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【MTG レガシー】 「青黒ナズグル」=「ナイン・リングス」 【初心者、復帰勢、自分と同じ親のために】

1.はぁ~、カッチョいいデッキが組みたい(正直者)。好みのカードの特性を十全に活かしながら、細かいところに自分なりのオリジナリティが出せて……理合いにも適った美しいデッキが。
そんでもって、たとえ環境デッキが相手だろうが、華麗に勝ちたい。
ぜ……贅沢! オルゾフッッッ!

「入館は無料です。必ずご寄付を。」
― ヴィズコーパ銀行の建物外の告知

全部の願いを同時に叶えるのが困難すぎるからこそ、この長い長い“遊び”には終わりがないのですが……ご注意ください。今回のデッキは、特にロマン重視です。

「指輪物語:中つ国の伝承」は、とてつもないセットでした。《オークの弓使い》《喜ぶハーフリング》《進め、エオルの家の子よ!》《サウロンの交換条件》《ロリアンの発見》《カザド=ドゥームのトロール》……そして、《一つの指輪》。

キミ、全然
値段下がらんな!

「指輪物語」を少しは読み込んでいるほうの僕も、この活躍……環境への侵食ぶりには、かなり困惑ぎみ。ただし、僕自身の心をつかんだカードは上記の綺羅星たちとは別にありまして。

《ナズグル》です。

影の国「モルドール」から放たれた冥王《サウロン》の猟犬。“指輪の仲間”と対応する「9人組」の“指輪の幽鬼”。
「最大9枚をデッキに入れてもよい」
物語を黒く彩る宿敵をこのような形で再現してくるとは……イラストも9種類が用意されている芸の細かさ。
これはぜひ、形にしてみたい。実際にそうしてみました。今回のデッキはこう!

2.見た目は「青黒リアニメイト」にも似ていますが、ゲームプランはかなり異なります。《ナズグル》最大の強みは、「9枚」=デッキ内の「6~7枚に1枚」を同じカードに出来る点。“どこからでも《ナズグル》が現れる”デッキを簡単に作ることができます。

《暗黒の儀式》や《古えの墳墓》を活かした、手札からの早出しに加え、《入念な研究》+《発掘》によるリアニメイトプランで、執拗に何度でも《指輪の幽鬼》を押しつけていきます。この点は抜かりなく原作に忠実。

なぜ、定番の《再活性》じゃなくて《発掘》?
今回は、予算の問題……ではなく
《古えの墳墓》や後述の《指輪の誘い》も相まって
ライフ損失が激しかったからです
こちらを試していた時期も長いのですが……
相手のカードを奪える応用性と
専用イラストも捨てがたい

実は「MTGアリーナ」の「ヒストリック」環境で同じタイプのデッキを試しており、プラチナ帯くらいまで進めてみました。
やはり、「レガシー」は有り難いですね。「ヒストリック」禁止カードの《暗黒の儀式》《渦まく知識》などのおかげで、速さと安定性が桁外れに跳ね上がります。そして実際に《ナズグル》を放った感想は……このカードの攻撃性は、尋常ではありません。

1体目だけなら……2/3。リミテッド生物以下です。ところが、2体目以降を投入した途端、様相が一変。《ナズグル》全員の強化能力が誘発し、4/5や5/6と化して次々と対戦相手に襲いかかることに。「指輪があなたを誘惑する」も凶悪で、特に第2の能力のおかげで絶え間なく後続を引き込めます。何しろ「9人組」だから。

《暗黒の儀式》+《水蓮の花びら》+《古えの墳墓》デッキでもあり、アドバンテージ源に《一つの指輪》を使いたい! という誘惑には強く強く心を惹かれましたが……ここまで「指輪があなたを誘惑する」効果を活かせるデッキなので《指輪の誘い》を優先で。《ナズグル》にとっては、さらなる全体強化を兼ねます。

価格も15倍は違う
名状しがたい顔色!!?
「試練に耐えましたね」(ニッコリ)

そしてオシャレを兼ねた切り札は、これしか無いでしょう。《生ける屍》。

もちろんイラストも
「指輪物語」版でな!

《ナズグル》同時復活だと、全能力が重複するので……2体で4回、3体なら9回誘発です。《生き埋め》も採用して気持ちよさを最優先したタイプも大いにアリ。

《意志の力》などでサポートするとはいえ、「青黒」らしからぬ、力攻めをしかけていくデッキです。そのぶん弱点も明白で、唯一の武器である《ナズグル》を封じられると、本っ当に何もできなくなります。具体的には、これな↓。

あぁ~……海月になるぅ~

デッキの背骨が……完全に無い!!? お手軽にも程がある一撃必殺を許すわけにいかないので、サイドボーディング後は別の勝ち筋が必須。今回は《ダウスィーの虚空歩き》+《狡猾の宮廷》を主力としていますが、この枠は環境に応じて要検討。

白の低速デッキに《ナズグル》を追放されつづけると
困るデッキなので、どうしても搦め手は欲しい
最新のカードだとこれも面白いですね
多くのコンボ系も悶絶してくれそうで

本当は追加の勝ち筋として、ロマン枠でもある《ナズグルの首領》を採用したかったのですが。

5マナで4/3、除去耐性無しの青いクリーチャーは脆すぎましたね……あと、呪文を連打したいデッキではないので、意外と「レイス・トークン」が増えない。まぁ、《ナズグル》+《ナズグルの首領》で「10人」というのも美しくないから……今回は不採用で。
「MTG Goldfish」で見かけた類似デッキだと《ウォーターディープの多芸多才、ゲイル》を採用した型も面白そう。

墓地が肥えやすいデッキなので
呪文の再利用は嬉しい効果
彼も3マナで、《発掘》圏内です

3.ふぅ。このとおり、まだまだ隙が多いデッキですが……この記事は“初心者、復帰勢、親であるプレインズウォーカーのために”書かれています。

僕の主張は一貫して、「レガシー」はコミュニケーションを楽しむためのツールだということ。勝つことはモチベーション維持にも重要で、強さとは礼節でもあります。そのうえで……これは“遊び”で、責務ではありません。

レガシーは寛容です。こういうデッキでも、きっと対戦を楽しんで、構築に興味を持ってくれる人は多いはず。安定して勝てるかは別問題としても、どんなデッキが相手でもチャンスがあるくらいの強さには調整しているつもりですから。

《ナズグル》か……。「指輪物語」全章の中で僕がもっとも好きな描写が、以下の場面、滅びの山の心臓部、火の室「サンマス・ナウア」にたどりついた《フロド》が指輪を嵌め……全ての謀に、冥王《サウロン》が気づいた瞬間です。

“かれらを意のままに使っていたかの力が今や全知能と念力をあげて、圧倒的な勢いでかの火の山にふり向けたのです。かれの呼び出しを受けるや、空をつんざく叫び声をあげて旋回し、これを最後とすさまじいばかりの速さで飛翔して、風よりも速く飛んで来たのは、ナズグル、すなわち指輪の幽鬼たちでした。”

全ての運命が一点に縒り集まっていくのを感じさせる、灼熱の筆致です。ぜひ、これを機会に原作を手にとって、物語の大きな流れの中で読んでほしい。

《ナズグル》の正体は、人間です。限りある命の“人”のために造られた“9つの指輪”。それを《サウロン》に与えられ、力と引き替えに幽界へと堕ち、生きた肉体と自我の大半を失った王侯や戦士や妖術師。“そういう存在”とさえ、共に戦えるのが「マジック」という遊びです。
「青黒ナズグル」、または「9つの指輪(ナイン・リングス)」。
デッキをあつらえる機会があれば、ぜひとも9種のイラスト、全種類の《ナズグル》を揃えてもらえたらと思います。どれも夜の風格があり、恐ろしくもカッチョよく……何より、美しい。
僕はこういう魅力的なカードを使って、自分なりの美に沿ったデッキを組みたいのです。なかなか理想像には届かなくても……それだからこそ、これは長く、飽きることがない遊びです。みなさんもぜひ臆せずに、素敵な、自分なりのデッキを。

テーブルを挟んで、それぞれの美をたたえたデッキと出会える日を楽しみにしています。それでは、また。

ただし。
アンコモンなのに1枚が800円
9枚コンプリートはなかなかの難事です
明らかに《首領》より価格が高ぇ……

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