見出し画像

【MTG レガシー】 「青黒ダークデプス」の実験その1 構築編 【初心者、復帰勢に向けて】

1.先日、こちらの記事で高額な再録禁止カードを使わない「青黒ダークデプス」を紹介させてもらったあとのこと。

心の片隅で誰かが囁いたのです。それって「アンフェアじゃないかな?」と。なんですと? だれ??? 「囁く者」???

きっと、人違い

ともあれ、自分の心の「ゴースト」か何かは、こう言いました。《暗黒の深部》が安くなったので「デプス」を組むなら、今! などと豪語したくせに、自分は腕組みして、興味を持った誰かがデッキを作ってくれるのを待つだけなのは、「アンフェア」ではないか、と。他の人に勧めるにはニッチすぎるデッキなのだし、まずは自分で試してみるほうがいい、と。せっかく今週の日曜日に対戦会があるのだから。
な……なるほど、なるほどォォォ? しかし、対戦会では「アーボーグ型ドゥームズデイ」を実戦投入して、そこで得た知見を記事にしたいと考えておりまして……。

「両方のデッキを、試すといい」

マヂでございますか……ガンバりまース……。
まあ、これも氷の海で眠る「マリット・レイジ」からのお導きだろうと、足りないパーツを購入することにしました。そして、無事に届きましたとも。3枚の《暗黒の深部》に、他のデッキパーツたちも。急な注文だったので《演劇の舞台》の版と言語が揃ってないけど……。

「ハイランダー・コンボ」を組んだときに
1枚だけ買っていた

「青黒ダークデプス」。アプリ上だけではなく紙でも組んで、実戦で使用感を確かめてみたいと思います。「デプス」を手に取るのは本っ当に初めてなので、未熟や的外れを大目に見てもらいたいと願いつつ。元のデッキリストは、こう!

岩SHOWさんの「デイリー・デッキ」で「Depth still」として紹介されたのは、2016年11月。
今の目で見ても、端正で美しいリストです。しかし、今の目で見ると、取り扱いが難しそうな構成でもあります。たとえば、デッキ名にもなっている4枚フル装備の《行き詰まり》。
「URデルバー」が《秘密を掘り下げる者》や《ドラゴンの怒りの媒介者》を、「イニシアチブ」が《白羽山の冒険者》を1ターン目から軽々と繰り出してくる現在の高速環境では、よほどコントロール能力に長けたデッキ以外、恐ろしくて使えないカードです。

こんなんじゃ「ごゆっくり」できねぇぜ……

このあたりの謎を読み解いて、「青黒ダークデプス」を今の環境でも使いやすい構成に改めるには、いったん、このデッキが生まれた時点まで立ち戻る必要がありそうです。《ゴーゴスの酒杯》の謎を追い、「兄弟戦争」の時代まで、時を遡ったテフェリーのように。

ウルザとテフェリー
師弟の対話、好きですねぇ
性格は対称的なのに、深いところで親和性もあって

2016年。当時の環境を統べた頂点捕食者は、「デルバー」などの高速展開を得意とするデッキ……ではなかったことが、デッキリストの端々からも伺えます。むしろ、遅く、その代わりに凄まじい拘束力とコントロール能力を有するデッキが仮想敵。禁止される前の《師範の占い独楽》+《相殺》を装備した、全盛期の「奇跡コントロール」です。

強さ以上に、みんなが使うと
大会の時間が嫌ほど延びるという
あんまりな理由で、2017年4月に禁止

2.この「Depth still」が当時の環境覇者「奇跡コントロール」と戦うために作られたデッキだとすれば、様々な部分に合点がいきます。盤面に脅威が現れるタイミングが早くないぶん、充分に《行き詰まり》の設置も間に合い、そのあとは呪文を一切唱えずにコンボ達成まで狙えるので、鉄壁の《相殺》を無視して「マリット・レイジ」を呼び覚ますことが可能。

今も「URデルバー」のメイン、サイドに
散見される理不尽カード
相殺……されずに、一方的に打ち消され続けるんですけど!?

デッキ内に枚数が多い土地を加速に変えられる《モックス・ダイアモンド》と、そのせいで短くなった手札を一気に補充できる《行き詰まり》も好相性で、そのうえ序盤に捨てた土地カードを中盤以降に《世界のるつぼ》で再利用することもできます。
たとえ《剣を鍬に》や《終末》で「マリット・レイジ」を対処されても、墓地から《演劇の舞台》と《暗黒の深部》を自分のターンごとに置き、2ターンに1度ずつ「女神」を呼べば、いずれは圧殺。本当に良くできていると感心させられます。

しかし、それは6年も前のストーリー。《師範の占い独楽》+《相殺》のロックコンボも今は亡く、最序盤から情け容赦なく攻めを押しつけるデッキが隆盛しているのが、現在のレガシー環境。……《行き詰まり》が活きることを前提としたリストで戦い抜くのは、ツラそうですね。時の流れの中で《ウルザの物語》という信じがたいレベルの天敵も刷られたことだし……。

自分で使う手もあったのですが
ちと問題が……後述します

しかし《意志の力》などを搭載できる、青い「デプス・コンボ」という個性には光るものがあります。「Doomsday」「ANT」「スニーク・ショー」「リアニメイト」……他のスペル主体のコンボデッキたちとは軸と構造が違うため、多くの妨害、特に打ち消し呪文や各種ヘイトパーマネントの影響を受けにくいのも良し。

たとえば、こういう。
こういう。
こういう。
この野郎。

対「奇跡コントロール」として生まれた「Depth still」を元型に、今回はよりコントロール能力に秀でた「青黒ダークデプス」として作り直してみたいと思います。真っ逆さまな改悪に陥らないことを祈りつつ。

「でも、ほら! 灰皿を作ってあげやしたよ」

3.ここまで長々と失礼しました。そういうわけで、試作機のデッキリストはこう!

待ってください。殴らないで。まだ殴らないで。
「デプス」の約束ごとを色々と破ったリストだということは重々承知しています。果てしない1人回しで気づいたり考えたりしたことを反映していったら、このような形になったのです。

まっさきに入れたかったカードが《もみ消し》。

現在の環境を制する「URデルバー」の《不毛の大地》から《暗黒の深部》を保護するために。「イニシアチブ」の初動を封じ、《孤独》から「マリット・レイジ」を守るために。
「リアニメイト」や「スニーク・ショー」などの「アンフェア」側で大流行しているカード《偉大なる統一者、アトラクサ》の着地時誘発型能力を妨げられるのもポイント。

ただの能力マシマシな
ファイレクシア系アイドルになるゾ
いや、充分、強いンだが

《もみ消し》と対を成す採用カードは《悪意の大梟》。

シンプルで美しいデザイン
惚れ惚れしますね

これも「青黒」を選ぶ理由になり得る良カード。「URデルバー」「イニシアチブ」、どちらにも有効で、時間を稼ぎつつ、自分の手を進めることができます。ほかにも除去用に、マナが不要で「イニシアチブ」相手に効果が高い《殺し》を採用しました。正直、今の環境だとさらに何枚かのクリーチャー対策はあったほうがいい……しかしなぁ、要らない相手にはとことん役立たないカードに変わるので、コンボデッキとしては多くを積みたくないのが本音です。
あー、相手のクリーチャーを除去しつつ、こちらの「マリット・レイジ」を守ることもでき、コンボ相手の時はスペル戦にも使える……1枠でその全部の役目を果たせるカードがどこかにないもんかなぁ。マナがかつかつのデッキなので、できれば0マナで。
そんな脳が沸き立っていそうな妄想カード、この世にあるわけが……↓

凄いな、レガシー。世界の全てが有るな……(戦慄)。《行き詰まり》の代わりのアドバンテージ源(という名の、囮役)として《闇の腹心》を採用したいと思っていたので、彼を疑似餌として除去を釣り出していきましょう。

黒く、殴れる点が大きい
最重要の除去対象なため
ひどい目に遭うのも仕事のうち

採用の是非が問われるのは、これらのような「リストに有るカード」ではなく、「無いカード」のほうではないかと思います。《水蓮の花びら》などの0マナ加速アーティファクトの不採用。《演劇の舞台》を2枚に減量。そして《不毛の大地》を1枚に減量。

怒らないで!

1人回しを繰り返すうちに、気づいたことが。
このデッキで最強の攻撃パターンは、《不毛の大地》を持たない相手に対して、
1ターン目《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》をセット(+《思考囲い》)。
2ターン目《暗黒の深部》をセット、黒黒マナで《吸血鬼の呪詛術士》(+打ち消し呪文、構え)。タイミングを見計らい、「マリット・レイジ」。
3ターン目、打ち消し呪文で守りつつ、攻撃。勝利です。

おつかれさまでした(お強い)

いわゆる「ヘックスメイジ・デプス」。この速さに抗える相手はそう多くはないはず。多くの信者を魅了するのも納得の威力です。ところが《演劇の舞台》+《暗黒の深部》=「ステージ・デプス」のほうが問題で、「あれ……イメージほど強くないな」と思ってしまったのです。

1ターン目に土地をおき、エンド。
2ターン目に土地をさらにおき、エンド。
3ターン目に《演劇の舞台》をおき、エンド。
4ターン目に《暗黒の深部》をおき、ようやく「マリット・レイジ」。

↑こんな動きになりがちで。もちろん《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》や《水蓮の花びら》が絡めば、攻撃タイミングは早まります。しかし、土地セット権を用いて《演劇の舞台》と《暗黒の深部》の2枚を並べないといけない以上は、加速にも限界が。

おつかれさまでした(のんびり屋さん)

「青黒ダークデプス」が「レインボーデプス」などの緑を中心に組まれたタイプと比べ、明確に劣る点。それが「土地を1ターンに1つずつ、自分の手番にしか置けない」という制約です。なにしろ、このカードを使えませんから。

緑の1マナインスタント、最強候補
「フーム……今年はハスでも植えてみるか」

「レインボーデプス」の動き方を知る教材には、ニコニコ動画などに解説動画を投稿されているダークデプス兄貴さんの「週刊ヘックスメイジデプスを作る」シリーズをオススメしたいです。上の《輪作》や、“エルフのねーちゃん”こと《エルフの指導霊》による手札からのマナ加速を駆使し、心の死角を突くようなタイミングで突如出現する「女神」の御姿は必見。自分が対戦相手の立場だと考えたら、絶対に最適解を見切ることはできない、と断言するしかありません。

毎回、扱いがひどい
でも、好き♣

ところが「青黒ダークデプス」には、そんな変幻自在の奇襲は不可能です。「よいしょ……。よいしょ」と毎ターン、律儀に1枚ずつ土地を置くしかないのですから。そのため、コンボ特化型というよりは、早期決着と一撃逆転の攻撃パターンを備えた「青黒コントロール」の一種として運用するほうが分が有るのではと考えました。
そういう視点に立つと、《水蓮の花びら》などの使い捨てのマナソースは弱いカードになりやすいです。最重要の《暗黒の深部》以外、思いきって特殊土地の枠を減らしてみた理由は、土地セット権の価値が高く、せっかく手札に来てもゲーム終了時までに使いきれないと判断したからです。
“もの凄いミシュラランド”=《ウルザの物語》を単独で勝てるサブプランに据えるタイプも魅力的ですけどね。

もうすぐ、“春”

生粋の「デプス」使いに叱られそうな構成で、おっかないことこの上ないですが……日曜日の対戦会は、《不毛の大地》の枚数などで細かい変化があるとしても、大筋ではこの構成で望みます。
「やっぱりこのカードは4枚必要でした」「これが無かったせいで、コテンパンに負けました☆」などという展開になったとしても、それはそれで有益な情報を得たと考えることにして。

4.ふぅ。これまでの記事で作ってきた「アーボーグ型ドゥームズデイ」についてはDoomsday.wikiなどの優秀な教材の助けもあり、一定の強さがあらかじめ担保されていました。僕にできるのは下手なアレンジ程度で。
しかし「青黒ダークデプス」は……わずかな痕跡がネットに遺されているだけで、多くの部分がオリジナル、時を越えた暗やみの手探りです。

うーむ……。大丈夫だろうか。前述のテフェリーも、実際に時間を越える旅に出る前は、内心でこんな不安に苛まれていました。
“友人や仲間たちが、技を極めた時魔道士の弱気な姿を見たなら安心はしないだろう。彼は目隠しをして舵を取る船長であると、一度も海に出たことのない船乗りであると知ったなら。”

ゲーム中の性能のせいもあり、色々と言われることが多い人物ですが、僕はこの「テフェリー」というプレインズウォーカーが好きです。はじめて触れたセットが彼の故郷、ジャムーラ大陸を舞台にした「ミラージュ」だったというのが理由のひとつ。それから長い時が過ぎ、お互いが同じ親になった、というのも理由のひとつ。苦い挫折と失敗を経て、深い洞察と思慮を身につけた人物像も。彼は充分に「恐れを知る者」。その上で、なおも「立つ」。そこが何よりの魅力なのですよね。

《時間の大魔道士》の道程とは比べるべくもありませんが、これから数多の敗北と失敗を味わい、その上で楽しむために。実践の海に出て、「青黒ダークデプス」も本腰を入れて育ててみようかと思います。最初は、まぁ、よく負けるだろうなぁ、と覚悟もしつつ。

最近の姿はこの通り
でも
昔はこうだったんだから

それでは、また。対戦会で実際に使用した感触も記事にしたいと考えているので、そちらでもお会いできれば幸いです。「アーボーグ型ドゥームズデイ」のほうも、どうか、良しなに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?