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【MTGレガシー】 「モノブルー・ステイシス」の止まった時計 【初心者、復帰勢、自分と同じ親に向けて】

1.文字どおりに“時を止める”デッキがあります。キーカードがこれ。

なんと、初出は「α」
先進的すぎる……

《停滞》。さまざまな意味で、時を超越したカードです。その効果は“全てのプレイヤーのアンタップ・ステップをスキップする”。お互いのプレイヤーの時間を凍らせ、ほとんど何もできなくしてしまう、全トレーディングカードゲームにおけるロック系カードの真祖。
ただし、その状態で毎ターン「青」を支払う必要があり、その工夫のために多くのデッキビルダーたちの脳を焼いてきた、扱いが難しいカードでもあります。僕自身も以前に「ターボステイシス」と《島魚ジャスコニアス》とを合わせる暴挙を企てたことがありまして……。

それも全ては、いずれ「レガシー」で自分なりの「ステイシス」を完成させるため! 今日のデッキはこう!

「ステイシス」の名を冠しつつも、全力でロックを決めにいくタイプのデッキではない点をご理解いただければと思います。後述しますが、拘束力が強く、長く時を止められるタイプほど、専用のエンチャントやアーティファクトが大量に必要になり、事前のテストでも多くの仮想敵に対し、旗色が悪かったのですよね……。
こちらは以前も紹介した「青単パーミッション・コントロール」に《停滞》を足したタイプ。

ゲームの途中、“3ターン”だけ時を止めて、その間に勝つことを想定しています。そのためのキーカードがこちら。《テフェリーの時間改変》。

なんとも地味なコモン
されど、唯一のカードです

パーマネントを一時的に追放する「明滅」系のカードにはクリーチャーにしか触れないものが多く、土地やエンチャントも含めた“自分のパーマネント1つ”という対象範囲の広さは破格です。
また《テフェリーの時間改変》で飛ばしたカードが戻ってくるのは、“次の終了ステップの開始時”。対戦相手の終了ステップに《停滞》を対象にすると、直後のアンタップ・ステップでは土地やクリーチャーが自由になるのに、自分の終了ステップで自動的に《停滞》が帰ってきて、拘束を継続できるということ!

この組み合わせを発見したときは
小躍りでしたとも

通常の「ステイシス」のように永久に時を止めることはできませんが……《神秘の聖域》で《テフェリーの時間改変》を再利用し、自分だけが停止した時間のなかを動く。それがこのデッキの狙い。そうして無理なく連続で動けるターン数が、およそ“3”だったのです。
またパーミッション・コントロールとして戦っているときは、《神秘の聖域》そのものを明滅させることで、「奇跡」呪文《壊滅的大潮》や《大魔導師の魔除け》などの強力な魔法をくりかえし撃つことも可能に。

裏の主役
このカードのために
「島」3枚を何としても並べたい
そのために、強固な《島》で戦う「青単」です
《神秘の聖域》との相性は最高
任意のタイミングで「奇跡」は起きます
こちらはシンプルに、重いが、強い
バウンス呪文も豊富なこのデッキにとって
各種のトークンは格好の餌食です

前に「X」にあげた型ではフィニッシャーには《イシリアンのレンジャー》(と《生ける卒論、オクタヴィア》)を採用しており、全部の能力が「ステイシス」と噛み合っていたのですが……

このデッキは典型的な「ドローゴー」、相手のターンを待って構え続けるので、4マナの捻出が思いのほか大変でした……残念。
打ち消し呪文を構えつつ、または《停滞》の影響下では、2マナを用意するので精一杯。そのうえで、時間停止の及ぶ“三撃”以内で対戦相手を倒せるクリーチャーといえば……

「い つ も の」
凄い速さで墓地に呪文が貯まるので
除去耐性が最高の《オクタヴィア》はアリ
ただし横並べが不可で
《濁浪》との併用タイプだと
むちゃくちゃ出が遅くなるのがなぁ……

このタイプでの《停滞》は相手を完全凍結させるより、一瞬の有利を数ターンの長さに……勝利を得るまで固定化することが役割です。
またコントロール手段を兼ねて、軽量バウンス呪文《蒸気の連鎖》《錬金術師の挽回》を採用しており、早期に手札に来た《停滞》は積極的に設置。対戦相手の時間を奪いつつ、ターン終了時に手札に戻すことで、“自分だけの時間”を作っていきます。

こんなカードを使うデッキは
他にあるまい

数ある「ステイシス」のなかでは正統派とは言えないかもしれませんが、僕が“現在のレガシー”で《停滞》を手に戦うのならば、このような形……手札からの呪文によって拘束状態を維持するタイプになるだろうと思います。

2.どうやら今日のテーマは、時間です。少し時代を遡ってみましょうか。ざっと……24年前にまで。

これが「ガッシュステイシス」。フォーマットは「エクステンデッド」。「エクステンデッド」のローテーションから《停滞》が脱落したため、“最後のステイシス”と呼ばれたデッキ……「モノブルー・ステイシス」の原型機です。

それまでの《停滞》は維持のために、数多くの専用パーツを用いていました。有名なのは、このカード。

デッキ内の半分のカードをあらかじめ《島》にしておき、毎ターン2枚を引けば、おおむね《停滞》を維持できるという天才悪魔的な発想! いわゆる「ターボステイシス」の核です。
後に《見捨てられた都市》という「ステイシス」のために刷られたような土地が現れたので、大量の《島》でデッキ構造を歪めることなく、維持だけなら簡単になりました。

《神秘の聖域》のため、とにかく《島》を並べたい
「モノブルー・ステイシス」には
邪魔になる場面が多く
採用していませんでした
今は、無理やり《停滞》を維持しつつ
バウンス呪文や《テフェリーの時間改変》を待つ戦術も
視野にいれて、1枚だけ挿してあります

また《停滞》だけなら対戦相手も少しずつ土地を並べて、ロック状態を脱することができます。そこで“パーマネントがタップ状態で戦場に出る”カードを用いるのが常道。有名なのはこれですね。《宿命》。

後にこんなカードも登場
自分も影響を受けるので
維持手段を選ばないといけませんが
色を問わないのが素晴らしい
緑を足していいなら
こちらが最軽量

これらのエンチャントやアーティファクト群を組み合わせたとき……「ステイシス」の拘束力は完全になり、対戦相手は凍りついて何もできなくなります。一方で……これらの置物を並べること自体が「ステイシス」の弱点でもありました。
たとえば「ターボステイシス」は《吠えたける鉱山》を割られると、すぐに自壊することが暴かれて、たちまちトーナメントシーンから姿を消しました。《宿命》に類するカードも単体では弱いものが多く、4枚きりの《停滞》と合わせられないと、何もできない事態に陥りがち。

維持手段、兼、勝ち筋として
いちばん面白いのは、このカード
自分のターンが未来永劫やってこないから
対戦相手のライブラリーが尽きるのだ!
これが「クロノステイシス」!

そこで生まれたのが《停滞》以外のパーマネントには頼らない……仮に《停滞》を引かなくても、コントロールデッキとして充分に戦える「ガッシュステイシス」です。今回の「モノブルー・ステイシス」は、特定パーマネント依存型の「ターボステイシス」や「クロノステイシス」ではなく、呪文で《停滞》を維持する「ガッシュステイシス」の後継機を目指して開発したもの。

これさえあれば
万事解決だった
(レガシー禁止やで)

ほかのパーマネントを必要とせず、序盤から積極的に《停滞》を展開。「島」を手札に戻すピッチスペルにより、維持コストを支払っていきます。折を見て、バウンス呪文で《停滞》を手札に戻し、大マナを確保するところも同じ。

これもデッキに合ったカード
逆用されるリスクは
出来るだけ少なくしているつもり

弱点になり得るパーマネントがなく、《停滞》1枚からでも結界を張れる反面、拘束力が強くないので、対戦相手も土地をじりじり延ばせるのが欠点。
しかし、こちらは最初から《停滞》影響下でも動きやすい構造になっており……他のデッキはそうではありません。
大量の打ち消し呪文による高いコントロール力も相まって、停止した時間から完全に逃れるのは容易ではないはず。
さらに、有利な時間を守っている間にフィニッシャーを展開し、速やかに殴り倒すのが、「モノブルー・ステイシス」=「ガッシュステイシス」の基本思想。今回のリストなら《濁浪の執政》。往時に使われていたのは《変異種》です。

なつかしい!
自力でアンタップできるので相性は最高

速度もパワーも極まった現代のレガシー環境に、この永い時を超えたデッキが通用するかはわかりませんが……どこかで試してみたい気もします。曲がりなりにも「青単コントロール」の流れも汲んでいるので、実践をくぐり抜けて、実際に何度か敗れないと細部の調律が難しいのですよね……ま、いつもの通りです。機会と縁を待ちましょう。

3.なぜ、いま「ステイシス」に執心を???
すっごく個人的な話で申し訳ないのですが、大学時代の先輩で、いまでも交流がある方が使っていたデッキが「ターボステイシス」だったのですよね。まあ、初心者の目には、印象的に輝くデッキで。その方がアライアンス版の《Force of will》を使っていたのを、よく覚えています。

もし、あのときに対峙したクラシカルな「ステイシス」を現代風に改めて、「レガシー」で戦うのなら?  きっと、このような形になるはず。それを思うのが、僕にとってお気に入りの思考遊戯の1つでもあります。

僕も含めて、大人になってから「レガシー」の世界に復帰する方の多くは。

よく似た願いを抱いているように思われるのですが、いかがでしょうか。“もう失われた、遠い時間を取り戻したい”。子どものころの帰り道にカードを自慢し合った思い出や、学生のころに夜を徹して遊んだ記憶を。
そのために「マジック」で、「レガシー」です。

“時を操る”「ステイシス」もまた、止まった時間を取り戻すためにふさわしいデッキではないかと思います。
それに、僕のほうから、ぜひお願いしたいことが。
僕が紹介したような、呪文によって《停滞》を維持するタイプは、「ステイシス」の1つの形にすぎません。先ほど言ったとおりに置物を多用する「ターボ」タイプ、停滞の影響を無視できる「プレインズウォーカー」タイプ、「クリーチャー」タイプ、あるいはそれらの複合型……。

この記事を読んだ誰かが「ステイシス」に挑戦して、新たなデッキの形を示してくれること。それが、多くの願いの1つで、この記事を書いた動機でもあります。なかなかにロマンと歯ごたえがあるテーマだと思うのですが。

置物型なら
このあたりの新カードも楽しそう
何より、誰かが現代版「クロノステイシス」を
考えてくれたら……
大歓喜だね!(他力本願)

さて。こんなところですね。僕のほうは自分の「モノブルー・ステイシス」の調整を進めつつ……久しぶりに連絡をとってみましょうか。
《停滞》使いだった先輩に、愛用の「ステイシス」を組み直して「レガシー」で遊びませんかと。長く止まったままの時計を動かして、誘いにのってくれるかはわかりませんけどね。それでは、また。

MO限定版の
新々枠《停滞》です
少女と氷色の花のまわりで、凍りついた時間……
テキストもエレガントで、本当に美しいカードです
紙でも印刷してほしかったよなぁ

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