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白衣のいらない先生たち


こんにちは、精神科医のはぐりんです。
ご訪問ありがとうございます。

精神科病院に勤務していると、決まってどこの病院にも「私服の精神科医」がいます。

私が勤務している病院にも2人ほど、少数派ではありますが確かにいます。

これまでに私が勤務してきた病院にも、
何人か私服の精神科医は確かに存在しました。

私服の精神科医と聞いて、読者の皆さまはどういった印象をお持ちになるでしょうか?

おそらく大抵の方は、白衣と違って緊張感を抱きにくく、親しみやすいと思われるかと思います。

あるいは人によっては、少し変わり者の医者なんだろうか?と思われるかもしれません。

私服の医者が、患者さんから見て「親しみやすい」というのは医者の私から見ても真実だと思います。

ならば、白衣なんか脱いで全員私服でいればいいんじゃないの?と思われるかもしれません。

私個人も、私服の方が動きやすいし涼しいし、できる事なら白衣を脱いで過ごしたいです。

しかし、私服ではなく白衣を着ざるを得ない理由がいくつかあるのです。

まずは、患者ー医者間の構造上の問題が挙げられます。どちらが偉いとかそういう話ではなく、関係性の問題です。

患者さんが困って来院される、それに対して診察や診断、薬の処方、今後の方針を提案する、

そういった診察の場においてお互いの関係性や役割を明確にするために白衣という「装い」は必要な役割を果たしていると言えます。

白衣が必要な他の理由としては、衛生上の問題も挙げられます。

医療者が、外から持ち込んだ細菌やウイルスを拡散しないよう防ぐため、

その逆で患者さんからの飛沫や院内の病原体を物理的に防ぎ、院外に持ち出さないためにも白衣は重要な役割を果たします。

他には、病院内における、職員としてのユニフォームという意味合いもあります。

公私混同ではないですけど、どこの職場でも私服で仕事をしていたら(一般的には)おかしいという話になるでしょう。

ご紹介したように、白衣の果たす役割には様々あります。ただ一方でやはり白衣が患者さんに与える緊張感も確かに存在します。

自宅で測る血圧よりも、病院で測る血圧の方が高い、いわゆる「白衣高血圧」という言葉もあるくらいです。

そこで、あえて白衣を着ない先生たちの登場です。特に精神科や心療内科の患者さんの中には、

やっとの思いで病院に来られる方も少なくありません。そういった患者さんたちに少しでも緊張感をほぐしてもらいたいのです。

すると今度は、白衣が果たしている役割や治療構造上の問題が出てきそうです。

私服の医者と話をしていると、確かにフランクな雰囲気ではあるけれども、

一方で患者さんからすると、話していても背筋は伸びないし、気も入らない、

この医者の言っていることは大丈夫なのだろうか?という不安さえ抱くこともあるでしょう。

私がこれまで見てきた私服の精神科医を振り返ってみると、ある程度年齢がいっていて、かつその病院に長年勤務している、

地域に密着していて「〇〇病院に行けば〇〇先生がいる、なんとかしてくれる」、そういった信頼安心感を抱ける先生たちがほとんどです。

また実際に診察の様子をうかがってみても、先ほど述べたような患者さんが抱く不安感を払拭するような説得力包容力を持ち合わせていたりします。

そういった先生たちにとっては、もはや白衣(の役割)は必要なく、私服で診察に臨んでも患者さんとの治療関係性には影響しないと言えます。

白衣のいらない先生たち、ただ単に白衣を着ていない訳ではなく、着る必要がない領域にまで達した、

長年積み重ねた経験と信頼がそうさせていると言えます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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