事がある為、税金面での控除が受けられれば負担を軽減させる事が出来ます。
一方社会保険に関してですが、親が65歳になれば介護保険の扶養から外れ、75歳になれば健康保険の扶養から外れ、それぞれ親自身が保険料を支払う義務が生じます。

【介護認定者の親と同居している場合には、気を
 つけよう!】
75歳になると後期高齢者保険に加入することになる為、現役並みの収入がない限りは医療費の窓口負担は1割になります。
しかし、介護保険料や高額介護サービス費の限度額は、収入のある子供と同居している場合、高くなる場合があります。
それは介護保険料や高額介護サービス費の限度額は、世帯収入が基準となっている為です。
その為、親が非課税世帯であっても子供にある程度の収入がある場合には、課税世帯となってしまい、かつ保険料や限度額が上がってしまいます。


今回は扶養についてお話しさせていただきましたが、どちらの制度もメリット・デメリットがあります。介護認定を受けている高齢者と同居している場合には世帯分離と言う方法もありますので、よく検討してみて下さい。 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。今回の記事が参考になれば幸いです。


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