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【MTG レガシー】 「プレインズウォーカー、父になる」その2/黒単ダークデプス 【初心者、復帰勢、自分と同じ親に向けて】

1.ドーモ。数年のブランクで、オムツの替え方や沐浴のさせ方の手際がすっかり悪くなったプレインズウォーカーです。……なかなか目をつぶらない赤ちゃんをだっこし、自分はふりふり腰を横にゆさぶって、《大クラゲ》ダンスを演じながら思うこと。

こうしないと眠らないんだから仕方ない

この子たちはいずれ、どんな女性になるだろう??? 
……個人的には「親の自分が頑張って、理想の女性に育ててやらねば!」などとは毛頭思わないのですが。
僕の好きな言葉に、「子どもたちはそれぞれが、親のものではなく、自らの運命の子」(意訳)
というものがあります。この子らは運命からの預かりもので、親にできることはサポートでしかなくて。
何かを成したら、いっしょに喜ぶこと。道を外れかけたら速やかに声をかけ、傷つき、歩けなくなる前に手をさしのべること。無知ゆえの過ちを犯したら、共に謝り、代わりに責任をとること。まぁ、せいぜいがそのくらいです。

お嬢ちゃんたち、ご両親はどちらかな……
いや、「イニストラード」、恐すぎるでしょう!?

ただ、こんなふうに育つと嬉しいなぁ、という願いや希望のようなものはあり、「美しい女性になってほしい」と思うワケです。もちろん、それは姿かたちの問題ではありません。もう少し、正確に言い換えます。「美を知る女性」になってほしい。それぞれなりの「美学を持つ女性」に。

この企画は、初心者や復帰勢の方、そして同じ親であるプレインズウォーカーのために、安価で作りやすいデッキを紹介するために書かれています。お子さんが学校で「こうなったら、“マジック”ですね! フォーマットは当然レガシーで!」などと不意打ちを挑まれたときのために。

第2回のテーマはカラーパイの順番に従って「白」の次は「青」……ではありません。あえて、「白」から「黒」です。
貴方にとって、どんなデッキが美しい? その答えは……プレイヤーにより千差万別。僕にとっても自分なりの「美」の形があり、これまでの記事でご紹介してきたデッキたちは、その理想像に近づけるため、一定のルールに沿って作られています。

そして、数多のデッキの中でも……「黒単」こそが、真の「美」。そう信じるプレイヤーは少なくないのではないでしょうか。「白単」のような白光の美、真昼の明るさとは真逆。暗闇の美、夜の魔力を秘めたデッキ。「妖美」。どうやら「黒単」デッキには、他とは一線を画する、心を惹きつけてやまない魅力とロマンがあるようです。

さて。デッキ紹介の前に、1つお願いがあります。前回の記事で、数百円から高くても二千円程度のカードを中心に使う……と申し上げましたが……

《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》だけは許していただけないでしょうか!!?

せっかく「黒単」のデッキを紹介する機会を得たのだから「ロマン」×「ロマン」の乗算をぜひとも実現させたかったのですが、そのために必須の《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》が知らないうちに値上がりしていて……今、三千円前後です。
後述する弱点のせいで、これがないとデッキが回りません。何といっても……2ターン目「ヘックスメイジ・デプス」を撃てないのでは、「ダークデプス」を握る楽しみが半減ですからね!

あとついでに、「団結のドミナリア」で再録され、お求めやすくなった《ヴェールのリリアナ》もお許しください!!!(厚顔無恥)
それ以外のパーツをできるだけ安価に抑えるつもりですので……。今回のデッキリストは、こう!

2.「黒単ダークデプス」。「デプス・コンボ」自体が省スペースなぶん、同じ「黒単ダークデプス」にも「リアニメイト」「ヘルム・ヴォイド」「Pox」など……様々なハイブリッド型があり、目移りして1つに決めきれない、というのが記事を作る上で最大の悩みでした。
ともあれ、今回はロマン重視。往年の名デッキ「The Gate」(今風に言うと布告除去と手札破壊を多用する、黒単アグロ……でいいのかな?)とのハイブリッド型を組んでみました。

まずデッキの根幹となるのは、その名のとおり、《暗黒の深部》。

氷を溶かせば、深海の「女神」が目覚めるというフレーバーも最高の逸品。先ほどの《吸血鬼の呪詛術士》や、氷のない《暗黒の深部》のコピーになれる《演劇の舞台》を使うことで、高速で「マリット・レイジ」を呼び覚まします。

決まれば、もちろん即死。「土地コンボ」なので、打ち消し呪文が当たりにくいのが長所。さらに「黒単」の特権、豊富な手札破壊でコンボを守ります。たとえば《トーラックへの賛歌》をメインボードに4枚フル装備。2マナで平然と1対2交換を取れる、今なら絶対に刷られない水準の古代呪文。序盤に土地を叩き落とせば、そのまま対戦相手が行動不能に陥ることもしばしば。こいつが直撃して悶絶しないデッキは少数のはず。

《コジレックの審問》《陰謀団式療法》はちょっと珍しい、癖のある選択かもしれません。3マナ以下のカードにしか当たらない《コジレックの審問》は額面で5マナの《意志の力》を捨てられないことが嫌われ、レガシー環境でなかなか見かけられない呪文です。

しかし、そもそも《意志の力》が効きにくい「黒単ダークデプス」にとっては有用。白いデッキの《孤独》にも当たらないのは……まぁ、ご愛敬の範囲で。
《陰謀団式療法》のほうは空振りの危険が付きまとうぶん、複数枚を落とせる可能性があり、「フラッシュバック」を持つのがポイントです。

《ヴェールのリリアナ》により自分の手札も捨てるデッキなので「フラッシュバック」が活きやすく、何よりクリーチャーを「生け贄」に捧げるコスト自体が重要。
「The Gate」のフラッグシップ・カードで、象徴。《深淵の迫害者》のために。

4マナにして、飛行、トランプル、6/6。今でも色褪せないスペックです。そのデメリットもまさに「黒」。《深淵の迫害者》が生きている限り、「あなたは勝利できず、対戦相手は敗北できない」。いつ見ても、とんでもねぇセンスだな……。

「デプス・コンボ」には《不毛の大地》などの土地対策や《剣を鍬に》などのクリーチャー除去で沈黙させられるという“脆さ”があります。そこでデッキ内に別のコンボ、もしくは別のフィニッシャーを用意して弱点を補うというアプローチがとられることが多く、今回はその役目を《深淵の迫害者》に担ってもらいます。

このカードが戦場に残っていると決して勝てなくなるので、自ら除去する工夫が必要になります。それが、ワガママをいって《ヴェールのリリアナ》を装備させてもらった理由の1つ。トドメのタイミングで、自分に対して「布告」能力を使ってください。《消耗の儀式》も《深淵の迫害者》と「マリット・レイジ」、フィニッシャー双方と相性が良いカード。

クリーチャーを生け贄に捧げるのはコストの一部なので、妨害ができません。飛行ブロッカーに邪魔されたり除去を構えられたりしていても、優先権を渡さずに「マリット・レイジ」を相手に投げつけ、触手まみれにすることが可能……「信仰とは何か???」を問う1枚。

前回、ご紹介した「白単エメリアコントロール」とは得意分野も正対称で、このデッキ、コンボに対して恐ろしく強いです。ナチュラルに4枚装備された《ダウスィーの虚空歩き》の助けもあり、特に強大なフィニッシャーに頼るタイプのデッキには、切り札を逆用して、ごく簡単に勝ち。

優秀なクロックで墓地対策
そして手札破壊で《エムラクール》などを奪えれば……

上記の全てを裏から支えるのが、《暗黒の儀式》。というより今回の「黒単ダークデプス」、完全にこのカード有りきのデッキです。

「始めの5枚」=「ブーンズ(祈り)」の一角。普通に土地を並べるより、2ターンも未来の呪文を唱えられる、「黒」の象徴。このカードがある限り、3マナ以下の黒の呪文のデザインが激しく制限される、という理由でスタンダードを去っていきました。ただし……レガシーでは現役ですが。

1ターン目に《コジレックの審問》+《トーラックへの賛歌》、もしくは開幕《ヴェールのリリアナ》。または2ターン目に手札破壊+《吸血鬼の呪詛術士》+《暗黒の深部》、それとも《深淵の迫害者》による強襲……《暗黒の儀式》さえあれば、理不尽とも言える攻撃パターンの数々を簡単に現実化できます。
かつての「黒」。こういうカードが現役だった時代の……。

3.「リリアナ・ヴェス」という女性がいます。2007年10月「ローウィン」で登場した新カードタイプ「プレインズウォーカー」。その「始めの5人」の内、「黒」の代表が彼女でした。

多元宇宙で最強の屍術士の1人で、悪魔との契約により、200年以上も若さと力を保持している人物です。出身は「ドミナリア」。機知に富み、利己的で、危険なほどに妖艶な「美女」。
「黒」の「美」の象徴のように評されてきた彼女ですが……僕にとってはずっと、あまり「美しい」と感じるタイプの女性ではありませんでした。

お許しをォォォァァァ……
そのプレイヤーは2点のライフを失う。

けっして「魅力的でない」という意味ではないのですよ!? ただ、何というか……実年齢、見た目の年齢よりずっと、幼い……。成熟した女性像を無理に演じる、思春期の少女のように感じていて。

自らの力に、鴉の男に、悪魔との契約に、鎖のヴェールに、より巨大な悪に、彼女は翻弄され続けてきました。

「ドミナリア最古の悪」
(いまは、自分の名も忘れてるお爺ちゃん)

自分の人生の手綱を、自分自身が握っていない……そのせいか、どこかしら自暴自棄で、無理があり、余裕がない。僕にとっての「リリアナ・ヴェス」は不安定な少女のまま、時を止めて、成長せずに生きてきたような人。僕個人の基準にしたがえば……そういう女性を本当の意味で「美しい」とは呼べないのです。

そんな彼女が真に変わったのは、彼との別れがあったためでしょう。

「ギデオン・ジュラ」。故人です。「ラヴニカ」次元における「灯争大戦」にて、「リリアナ」を長らく縛りつけた「呪い」を代わりに引き受け、燃え尽きたから。

戦いが終わり、彼女は……不意に、長らく望み続けた自由を得ました。その自由に「リリアナ」は戸惑っていたようでしたが。自分を救った男への名付けがたい感情は拭いがたいようでしたが。
ともあれ、その思いは彼女の行動を強制的に決めてくる「呪い」の類いとは違いました。彼女はもう、力の奴隷ではない。自らの意志で、どこへでも行けるのです……そして。

時は流れ、「ストリクスヘイヴン:魔法学院」にて。次にストーリーに登場したときの姿に、面食らったファンは多いのではないかと思います。

「オニキス教授」
いったい、何者なんだー

教師になってる!!? 生徒に教えるなんて、もっとも程遠かった彼女が!!?

「ストリクスヘイヴン」には、多元宇宙の全ての呪文を集めた「大図書棟」があり、亡骸の痕跡すら残さずに消え失せた「ギデオン・ジュラ」を甦らせる術を探すこと。それが「セラフィナ・オニキス」……いや、「リリアナ・ヴェス教授」の目的です。

それにしても……若い生徒たちと関わる「ヴェス教授」、落ち着き払った教師としての顔つきを崩さないまま、どこかしら楽しげで、見たことがないほど活き活きとしています。つい最近も「新ファイレクシア」の侵攻を水際で食い止めつつ、早口で生徒たちに薬の作り方や応急処置の指導を飛ばしていました。

今の彼女は、自由です。自らの心に忠実で、誇り高く、文句なしに「美しい」。すなわち、以前よりもずっと、「黒」です。
長らく「少女」だった「リリアナ・ヴェス」は、200年を経て、やっと自分自身の主に……安定した「大人の女性」になったのです。イメージと反して、なんとも不器用な、愛すべき人です。もう彼女を縛る鎖は……まあ、特大の長さの1つが残ったままだけどさ。

「忘れていないかね? リリー?」

せっかく「黒単」を作るなら「リリアナ」を……それも、成長した美しい姿の「ドミナリアの団結」版《ヴェールのリリアナ》を使いたい、というのが、今回の記事の裏テーマ。そのために、今回のデッキはこのような形になりました。記事の趣旨に反し、ちょっと予算オーバー気味ですが、「ロマン」と「美」を追い求めるために。笑って許していただければ幸いに思います。

いまは3000円くらいのショップが多いかな

4.この「黒単ダークデプス」にも短所があり、そのひとつが「黒単」なのに意外と黒マナを揃えにくい、という点です。色の出ない特殊土地を8枚も装備しているからですね……《目玉の暴君の住処》まで使っているのは、マナベースの安定のためです。

初手をキープするかは、よくよく考えて決めてください。その1枚きりの《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》を《不毛の大地》で叩き割られたら、枯死するまで黒マナを拝めなくなるかもしれませんよ?

一方で、デッキとしての長所は、自由度とカスタマイズ性の高さです。たとえば相性の良い《闇の腹心》も採用し、とにかく減りやすい手札を補充したかったのですが、2マナ域が大渋滞+予算の都合で、今回は使いませんでした。改造を検討する場合は、ぜひ。

生け贄にする手段が豊富で
危険域では、すぐ処分できます
ほら、こんなに相性良いのに(黒的な意味で)

他にも、今回、ロマンを兼ねて《深淵の迫害者》を投入した、サブフィニッシャー枠。《暗黒の儀式》のパワーのおかげで、極論、4マナ以内ならどんなクリーチャーでも採用圏です。たとえば、予算が許せば、これらのカードは?

「祝福されし完成をとくと見よ」↓
一方、ストーリーでの扱いがひどくて
目が丸くなった方
首がー、首がー↓
はい。
えっ、貴女もかよ!

マナを伸ばす方向にパラメータを振り、「黒単リアニメイト」との複合で、素出しもできる《墓所のタイタン》などの巨大クリーチャーを搭載した型もカッコよさそうですね……。

姿と機能を有した死。
1枚できれいに対処できるカードは
環境にほとんどありません

もちろん、他のコンボとのハイブリッドなど、いくらでも自分なりの「色」を追及する余地があります。「黒単」が人を惹き付けて止まない理由の1つは、その自由度にあるのかもしれません。「黒」とは、自分自身である、と胸を張って宣言するための色ですから。

この記事は、初心者や復帰勢の方をレガシーの世界に誘うために。それから、同じ親であるプレインズウォーカーの方のために書かれています。もし、自分の子供にデッキを託すのなら、どんなものを選ぶのか。彼らは何をもって「美しい」と感じる大人になるのか。

同じ「黒単」の中でもわざわざ「デプス・コンボ」を選んだ理由は? 簡潔で美しいコンボだからです。

古式ゆかしい「The Gate」とのハイブリッド型にした理由は? 《ヴェールのリリアナ》の美しさに惹かれ、彼女を活かしたかったからです。

環境に最適化されたデッキたちは、美しい。無駄が削がれ、機能美に満ちています。それらとはまた別の領域に「黒単」の「美」はあります。

たとえばいつか、娘たちが「黒単」が似合うような女性になれば。つまりは大人の輝きをたたえた、今の「リリアナ・ヴェス」のような女性に育ったのなら。……嬉しいでしょうね、間違いなく。「灯争大戦」以前の、少女のころの彼女なら……ちょっと親としては心配すぎるけど!

詳しくは公式の紹介をみて
なかなかに……ヒドイです><

↑この方も別の形での、理想の「黒単」使いです。

もっとも、それは遠い未来のこと。「美しい女性になってほしい」。「美を知る女性」に。それぞれの「美学を持つ女性」に。親の勝手な願いが叶うかは……まあ、いつかのお楽しみ。

まだ、上の子は寝る前に長い長いお話をききたがって。下の子は《大クラゲ》ダンスを踊らないといけなくて。
当面の願いは……2人とも夜は早く眠りについて、朝まで健やかに安らいでほしい、というだけ。それでは、また。

寝物語に
「指輪物語」を要求してくるんですよ!?
休みなしで。無理じゃない!?

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