剣鬼の帰還 第1話 転生
あらすじ
世界唯一にして最強のSSS級ハンター剣鬼伊庭勇は、世界を滅亡させる可能性を持つ神災級ダンジョンの攻略に向かった。そこにいた神災級モンスター『魂食い』の討伐に成功するも、そこで親友の聖者ファルス他、S級ハンターの仲間達に裏切られた勇はダンジョン消滅に巻き込まれ死亡し、異次元世界で魂だけの存在になり果ててしまった。だが16年後、奇跡が起こる。勇はとある少年に転生し衝撃的な事実を知る。勇の妻である伊庭遥は裏切者の聖者ファルスと再婚し双子をもうけていたのだ。そして、自分が転生した肉体こそが自分の息子である伊庭勇人であったのだ。こうして勇は自分を裏切り命を奪ったかつての仲間達への復讐を開始する。
■ 本編 シナリオ
■ ナレーション
〈数十年前に世界中に謎のゲートが出現した。その正体を知らない人類は微塵も危機感を抱かず、ただ漫然と眺め放置するという愚行を犯す。結果、人類は未曽有の大惨事に見舞われることになる〉
世界各地で白く光るゲートの前に人だかりができ、皆、興味津々にスマホで撮影している。
すると、突然、ゲートが大爆発を起こし、多数の死傷者を出す。
壊滅した街。すると、崩壊したゲートの中からモンスターの大軍団が現れる。
モンスターは人々に襲い掛かる。肉片が飛び散り周囲は血の海と化す。
〈世界はこの日、世界同時多発ゲートブレイクという未曽有の大災害に見舞われ、たった一晩で1億人以上の犠牲者を出した〉
平和な世界。ゲートは日常の一部と化している状況。
〈現在、ゲートは人類の脅威ではなく、魔鉱石という潤沢なエネルギー資源の採掘場と化し世界に巨万の富をもたらした〉
〈ゲートが出現すると同時にモンスターに対抗する為に覚醒者と呼ばれる人類も出現した〉
〈後に彼等は『ハンター』と呼称されることになる〉
〈彼等は超人的な身体能力に加え『スキル』や『魔法』などの異能力を使うことが出来た〉
〈今日もハンター達は栄光と資源を求め、モンスターが蠢くゲートダンジョンに向かうのだった〉
警察が封鎖しているゲートダンジョンの前に一台のバスが停車する。そこから大勢のモブハンター達がバスから降りて来る。
モブハンターのパーティーがデートダンジョンに潜っていく光景。
■ 神災級ダンジョン ボスの間
魂食いと呼ばれるボスモンスターと戦う五名のハンター達。
魂食いは人型の黒い影のような形態。背中には剣のような触手を無数に生やしている。
〈S級ハンター クラス重騎士 鉄壁のカイル 世界ランキング6位〉
重騎士が魂食いから放たれた無数の触手攻撃を盾で防ぐ。
カイル「この鉄壁のカイル様に物理攻撃なんぞきくものか!」
すると、魂食いは触手の先端から暗黒魔法をカイルに向けて放つ。
カイル「いかん⁉ オレは魔法攻撃だけは弱いんだ!」
カイルの周囲にマジックシールドが展開し、魂食いの魔法攻撃を防ぐ。
〈S級ハンター クラス聖者 ファルス 世界ランキング2位〉
ファルス「マジックシールドを展開しました! 今なら魂食いの攻撃を全て無効化出来ます!」
パーティーの背後から人影が二つ躍り出る。
〈S級ハンター クラス忍者マスター 坂口アスタ 世界ランキング8位〉
アスタ「ここはボクにお任せ! スキル『影縫いレベル5』!」
忍者装束に身を包んだアスタは魂食いの影に向かってクナイを放つ。
魂食い「ウギョゴゴゴゴ……!」
アスタの影縫いのスキルによって魂食いの動きが止まる。
ファルス「今だ、勇! 魂食いにとどめを!」
勇「任せておけ!」
勇が刀を抜き魂食いに斬りかかろうとする。
その時、魂食いは大口を開き、イサムに向けて瘴気を放つ。
〈S級ハンター クラス魔導士 ムガイ 世界ランキング13位〉
ムガイ「させぬよ」
パーティーの最後列にいた全身を黒のローブに身を包んだムガイは瘴気に向かって爆炎魔法を放つ。
瘴気と爆炎魔法は衝突すると大爆発を起こす。
勇は大爆発の中に飛び込むと刀を振り上げる。
〈SSS級ハンター クラス剣鬼 伊庭勇 世界ランキング1位〉
勇「奥義・雷轟崩刃!」
勇の背後に雷神の姿が現れると、魂食いに奥義が炸裂する。
奥義が直撃した魂食いは消滅する。
魂食いの消滅を確認し、パーティーの面々は歓声を上げる。
勇「よし、いっちょ上がり! 早く帰ろうぜ!」
ファルス「そんなに慌てなくても遥は、君の奥様は逃げやしないよ?」
勇「出産予定日まであと少しなんだ。早く帰って家事とか手伝ってやらんと!」
その時、周囲に瘴気が立ち込めるのをムガイがいち早く察知する。
ムガイ「気をつけろ! まだ終わっていないぞ⁉」
次の瞬間、膨大な瘴気が現れ、勇に襲い掛かる。
勇は刀で瘴気を斬り払うも、一瞬の隙を突かれて瘴気によって全身を束縛されてしまう。
勇〈瘴気が体内にまで入ってきやがった……! 頭に激痛が! あの噂は本当だったのか⁉〉
勇は苦悶の表情を浮かべながら必死に瘴気に耐えている。
勇「ファルス! 早く瘴気を浄化してくれ! 魂食いが自分を倒した相手の身体を乗っ取るって話は本当だったみたいだ!」
勇の悲痛な叫びが木霊する。
ファルス「分かった!」
ファルスは詠唱を開始すると、直ちに魔法を勇に向かって放つ。
だが、それは浄化魔法ではなく封印結界だった。
勇「ファルス⁉ これは何の冗談だ⁉ 何故浄化魔法じゃなく封印魔法を使った⁉」
ファルス「それがボク達の計画だからさ」
勇「なん、だと⁉」
勇は戦慄する。
ファルス「魂食いの呪いごと君を封印させてもらう。残念ながら君とはここでお別れだ」
すると、ダンジョンが崩壊をはじめ激しく揺れ始める。
勇「冗談は止せ! ボスモンスターを失ったダンジョンは間もなく消滅する。生身の人間が消滅に巻き込まれたらどうなるか……まさか⁉」
ファルス「そのまさかさ。化け物じみた強さの君を確実に殺すにはゲートの消滅に巻き込む以外に方法は無い」
そう言ってファルスは帰還石を取り出す。
ファルス「さらばだ、勇。我が親友よ」
勇「何故だ、ファルス! 皆⁉ どうしてオレを裏切った!」
ファルス達は勇を一瞥すると、何も答えず帰還石を使用する。たちまち彼等の身体が光り輝く。
勇「ファルス!!!!!」
勇の絶叫の後、ファルス達は帰還石によって地上に転移する。
ダンジョンの崩壊は更に激しさを増す。
その時、勇の脳に何者かが直接語りかけて来る。
魂食い「哀れな男よ。さあ、その身体、我に寄越せ!」
勇「うおおおおおおおおお⁉」
魂食いに身体を乗っ取られそうになる勇。
その直後、ダンジョンは消滅する。
■ 異次元世界
勇の肉体は崩壊しかけ、既に頭部と胸の部分だけで異次元空間を漂っていた。
勇〈あれからどのくらいの時間が経ったのだろうか……?〉
その時、勇の目の前に眩い光を放つ人影が現れる。
勇〈誰だ?〉
人影「お願いだ。母さんを守って……!」
次の瞬間、勇の意識は光に包まれた。
■ ダンジョン内部
モンスターの咆哮を聞き、勇の意識は覚醒する。
勇は咄嗟に剣を身構え、モンスターからの攻撃を受け止めた。
勇「何が起こりやがった?」
目の前にはダンジョンモンスターの大群が迫っていた。
勇は剣に写し出された自分の姿を見て驚愕する。
勇「これは誰なんだ……どうしてオレはここにいるんだ⁉」
絶叫する勇にモンスターの大群が襲い掛かった。
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