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自分の親が認知症になってしまったら


ご訪問ありがとうございます。

今回は認知症について書いてみたいと思います。

はじめに〜認知症を巡る現状〜

認知症高齢者の数は、2025年には実に約700万人、65歳以上のおよそ5人に1人に達すると言われています。

認知症にはいくつかのタイプがあります。脳の病理所見、つまり脳に溜まる変性物質の違いや、

脳の病変部位によって症状の出方が変わるため、
それに基づき分類しています。

最も多い認知症〜アルツハイマー型認知症とは〜

認知症の中で一番多いのが、
アルツハイマー型認知症と呼ばれる認知症です。

アルツハイマー型認知症にはいくつかの特徴的な症状があります。

一つはとりつくろいと呼ばれる症状です。文字どおり忘れていることをとりつくろう症状です。

診察中にとりつくろいを診る有名なサインがあります。Head turning sign、振り返り現象と呼ばれるものです。

これは診察医が本人に何か尋ねた際に、答える事ができずに「何だったっけ?」と隣りに座っている家族に振り返り答えを求める事から付けられました。

もう一つは、物盗られ妄想です。大事な物や身近な物がなくなると、「誰かが盗ったに違いない」と思い込み、いくら訂正しても聞きません。

こういった、とりつくろいや物盗られ妄想は、
アルツハイマー型認知症の「健忘」により引き起こされる症状と言えます。

健忘、つまりは物忘れ、日付を思い出せない、物をどこに置いたか忘れた、置いたことすら忘れた、

アルツハイマー型認知症の方に、
「自身に物忘れがあると思いますか?」と聞くと、

ほぼ全員「物忘れはない」と返ってきます。物忘れの自覚がないのです。

とある2人の認知症患者さん

前置きが長くなりましたが、アルツハイマー型認知症が原因で入院となった、2人の高齢女性患者さんをご紹介したいと思います。

お二人は自宅で過ごしている中で、家族に対して
物盗られ妄想を抱き激しい衝突を繰り返し、

しまいには警察を呼ぶ事態となり、そのまま警察に連れられ入院となりました。

お二人とも食事や入浴、トイレなどの日常生活にはさほど困ってはいませんでしたが、

健忘がありその日に食べた物を思い出せないばかりか、今が何月なのかも答えられないほど認知機能の低下が進行していました。

そんなお二人が入院して、同じ空間で過ごすことになったのですが、

入院した当初から、同年代の女性同士でもあり、また「家族に入院させられた」という同じ境遇ということもあり、

お互いに不満の捌け口となり、さらには意気投合し、いつ見ても行動を共にするほど仲良くなったのです。

あまりに密着しすぎていたため引き離した方がいいのでは、と思っていた矢先、案の定お互いに物をなくし、盗った盗られたと言い争いだしました。

入院前には、警察を呼ぶほどの事態に至った方たちでしたから、また同じような事態を繰り返すのかと思われましたが、

意外にも入院しているお二人の間ではそうはならず、
その日のうちに何事もなかったかのように元通りの関係性に戻ったのです。

その後も事あるごとに同じような事態を何度か繰り返しはしましたが、大ごとには至らずに経過しました。

これは我々医療者に対しても同様で、むしろ礼儀正しくとりつくろったりで、怒りがエスカレートすることはありませんでした。

知り合ったばかりの赤の他人介護者とは大きな揉め事には至らず、一方で本来一番の理解者であるはずの家族に対しては、

長期間に渡り延々と(自分がどこに置いたのかを忘れた)物を盗ったと責め、暴言を吐き続ける、

こういったことは家族との心理的/物理的な距離が近すぎるが故に起こってしまうと言えます。

おわりに〜関係性を保つ距離感とは〜

高齢の両親との残された時間をどう一緒に過ごしていくのか、

できる限り一緒に過ごしたいと思うのとは裏腹に、お互いの距離が近すぎると、うまくいかないばかりか破綻してしまうケースも少なくありません。

逆に高齢の親を施設や老人ホームに預けて、
病院の受診時たまの週末に施設から連れ出して
一緒に外出する、

そういった関わり方をしている親子の方がうまく関係性を築けている印象があります。

もっと言うと、認知症に限らず全ての親子において当てはまることかと思います。

例え自分の子供に対してであっても何を言っても許されるわけではなく、お互いが尊重し、

適切な距離を保ちつつ接することは、家族間の良好な関係性を保つ上で必要なことと思うのです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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