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機動戦士ガンダムSEED FREEDOM 全体感想&考察 ② ※ネタバレ注意

①に続き、シーンを振り返りながら気になった点を書いていく。
がっつりネタバレをしているため、未見の方は読まないことをオススメする。
改めて、この感想及び考察は個人的なものであると明記しておく。






脱出後からの振り返りだが、ここら辺も結構移り変わりが激しいシーンなので、順番が違うかもしれないが、大目に見て欲しい。


脱出したキラたちが向かったのは、アカツキ島。
イージスの残骸が映っておお、と思わされた。
マルキオ導師が住んでいた島だが、地下にいろいろ隠されている結構ヤバい島なのだ。
島の名を冠した機体であるアカツキが保管されていた場所でもあるし、アークエンジェルが使用していた秘密ドックもある。
ストライクブースターが発進した場所もここだろう。
残念ながらマルキオ導師の家はユニウスセブン落下の折に失われてしまった。

カガリたちが責任の所在について会議している。
会議の内容よりも驚くのはカガリの取り巻きだ。新キャラであるトーヤは前からいたが、それ以外に驚きの人物がいる。

サイだ。
DESTINYでは音沙汰がなかった男が、カガリの傍らに立っている。
てっきりモルゲンレーテにでも就職したのかと思っていたので、政治の舞台に立っているのは意外だった。
会議はうまくいかず、カガリはやってしまった、とばかりに突っ伏す。

だが、筆者はこの時のカガリはかなり成長していたように感じた。
連合とザフトの仲が極めて悪いのは、二度の大戦を見れば明らかである。
そんな彼らが(連合内ではユーラシアが非協力状態とは言え)、敵対状態にならずに終了した。
かつてなら今回の件を戦争の口実をしてもおかしくなかった連合とプラントが、である。
もちろん、コンパスの協力状態を継続させるのが最良な形であったのは間違いない。
それでも、必要以上に争いをさせることなく会議を終えたのは、評価すべき点だろう。

キラたちは、アスランを交えてコンパスが凍結された旨を聞く。
不思議なのはムウがいない点だ。こういう会議の場には必ず顔を出して、意見を言っていた男がなぜかいない。
シンはコンパス凍結の事実に憤っている。
シンからすれば理想の職場だろう。実際に彼はザフトにいた時よりも活き活きとしていた。
その職場が騙し討ちのような形で凍結されたのである。
後、カガリも頑張ったようだが、と言うアスランがなんかちょっと面白い。

ターミナルの調査結果をアスランが報告する。
明らかに大人にしか見えないアウラの写真。
そして、コーディネイターを超える種という話。
他人の心を読め、精神に影響を与えるという能力の話。

いろいろ疑念は残るが、ラクスはファウンデーションと共に脱出した話を聞いて、キラはラクスが裏切ったのではないか、と呟く。

キラが最後に聞いたラクスの言葉は、ファウンデーションへ告げた、キラを止めてください、というキラ本人への攻撃要請だ。
正常な状態ならともかく、絶望的な状況では、二人の強固な絆も揺らいでしまう。
逆説的に言えば、この状態になるまでは揺らがないということでもあるが。

ミレニアムでは、コノエ艦長がファウンデーションの自作自演を疑う。
つまらない冗談と共にわかりやすく説明してくれるアーサー。
筆者はこの裏表のない男が好きだ。

アスランがファウンデーションの動機について説明を続ける。
報復の口実ができるからだという。
それと同時に起動されるレクイエム。
また直してたんかい!となる。
地球連合軍が開発した兵器なのに、いろんなところで使われまくりである。
さらには、中継点がミラージュコロイドで偽装され凶悪度が上がっている。
そして穿たれるレクイエム。
燃える少女と人々。
彼らには非常に申し訳ない。申し訳ないのだが。

これぞSEEDだぁ、と思ってしまったのは事実だ。

大量虐殺描写も、SEEDシリーズには欠かせないファクターだ。
決して虐殺を擁護しているわけではないことは理解してもらいたい。
実際、かなりえぐいことだ。これまで、あれほどの火力の兵器が地球に向かれて撃たれたことはなかった。

血のバレンタイン後に地球へ撃ち込まれた、ニュートロンジャマーは兵器とは違う。
グングニールも電子兵器だ。大量破壊を目的としていない。
ジェネシスは阻止された。
ユニウスセブンは落ちたが、これも兵器ではない。
デュランダルはレクイエムをオーブに撃とうとしたが、阻止された。

大量破壊兵器が宇宙から地球へ撃ち込まれたのは、この映画が初めてなのだ。
一応これ、プラントを撃つために作られた兵器だろう。開発者は泣いていい。
いや、初めからこんなもの作るんじゃない。

核ミサイルにレクイエムと、今回のユーラシアは踏んだり蹴ったりである。
元より、SEED時代からユーラシア連邦は冷遇されていた。
連合の自爆戦法では必ずと言っていいほどユーラシア軍が囮である。
そういう意味ではあまり変わらないのかもしれない。
市民にとってはたまったもんじゃないが。

レクイエム発射を受けて、カガリと各国首脳の代表者が会議を行う。
このシーンにサイもいる……が、まずこの会議自体がこの世界の進歩そのものだと言っていいほどだ。

なぜなら、ちゃんと大西洋連邦とプラントが参加している。

これまでならすぐに揉めてたであろう二大勢力が、である。
対応に苦慮していると、ファウンデーションから世界中に声明が放たれる。
そこで飛び出るアコードという新たなる単語。

と、その前に、世界中が映るシーンで一瞬だが、とても気になるキャラクターが映っている。

カズイだ。
DESTINYどころかSEEDの後半でアークエンジェルを降りてしまったため、サイ以上にその後が謎だった男が映った。
風貌から学生でもやっているのだろうか。
本来の彼らはまだ学生でもおかしくないのである。
キラやミリアリア、サイがおかしいのだ、とどこか思わせてくれる。

そして、ラクスもアコードである、という衝撃の事実がオルフェから語られる。
呼応して起こるザフトのクーデター。
突発的ではなく、念入りに練られた計画であることは明らかだ。
序盤でラクスにパワハラをしていたおじさん……ジャガンナートがシュラと接触していたので、そこから既に計略は始まっていたのだろう。

しかし、事前に情報を察知したイザークとディアッカが動く。
脱出シーンも感動の連続である。
まず、議長と共に逃げるイザーク達に混じってシホがいる。

シホ・ハーネンフースはSEEDの時代からイザークの部下だった女性だ。DESTINYでも登場している。
しかも彼女、MSVやASTRAYでも活躍したエースパイロットである。
そんな彼女と共にイザークは脱出する。
エターナルに、である。胸熱すぎる。

エターナルに退避したイザークを迎えたのは、カナーバ議員とイザークの母親であるエザリアだ。
SEEDで敵対関係にあった二人が仲良く現議長を助けたのも、進歩を感じる。
ディアッカが、クライン派……恐らくターミナルが隠していたであろうボアズの秘密兵器の話をする。
ボアズの名前が出てきて懐かしい想いに駆られる。
SEEDでピースメーカー隊に核攻撃されて破壊された要塞が、こんなところで活きてくるのだ。

その話を聞きながら、エザリアがイザークのたちを見て意味深な顔をしている。
てっきりまた息子が出世できるかもと思っているのかとばかりに筆者は思っていたが、どうやらこの目線、シホを見ていたらしい。
監督曰く、シホがイザークのお嫁さん候補に成り得るのでは、と値踏みしていたらしいのだ。
エザリアと言えば、DESTINYのHDリマスターに付属していたドラマCDで誰よりも弾けた人物として知られている。
あまりに女っ気がないイザークを心配して、嫁探しに奔放していた人である。
なんならその時に、イザークは同性愛者なのではないかと疑っている。
ぶっ飛び過ぎである。非常事態ですよ、お母さん。

ちなみにシホはセリフはなく息を呑むだけなのだが、実はこれ、シホの声優さん本人らしい。
こういうのを聞くとより嬉しくなる。FREEDOM MSVにも期待したい。

ラクスが、オルフェとアウラに自分が作られた存在であると告げられて愕然とする。
ラクスのカリスマ性は、アコードとしての能力ゆえだったのだ、と観客も驚くシーンだと思う。
今思い返してみると、腑に落ちる点がいくつかある。

まずラクスのカリスマだ。
ラクスの歌声は世界中の人々、プラントだけでなく地球側の人間さえ魅了する力があった。
戦場で説けば、進軍していた兵士が攻撃を躊躇するレベルである。

さらに、SEEDでラクスは母の話をしていた。その言葉は、

「世界はあなたのもの、そしてまた、あなたは世界のもの。生まれ出て、この世界にあるからには」

という不思議なワードだった。
あなたは世界のものはわかる。
だが、世界はあなたのもの、というのは少し大袈裟ではないかと。
そもそもラクスは世界が欲しいなどと望んだことは一度もない。
ただ平和を望んでいただけの少女に過ぎないし、キラと出会ってからは、キラと静かに暮らしたいと願っているだけなのは明白だった。
だが、母親がアコードとしてラクスを作ったというのなら、合点がいく。

三つ目は、デュランダル議長がラクスに執着していたことだ。
デュランダルはミーアというラクスの偽者を作って利用しながら、ラクスと接触したい旨をアスランに伝えていた。
だが、ザフトの特殊部隊の襲撃によって、キラたちはデュランダルを疑うようになっていく。

この特殊部隊の件を、デュランダルは知っていたとされている。
自発的に部隊を動かしたわけではないようだが、DESTINYにおける彼はあらゆる情報戦で優位に立っていた。
そも、アーモリー・ワンでカオス、ガイア、アビスをファントムペインにわざと奪わせている。
それも全て、デスティニープランのためだ。

必然、ラクスを殺そうとしたのもプランのためだったとされる。
筆者はてっきり、ラクスを生かした状態でデスティニープランを適用してしまうと、彼女が上位存在に認定されてしまうからだと考えていた。
最悪の場合、その権限を持ってプランを破壊されてしまいかねないからだ、と。
今回開示された情報で、その予想は当たらずとも遠からずだったことはわかった。
他ならぬデュランダル自身が、アコードの開発者の一人だったのだから。

しかし、そう考えると、デュランダルに関しては相反する面が見えてくる。ここら辺の考察は、また別の機会にしようと思う。

オルフェに迫られたラクスは、キラのことを思い出して拒否する。
この時も空間認識能力のような描写が入った。ラクスは戦闘中、エターナルからキラの危険を感知して心配していたりしていた。
もしかすると本当に、キラの存在を感じ取ったのかもしれない。
単に思い出しただけかもしれないが。
ここで今作屈指の名言が飛び出る。

「必要だから愛しているのではありません。愛しているから必要なのです!」

このセリフの威力は途轍もない。
しかしオルフェはナチュラルのような世迷言だとして一喝する。
ここで、彼らはナチュラルを見下しているのだと判明する。
ラクスはSEED時代からコーディネイターはナチュラルから進化した種ではなく、同胞だと公言していた。
根本的な思想の違いが露骨に出る。
この時点で、デュランダル議長が掲げたデスティニープランとは運用方法に差があることにも気付く。

キラたちは、ラクスの真実を知って愕然とする。
それでもラクスの救出をしようと作戦を練るが、キラが無理だと諦める。
あれだけラクスを愛していたのにも関わらず、である。
戦っても平和を作れない。ラクスを幸せにできない、と。
まるでSEEDの頃に戻ったようだ。
フリーダムを受領してからというもの、キラは迷いながらも決断をして、世界を平和にしようと奮闘してきた。
だが、今作の序盤から、キラが迷っていると思しき描写が散りばめられていた。
この戦いは終わりが見えない。誰かがやらなくちゃいけないんだ、と。

弱っているキラを、アスランが殴りに行く。
この時、全員が驚く。
シンは怒ったような顔もして、ノイマンも動けるように体勢を取る。
アスランが殴っていると、キラがネガティブなワードを漏らす。

「君たちが弱いから」

筆者は、これがキラの本音だとは思わない。
こういう時にキラが漏らす言葉は、本心ではないのだ。
実際、キラは周囲を見下したりしていない。
サイとはフレイの関係で揉めたが、その後、サイは、サイにしかできないことができる、と彼のことを認めている。
ナチュラル、コーディネイター問わず、仲間のことを大切に想っていたのは明らかだ。

ただし、自分が誰よりも優れているとは考えていただろう。
なぜか。

クルーゼにそう言われたからだ。

そしてこうも考えていただろう。
スーパーコーディネイターである自分は、みんなを守らなくてはならない。
だから、グリフィンに闇に落ちろ、とされた時、クルーゼの回想が出てきたのだろう。

一刻も早くミケールを倒さなければならない、と焦ったのだ。
直前にコンパス機は撃墜されている。民間人の犠牲も出ている。
急がなければ、と。
自分がやらなければ、また犠牲が出てしまう。

人類最高のコーディネイターがやらなければならないことは一つだ。
戦って戦って戦って平和を作らなければならない。
みんなのために。

ある意味では、キラは自分自身にだけデスティニープランを適用していたのである。
やりたいことよりも、やらなければいけないことを優先していたのだ。

そんな憔悴し切った彼を、アスランは殴る。
アスランは自他共に認める口下手だ。思考そのものはまともなのだが、うまく言葉にすることができない。
DESTINYではよくシンと衝突していたが、実はシンのことを一番理解していたのはアスランだったと筆者は考えている。

キラは怒って反撃するが、全ていなされてしまう。この場にムウがいればうまく会話だけで纏まったかもしれないが、彼はいない。
その様子を見たシンが怒って突撃してくる。

まさに忠犬のようだ。
先程、君たちが弱いから、と言われてもなおシンはキラのことを助けようとする。
キラが無茶をしていると知っているからだ。あの言葉が本音ではないとシンも知っていた。

だが、アスランは返り討ちにする。ついでにキラのパンチもヒットする。
無論、これは事故だ。
キラはシンを殴ろうとしたわけではないだろう。アスランはちょっと自信ないが。
このシーンは笑えた。シンには悪いけれど。

そこから、ようやくキラの本音が吐き出される。
自分がやらなくてはダメなんだと。
嫌だけど、必死で、と。

――スーパーコーディネイターだから。

キラが自発的に戦おうとしたのは、DESTINYの最後からである。
それまでは、襲ってくるから、みんなを守りたいから、デスティニープランが嫌だから、と。
必要だから戦ったまでであり、議長に宣言するまでこちらからどうこうする気はなかったのだ。
しかし今回は違う。

覚悟はある。僕は戦う、とデュランダルに宣言した。

その覚悟を受けて、レイは議長を撃った。
シンはキラと共に戦うことを選んだ。
デスティニープランがない世界を選んだ責任があると、キラは思い詰めていたのだ。

アスランはなぜ言わない、と指摘する。
殴りながら。
いいシーンだけど、ちょっと酷くないかいアスラン。
実はノイマンもアスランに突撃する気だったんじゃなかろうかと筆者は思っている。
AA組はキラがボコボコに殴られてあまりいい気はしないだろう。
一蓮托生の仲間だ。
だが、仲間だからこそ言えないこともあったのだ。

「お前ひとりで何ができる!」

そう言って、アスランはキラを殴り飛ばす。
ここは、実は本質を射ている。
キラが単独でどうにかしようと立ち回った時は、あまりいいことがないのだ。

その最たるものがDESTINYの悪夢である。
カガリやムラサメ隊が出撃を希望しても、キラは拒否した。
一応、撃墜させることが目的の可能性があるという理由はあったが、相当な無茶である。
結局、キラはシンに討たれた。
そもそもオーブ防衛戦では、SEEDとDESTINY共にアスランの支援がなければやられていたのだ。
キラの活躍は確かに目立つが、いつもみんなに支えられて戦ってきた。

そこで、キラの口から望みが出る。

「ラクスに会いたい」

ただ傍にいて、笑っていて欲しいだけなのに、と。
ラクスがキラといっしょにいたかったように、キラもラクスといっしょにいたかった。
二人が出会って、仲を深めてから、ずっとそれだけが望みだったのに、世界がそれを許さなかった。

と、急にアスランがラクスについて知ったかをする。
え? と漏らす仲間たち。
見てるこっちもえ? である。
ハロを嫌がらせのようにたくさん贈りまくっていた男が……。

行こう、と。
言葉にしなきゃ通じないこともあるから、とアスランはキラに手を伸ばす。
確かにそうなのだが、ちょっと不条理な気がしないでもない。
いいシーンなんだけどね!
いつもキラに行こうと言われていたアスランが、初めてキラを立ち直らせたシーンだ。
……もし誰かに立ち直らせてもらう必要が出た時は、ぜひともキラ方式でお願いしたい。

ここからがまたド級の展開だ。
キラがやる気になったことで、作戦会議が始まる。
ラクスが幽閉されているのはアルテミス要塞だと言う。

SEEDとX ASTRAYの舞台になった要塞だ。
ニコルに攻略され、外伝でも散々な目に遭った要塞がまだ無事であるという。
さらにはニコルの戦術という話も出てくる。
回想シーンだけでなく、実際に戦術も活用される流れに興奮する。

マリューは戦艦の当てならある、という。
まぁこれは想像できる。唯一無事な戦艦があるからだ。
エリカ・シモンズが、MSなら用意できるという。
ここで、あの機体が登場する。

インパルス、デスティニー、ストライクフリーダムだ。

パンフレットではインパルスとデスティニーがSPECⅡ、ストフリが弐式となっている。
ここで正式にライフリがいわゆるリ・カズィ枠であることが判明した。

リ・カズィと違うのは、ストフリが旧式であると明言されていることである。アムロが乗り換えたνガンダムはリ・カズィより性能は上だ。
しかし作中人物の会話を聞く限りでは、ライフリの方が性能が上のように聞こえる。

あくまでもテストのために保管しておいただけで、一部を改修しただけとなっている。
それでも、キラたち、そして観客にも思い入れが強い機体であろうことは間違いない。筆者も興奮した。

シンは、これさえあれば、あんな奴らなんかに、とちょっと悪い笑顔で自信満々に言う。
それを優しい顔で見守るアスラン。お前なら勝てると確信しているようだ。
嬉しいけど、ジャスティスは?
と疑問を抱く筆者を置いて、物語は進んでいく。

キラたちはミレニアムに潜入する。
コノエたちはこの展開を予期しており、準備を万端に済ませていた。一瞬、マリューのコーディネイターすら圧倒する白兵戦がまたみられるかと期待したが、そんなことはなかった。
まぁ、味方相手にやられても困っちゃうが。
しかし新キャラはかつての仲間のように迎えてくれるのに、ビビッて両手を挙げるアーサーは相変わらず面白い。

警戒するルナマリアに、シンはおどけて銃口を突きつける。
報いを受けるシン。
そりゃ生死不明だったのにそんなふざけ方したらキレられる。
元の悪ガキだった部分が大いに出ていて微笑ましくすら感じる。
DESTINYの時の彼は怒るか、文句を言うか、泣いているかのいずれかだった。今は心の底から楽しそうだ。
コンパスが、彼が本当に欲しかった力を存分に振るえる場所なのだ。

ミレニアムが発進準備に取り掛かる。しかしその様子はオルフェに監視されていた。
艦長がマリューに一任される。副長はコノエに。
アーサーは降格。悲しいね。
アーサーは指示されたことをそつなくこなす優秀な人材ではあるし、人格面ではミネルバ一と言っていいほどの聖人なのだが、爆発力には欠けるので仕方ない。

出航するミレニアム。当然のように操舵はノイマンだ。しかし状況はファウンデーションにモニターされている。
オーブ防衛艦隊が警告してくる。あくまでも乗っ取られた戦艦という体だからだ。
そこで懐かしい名前が出てくる。
トダカ一佐だ。DESTINYでのシンの恩人であり、不運なことにシンによって倒されることになってしまった悲劇の軍人である。
百発百外しによって、そのまま直進するミレニアム。

だがオルフェはカガリにレクイエムを発射すると無情にも告げる。

オーブ内での避難活動が始まる。恐らく事前に備えていたのだろう。
テキパキと動いているが、十分では全員を退避できない。
ミリアリアの声がして、カガリがストライクルージュに乗り込む。
ミリアリアの登場は嬉しい。出番がないかもと思っていたからだ。
サイがオーブ軍服を着ているのも感慨深い。
カガリがパイロットスーツを着て、ルージュで乗り込むというのも最高だ。

しかしキャバリアーアイフリッドとは何か。
筆者はロボットモノはガンダムがメインで、他のロボット系は数えるほどしか履修していない。ゆえに気付けなかったのだが、これは機甲戦記ドラグナーに登場する兵器らしい。
これは見なさいという天啓だと考えているので、後で時間を作って見てみようと思う。

このままではオーブが危ない。
その瞬間、キラは国際救難チャンネルを開く。
SEEDシリーズのターニングポイントよく使われる、全方位に呼びかけるチャンネルである。
そんな恒例行事をしながら、キラは憤った様子でアウラたちに告げる。

残念だったね、僕は生きているよ、と。
キラがそんな風に敵へ呼びかけたのは初めてだ。
そして彼は糾弾する。殺戮者だと。

これはかつてのデュランダル議長にも刺さる言葉だ。
結局、デスティニープランはただ提言するだけでは誰も賛同しない。
現実でも難しいのに、コズミック・イラではコーディネイターがいる。
そのまま適用してしまえば、コーディネイターがナチュラルを支配する構図にしかならないのだ。
ムウレベルの才能がなければ、ナチュラルは、ただ使われるだけだ。
だから、ナチュラルは特に反対する。
コーディネイターでも嫌だからと、遺伝子に合った仕事ととは別に、やりたいことをしている人もいる。
ゆえに、武力をもって黙らせるしかないのだ。

議長が世界中の人間を麻痺させるために戦争を起こしたように、強引な手段を講じなければ、デスティニープランを人々が受け入れることはない。
そして、オーブはデスティニープランにとって目障りな国だ。
プランを適用する言い訳としてナチュラルとコーディネイターの種を超えた共存を謳っているのに、そんなことをしなくても共存できているオーブは邪魔なのだ。

アウラはキラの挑発にまんまと乗った。
キラを出来損ないと罵り、レクイエムの照準を変えさせる。
そこで違和感を覚える。もちろん小物じみたムーブメントではある。

他の理由としてはキラの口封じだ。キラたちは証拠を握っていると公言しているので、消しておかなければ世界を敵に回してしまう。
手遅れな気はするが。

だが、それ以上にアウラがキラに執着したのは、実はコンプレックスがあるからではないだろうか。
本当に出来損ないだと思っているのなら、あんな風に怒る必要はない。
オーブを撃った後、粛々と処理すればいいだけである。

デュランダルは最終決戦でキラが討てなかったことを知ると、まずはオーブを撃つことを優先した。
しかしアウラは違う。
何が何でもキラを討とうとする。優秀である子どもたちの意見も聞かずに。
反抗しないように育てたであろうアコードは、素直に従って照準を変える。
まぁ普通はやられるだろう。
レクイエムに狙われて、生き残れるはずはない。

しかしミレニアムには奴がいる。

キラの挑発中にアイコンタクトで合図したマリューとコノエ、ノイマンは、即座に行動に入る。
緊急制動、タンホイザー起動。
このセリフを聞いて、筆者はタンホイザーでどうにかするのかと思った。
違った。

ノイマンマニューバだった。

バレルロールや高速回避を時として指示なく行う男ノイマンは、レクイエムを容易く避けた。
しかも艦内の状況を見るに、彼が回避する前提で作戦が組まれていたのだ。
もしオーブが討たれそうになった場合は、ヘイトをこちらに向けて避けるという荒唐無稽な作戦をである。
すかさずタンホイザーを撃ったミレニアムは、冒頭のヤマト隊のように単独で宇宙へ上がる。
マスドライバーは使わない。
すごい。ノイマンもすごいがミレニアムもすごい。

イングリッドがラクスに質問する。
なんで運命を受け入れないのか、と。
ラクスは淡々と応じる。もう答えは決まっているからだ。
SEED時代から、ラクスはこの手の議論で負けたことが一度もない。
しかも相手をけなさずに勝つので、論破された方はぐうの音も出ないのである。
今回もラクスは会心の一撃をイングリッドに与える。
あなたはそれでいいのですか、と。
オルフェとラクスが一つになって良いのか、と。
これまでの描写からイングリッドがオルフェを好きなのは一目瞭然だ。
オルフェがやってきて、イングリッドは慌てて逃げていく。

オルフェはラクスを手に入れようとする。だが、彼女の心は手に入らない。
ラクスが愛するのはキラだからだ。オルフェはその事実が受け入れられない。

哀れではある。生まれてからずっと、オルフェはラクスと一つになることを宿命づけられてきた。
小さい頃からずっと、そう教育されてきたのだろう。
しかしラクスはシーゲルに育てられた。
母親との関係がどうだったのかはわからない。
だが、少なくともラクスの母は彼女に運命の相手がいることを伝えていなかった。

そして、シーゲルが婚約者に指定したのはアスランだ。
オルフェではない。
アスランとの婚姻関係も自然に消滅した。
元々、二人の婚約は遺伝的に相性がいいからだ。コーディネイターは出生率に難がある。
だから理想の相手としてアスランが選ばれたが、二人は本当の意味で恋をしていたわけではなかった。

アスランはカガリに恋したし、ラクスはキラを選んだ。
オルフェは、いきなり出てきて運命の相手を名乗っただけの男だ。
それ以上でも以下でもない。

だからラクスははっきりと告げる。あなたが好きなラクスは私ではない、と。
オルフェはラクスを襲おうとしたが、しない。
そんなことをしても何も意味がない。
そして、アコードである自分が、旧人類の、敗北者のような振る舞いをするわけにもいかない。
人生で初めてと思われる屈辱を受けたオルフェは、キラを討ちに迎撃に出る。

キラたちがズゴックでミレニアムを離れる。
ミレニアムが囮の役目をして、本命であるキラたちをアルテミス要塞に侵入させる作戦である。
その時、キラはシンにミレニアムを頼むよ、とお願いする。

シンがずっと求めていた言葉だ。
まるで子犬のような笑顔を見せて、シンは返事をする。
その後、キラはメイリンに訊いた。こんな感じで良いのか、と。

いいと思いますよ、と答えるメイリン。
いいんじゃないか、と言うアスラン。
君に言われたくないよ、な顔を作るキラ。

ここも好きなシーンである。
キラとシンの関係性は多少の擦れ違いはあっただろうが、ずっと良好だ。
トラブルを起こしがちなアスランには言われたくないのだろう。

ミレニアムが敵艦隊へ正面から突撃する。
十二連陽電子砲とかいうとんでも兵器には、とんでも新兵器で対抗する。
結晶装甲という新装備と、伝家の宝刀であるアンチビーム爆雷だ。
さらには、懐かしい名前がまた出てくる。

戦術バジルール。

コロニーメンデルでの戦闘の際、ナタルが使用した戦術だ。
それをマリューが使うのは胸が熱くなる。何回目だろう。
防御しながら敵艦を突破。そしてドリフトなるセリフが聞こえてくる。
ドリフト……ドリフト!?
当たり前のようにノイマンはドリフトを行い、超高速ミサイルを迎撃。
戦術バジルールが敵艦隊にダメージを与え、艦載機が発進する。

出撃!インパルスのアレンジが流れ出す。
もう何度目かわからんくらいのテンションが上がった瞬間である。
しかもこの曲名は、出撃!デスティニーとなっている。
危なかった。もし映画を見る前にサントラを手に入れて曲目をチェックしていたら、ネタバレを食らってしまうところだった。

シンとデスティニー、ルナマリアとインパルス、ヒルダとゲルググメナースが発進する。
しかもインパルスの換装バンクを添えて。
さらには前情報と違いいきなりブラスト……どころか全シルエットが射出されている。しかも色違い。

いや、色違いと言えば注目するべきはデスティニーだ。
心なしかレジェンドに配色が似ている。
VPS装甲はカラーリングを自分で選べるという特徴がある。
ガイアがバルトフェルドカラーに染まっていたように。
もしかすると、シンが自分でその色を選んだのでは?
詳細は不明だ。小説版や設定資料で明らかになるかもしれない。
でもちょっとロマンはあるよね。
二人が親友だったのは間違いないのだから。

デスティニーの出撃に合わせて、ブラックナイツが出撃する。
すっかりシンのことを舐め切った様子だ。
対して、シンは舐めるな!と艦隊に攻撃を加える。
ファウンデーション軍の主力部隊はジンーF。
それと、ブラックナイツの随伴機で、無人機のジンーR。
戦力不足感は否めない。

この型落ち機は、ファウンデーション軍に人望がないことの証明だと思う。
ザフトのクーデター部隊もいるが、かつての連合やザフト、オーブほどの規模はない。
コンパス部隊も少数だが、ミレニアムとシンたちで十分に対抗できる戦力だ。
オルフェは迎撃を続けるがはたと気付く。

キラ・ヤマトがいない。


ここまででも既にヤバいのに、この映画はまだまだ盛り上がり続けるのだ。


②に続きます。

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