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【MTG レガシー】 「青黒スパイ」の数魔法 【初心者、復帰勢、自分と同じ親に向けて】

1.『モダンホライゾン3』による激動は、レガシー環境をも大きく揺さぶり、僕は船酔いぎみです。パワーカードをふんだんに使えるトップグループと、2番手以下のグループとの差が前より大きく開き、隙をついての逆転が難しくなってきたというのが個人的な印象。工夫と根性とでジャイアントキリングを狙うには、なかなか辛い時代になりました。

やっぱ、このカードおかしくねぇか!!?
(自分で使うデッキもあるが)

ところで。なんだか、僕のことを「デプス」系の専門家と思ってくださる方が多いようで、周知がありがたくもあり、この道の先達たちには遥かに力量が及ばないため、恥ずかしくもあるのですが……。

「デプス」は、もちろん重要な武器の1つ。しかし僕の正体は、それ以外のコンボも節操なく編み続けるオリジナルデッキ屋です。

もしくは、ネタデッキ屋です(キリッ)

本当の意味で自分の手に合う“美しいデッキ”を探求したいというのが、その動機であり……ある意味で、職人的に1つのデッキを極め続ける専門家とは正反対のタイプです。ちょっと憧れもあるんですけどね。1つのデッキに殉じる潔さにも。
僕の場合、改めて数えあげたところ、共通パーツを活用すれば7種以上のデッキに切り替えられることがわかりました。へぇ。自分でちょっと驚いた。毎月、1万円以下の予算、“数千円~のカードを少しずつ集めよう”という記事のルールを守っていても、長く遊び続けたぶん、そこそこに出来ることの幅が広がるものです。

僕が「青黒」のデッキばかりを組みたがるのは
そういう趣味! という以上に
同色の共通パーツを活かせば、比較的容易に
デッキの“種類”を増やせるからです

……どうして、こういう前置きをしたかというと、デッキの種類を増やしておくことには大きな利点があります。デッキ選択における“詰み”が限りなく少なくなる点です。
僕は自分が作ったデッキたちを隔たりなく愛しているつもりですが、不利な環境でも、お構いなしで出撃させることをも愛だと感じるタイプではありません。それぞれに最大のパフォーマンスを発揮できる環境を選んで、より確実に勝ちを与えること。それがデッキへの愛だと考えるタイプです。
それでは、今のようなパワーデッキが恐竜的に繁栄を極めた時代ではどうする? もちろん、“そういうとき”用のデッキを用意しています。
暴力的なカードパワー? そんなものが役に立たない“間合いの短さ”と超スピードで刺し貫けばいい。今日のデッキは、こう!

2.モダンホライゾン3のカードを採用した、オリジナル「青黒スパイ」最新型。前回の記事でもちらっと紹介しましたが……。

今回のリストは、現時点での僕なりの完成形。もし、明日にでも実践で戦う必要が生じたとすれば、僕はこいつを手にするはず。
現在の頂点捕食者、「UBスキャミネイト」は……実際、困った相手です。標準装備されている《悲嘆》+《再活性》パッケージは、コンボデッキの大敵。不用意にターンを渡せば、2連続の手札破壊でコンボパーツをバラバラにされ、敗けは必至。
新生「エルドラージ」も難敵ですね。そのスピードは多くの純正コンボを脅かすほどで、一手でも緩めれば、圧倒的なパワーに呑まれて終わりです。

ただし。その妨害も暴力も“アンフェアデッキの極北”「スパイ」ほどには速くない。いやまあ、本音を言うと、かーなーり、際どいレースですけどね。
ともあれ、正しく扱えば、「スパイ」とは1ターン目か2ターン目で対戦相手を屠れるデッキ。黒を含む4マナと1枚の“スパイ”さえ用意できれば、勝ちです。
すなわち対戦相手も、初手7枚+1枚程度、自由になるのは1~2マナ程度という窮屈さで対処する必要があり、いかなる強デッキでも使える武器は大幅に制限されます。具体的に、指を折って種類を数えられるほどに。

前回の記事を未読の方に簡単な解説を
この《欄干のスパイ》と《地底街の密告人》が
キーカードの“スパイ”です
これらの、呪文カードとして扱われる
“両面土地”を用いて
土地が1枚も含まれないデッキを組めば
ライブラリーの全てが墓地に落ちるため
《ナルコメーバ》4体→《戦慄の復活》→
《タッサの神託者》で勝ちです
「お疲れさまでした」

当然、そんなに都合がいい無敵のデッキではなく、どうしても不安定で弱点は多いです。とくに前述の「UBスキャミネイト」などは、“スパイ”を1枚でも墓地に落とされて、こちらが望まないタイミングで蘇生されたら、ライブラリーアウトで即死。遭遇率も考えれば、極めてマズい友情コンボです。

そこでこれらのカードを採用します
ライブラリーの全てを墓地に落とされても
フラッシュバックで首の皮を繋げるから
そのための緑マナを用意するのが
このアーティファクトの仕事
色を選ばないで積めるのは革命だね
具体的には《再活性》を
1枚きりのライブラリーとします
返しのターンに《タッサの神託者》を釣り上げれば
逆転勝利
《記憶の旅》ルートは
案の定、多くのデッキに標準採用され始めた
《苛立たしいガラクタ》対策にもなり
驚くほど応用範囲が広いですね

僕が多くの「スパイ」の中でも「青黒」にこだわるのは、まず《ナルコメーバ》や《記憶の旅》など、本来なら手札に来てほしくないパーツを《意志の力》などのピッチコストにも変換できるため。実質的な無駄札を減らすためです。
同時に、後手番になったとき、1ターン目にヘイトパーマネントを押しつけられたら成す術がないという弱点も克服できるため。

単なる趣味
というだけでは無いんやで

そのぶん、現在の主流派である「黒単スパイ」と比べ、《納墓》→《再活性》といった高効率のショートカットが難しいため、重要になってくるのが……「数字の大小」です。

突然の算数!
ここからが
今日、話したかった内容ですね

と言っても小難しい話ではなく……初手7枚でほぼ勝敗が決するため、ゲームレンジが極めて短い「スパイ」は、「確率計算」との親和性が高いデッキだと思うのですよね。
いくつかの代表的な数字さえ覚えてしまえば、かなり信頼できる目安になりますし、現に僕は「スパイ」の練習をするとき、こちらの計算機を常に開いて、ポチポチ確率を数えています。開発者の方に感謝!

たとえば。有名な数字なのでご存知の方も多いはずですが、ライブラリー60枚、《意志の力》4枚入りのデッキの場合、初手7枚の中に《意志の力》がある確率は?

“40%”。
正確には、39.94996257446656%ですが、うちの記事の信条は解りやすさ。小数点以下は、ざっくり四捨五入します。計算の途中過程も省略、条件も単純化して、大ざっぱな目安だけをどんどん出していくつもり。
また実際にはピッチコストの青いカードが他に無い可能性があり、“撃たれる確率”はもうちょっと下がります。

それでは、初手7枚に《意志の力》“2枚”を持たれている確率は?
“6%”。
コストに2枚分の青いカードを用意するハードルがあるため、実際に撃たれる確率は5%を下回るでしょう。裏返せば、《否定の契約》でバックアップした「スパイ」先手1ターン目の強襲は貫通率が95%に達する威力だとわかります。

僕は《意志の力》のためにレガシー
というプレイヤーですが、一番好みの呪文は
これ
性格の善さがうかがえるね

これが後手だと対戦相手のアクションも関わり、話が複雑になるので、よりデッキにとって重要な数字の話を優先したいと思います。
8枚入りのキーカードが、初手7枚の中に1枚以上ふくまれる確率は?
“65%”。
これが「スパイ」のキーカード中のキーカード、上のリストにおける《欄干のスパイ》or《地底街の密告人》が初手にある確率です。実のところは当たりを引ける割合はおよそ2/3でしかなく、素の状態だとこんなもの。
後述する理由で“スパイ”無しのキープは大変に危険で、このデッキはマリガンが多いと嘆かれる所以ですね。そのため、いくらかこの数字を高める工夫が欲しくなります。

最新鋭の「黒単スパイ」のアプローチは
こいつで“スパイ”を墓地に埋め
《再活性》で釣ること
この部分だけ2枚コンボになるとはいえ
信頼性は高いです
ちなみに単純にキーパーツ12枚と数えれば
初手に来る確率は81%だ
今のリストでは外していますが
9枚目以降の“スパイ”にこれを使う手も
協約コストの必要があるとはいえ
キーパーツ9枚なら70%。10枚なら74%

ちなみにこの8枚入りで65%とは、先手番での「デルバー」が《意志の力》or《目くらまし》のどちらかを持っている確率でもあります。

目ぎゃー!!?

先手1ターン目には、目を閉じて、素手で突っ込んでも60%でコンボ成功するのに、後手1ターン目では貫通率35%でしかなく、何らかの策がなければ、なかなかに恐い数字となります。
「デルバー」側がドロー操作を介さない場合、2枚を組み合わせて撃たれる確率は16%に過ぎず、《否定の契約》などの妨害1枚さえあれば、呪文戦はかなり磐石ではあるのですが……ねえ、大丈夫!!? 今日の記事は、しばらくこんな内容だけど、反射的にブラウザを閉じられやしないかい?

すーっ……

申し訳ないですが、機械的に淡々と続けます。次の数字が、逆の意味で重要になってくるからです。
それなら、運悪く65%を引けず、35%の外れを踏んでしまい、初手7枚に“スパイ”がいない場合。通常ドローで1枚目の“スパイ”を引き当てられる確率は?
“15%からスタート”。
1枚引くたびにライブラリーの枚数が減っていくため、少しずつ確率は上がります。およそ0.3%ずつ、な。
わかりやすく言い換えましょう。何枚以上のカードを引けば、“スパイ”を50%の確率で手に入れられる?
“4枚以上”。
通常ドローだけに頼るならば、マナ加速や妨害など他がどんなに完璧な初手でも、無防備で4ターン以上を耐えて、ようやく五分五分。“スパイ”無しキープのギャンブル性の高さがよくわかります。それよりは、誘惑に負けず、鉄の意志でマリガンして!
何しろ、1マリガン以内に“スパイ”が手札に来る確率は88%で、2マリガン以内で96%。
黒をふくんだ4マナが揃うかなど、他の要素も噛み合うとはいえ、通常ドローと比べ、どれほど分が良い賭けかは一目瞭然。おそらくは、これが「スパイ」を扱う上での基本で奥義です。

ちなみに4枚入りの特定のカードが欲しいとき、通常ドローで引ける確率は7.5%からスタート。む~り~。
ところで、このライブラリーの上から4枚を見たとき、8枚のキーカードを50%の確率で探せる、という数字がポイントで……《思案》を使ったときの条件が、ほぼこれ。
そして、うちのオリジナル「青黒スパイ」でこのカードを採用している理由です。《予見のスフィンクス》。

いやー……他では見ない!
「青黒スパイ」は
ピッチコストとしての青いカードの枚数に
不足しがちで、意外と手札にいても困りません

初手にあれば、公開し、最初の自分のアップキープに占術3を行うことができる、謎のカード。クリーチャーとして使える機会は、ほぼ無し。厳密には挙動の違いから、わずかに確率も変わってきますが、マナを用いない《思案》というべきカード。
このリストは、メインボードで青マナの使用を想定せず、黒マナだけにマナソースの種類を統一することで安定して運用できる作りにしてあり、《スフィンクス》のほうがデッキに合います。

きちんと確率計算するたび
この定番カードの異様な強さが際立ちます
ただし今回は高速化と安定化のため
青1マナさえケチりたいデッキだった

ついでなので、《スフィンクス》の効果も具体的な数に変えてみましょうか。
まず“スパイ”が初手7枚に無く、代わりに《予見のスフィンクス》だけが手札にある確率は16%。さらに占術3で、ライブラリートップ4枚から“スパイ”を探せる確率が50%。つまり《予見のスフィンクス》採用により、およそ8%、初動で“スパイ”を探せる確率が上がります。
65+8=73%。まずまずの改善ですね。《鏡に願いを》まで採用すれば、「黒単」並みの80%越えも視野に入ります。
実際は、”スパイ“はマリガンで探すのが賢明で、デッキ内に22枚のマナソースか、16枚の妨害を探す用途が適役だとも考えていますが。

裏の切り札
コンボ突入のハードルが一気に下がります

また、《予見のスフィンクス》で探したカードは、特に先手だとすぐには手に入らないので、代わりに4枚フル投入した《思考囲い》(と、2枚の《陰謀団式療法》)からゲームに入り、情報と行動の自由を奪って、2ターン目にコンボ突入、という流れも想定しています。

開幕特化の他の「スパイ」とは
やや使用感が異なることに
注意してください

3.いや……本当、すみません。今日の内容は、とくに多くの読者の方を置き去りにしてる気がするな。ただ、うちの「スパイ」に限ってはプレイングに深く関わるため、いちばん基本的な数字だけでも覚えてほしかったのです。

他にも、“スパイ”とマナソースの数量から、おおよその1ターンキル率なども計算できるのですが……今回は、わかりやすさ重視で“スパイ”の入手率のみにテーマを絞っています。黒マナ源の構成などによって、やや話が複雑になるし。
興味がある方はぜひ、計算してみてください。なかなか楽しい頭の体操になりますよ。

……まあねぇ。僕がちょっとおかしなタイプのデッキビルダーでも、他のデッキなら、こういうやり方はオススメしません。考え方は、幅広く応用できるとは思いますが。
ドロースペルやサーチスペルを撃つたび、ライブラリーの内容は刻々と変わり、ターンを経るごとに複雑化する選択肢と盤面を管理しつつ……通常のレガシーデッキで、そのつど計算をはさんでたら、脳が焼けるわ。

しかし「青黒スパイ」とは、極めて“静的”なデッキです。

お互いの初手7枚が結晶化されて、それが溶解しきるまでに、勝負が決まる。盤面? 無いです。3ターン目? 考える必要がありません。
使えるカードもマナも限られた中、1~2ターンで火花を散らし尽くす、ごく短い間合いでの決戦なら……よく使う数を覚えてしまうのが、手っ取り早い。絶命の一撃を刺し通す確率と、それを防ぎ得る脅威の種類と枚数とを。
(つまり、長期戦前提のコントロールデッキでこれをやれるキツネ↓は、すこぶるつきの変態だ)

ま、それも理想に過ぎません。簡単にまとめます。
・《意志の力》をはじめとした、4枚入りのカードが初手にある確率“40%”
・“スパイ”をはじめとした、8枚入りのカードが初手にある確率“65%”
・“スパイ”をはじめとした、8枚入りのカードが初手に無く、次のドローで引ける確率“15パーセント”

身も蓋もない結論!  “スパイ”が無いなら、即、マリガン! マリガンは大正義!

あと、《否定の契約》は最強! 最強!
(このターンに勝てるなら、な)

ふぅ。白状をすると、僕は大したプレイヤーではありません。机上の論でひたすらデッキを作るばかりで。
それは、僕が幼い子どもたちの親であり、今はできるだけ長くを共に過ごすという誓いを立てているためです。

僕がオリジナルのアンフェアデッキばかりを手にする理由は、対人戦の練習を積む時間が圧倒的に不足しているから。
フェアデッキでの緻密な駆け引きなど、夢の夢。出力が同じデッキを使えば、プレイヤーとしての力量差で、僕は多くに容易く敗れるはずです。

その点、コンボは良い。特に「青黒スパイ」は純粋数学のような机上の論を、そのまま致命の呪文へと変換できるのだから。

デッキとは、1冊の呪文書。我々は、魔法使い。この遊びでは、そういうことになっています。僕にもいくらか夢や目標に近いものがあり、その1つが、自分で名前を付けたデッキを世に広めること。
“自分が生み出した呪文に名をつけられる者はこの世にも限られる”
回り回って、そういうデッキと自ら相対すること。それが僕にとっての、1つの到達点。
レガシーという名の長い長い遊びを終えて、家路につくまでに達成できるかは、わかりませんけどね。それでは、また。

そういえば
『ブルームバロウ』のイラストが可愛くて
長女が興味を持ったぞ?
よし。キミに、父の全てのカードを譲ろう
なに、まだ早いスか?(5歳)

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