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日光が怖い

たしか中学2、3年生くらいの頃だったと思う。

最初の異変は部活のときで、腕時計をはめていたあたりが猛烈に痒くなり、蚊に刺されたようなぶつぶつがいくつもできていた。その時は手首だけで、蕁麻疹であるという認識もなかった。

どんな経過を辿っていったかは忘れてしまったが、最終的には日光に当たっていた部分全てが猛烈に痒くなり、蚊に刺されたような平べったい湿疹が広がり、熱をもって真っ赤に腫れ上がるようになってしまった。半袖を着ていると服で覆われていた部分とそうでない部分の境目がくっきりと分かれていた。
顔なんて悲惨で、人相が変わってしまうこともあった。
頭皮も例外ではなく、頭皮がじんじんして腫れているのがわかった。

夏場は数分でアウト。曇りでも症状は出る。
冬も日差しが弱いからと油断していると痒くなってくる。

対策はとにかく日差しを避けることのみ。日傘さえあれば大丈夫。
ただ、遮光性の低い日傘だとかゆみが出ることもあったので、がっつり遮光できるちゃんとした日傘でないとダメだった。
ちなみに日焼け止めなんて全く効かない。
紫外線カットガラスも全く効かない。
帽子もダメ。アゴや首、手が日にあたってしまう。

あとは長袖長ズボン必須。
日傘をさしていても斜めに入ってくる日差しが気づかないうちに当たり、痒くなる。
スカート、足首が出るズボン、サンダルなんてもってのほかだ。
一度、どうしてもサンダルが履きたくて履いて出かけたところ(アホだった!)、当然のことながら足に日が当たって腫れ上がり、サンダルが脱げなくなってしまったことがあった。

とにかく日が当たらないように。それしかなかった。
大人になった今は全然気にしないが、中学生や高校生の頃は周りの目が気になり、日傘をさすのが恥ずかしくて、日光に当たって蕁麻疹が出て辛い目に遭うなんてこともよくあった。

体育の授業や体育祭のときが一番困った。
日傘&長袖長ズボンで授業に出るしかない。
みんな半袖短パンなのに私だけ上下ジャージ。日傘をさしてマラソン、日傘をさして100m走、日傘をさしてダンス。
恥ずかしくてできなかった。
結局外で行われる体育の授業は休んだ。体育祭も欠席。
授業の間何をしていたんだろう、私(笑)。
覚えていない。

たまに無理して出席して、蕁麻疹に苦しんでいた記憶もある。

母からも先生に説明してもらったが、当然のことながら授業に出て何かやらないと先生だって何も評価できない。
結局、体育の成績は1か2だったと記憶している。

病院は、発症してすぐのころに連れて行かれた。
アレルギー専門医院みたいなところに通って、毎週注射をしてもらった。
なんの注射だったのだろうか。
これといった改善は見られず、通うのも大変だったのでそのうち行かなくなってしまった。


ネットで調べると、私の場合は日光に当たって症状が出る「光線過敏症」のひとつである「日光蕁麻疹」と思われる。ある日突然症状が出るそうだ。でも、ある日突然病気になるなんてことはなく、気づかないか気にも留めないレベルで何かしらの異変は少しずつ起きていたはずだ。
紫外線ではなく可視光線が要因であることが多いそうだ。私の症状から言っても可視光で出ているとは思うが、本当にそうなのかは詳しい検査をしないとわからない。
とにかく物理的に日差しを避ければ症状は出ないので、そうするしかない。

そもそもなんでこんなことになったんだろう。
原因はなんだったんだろう。
ここで言う原因は「日光」ではなく、もっとおおもとにあるもののことである。

日光が私の皮膚に当たることにより、皮膚で反応が起き、何らかの物質が生成される
→その何らかの物質が異物として認識され、抗体が作られる
→抗体が肥満細胞の表面に結合する
→また光を浴びると同じように反応が起き同じ物質が作られる
→その物質が肥満細胞上の抗体に結合
→肥満細胞からヒスタミン等の放出が起こり、蕁麻疹が出る。

そんな感じの流れだとは思うが、そもそもなぜ日光が当たると皮膚で反応が起きるようになったのか。。。?

これまでの自分を振り返ると、日光蕁麻疹があるため、自分で自分の行動にかなり制限をかけてきたと思う。
日光に当たりそうなことは極力避けていた。
アウトドア系のことは一切やらない。
車の運転も確実に日が当たるので厳しいと思い、免許は取らなかった。

「物理的に日差しを避ける」という行動をとってきたことが、日光に当たる当たらないということ以上に色々なことに影響を及ぼしていたと思う。
引きこもりがちになったり、キャンプやバーベキューに誘われても断っていたので、「人付き合いを避ける人」と周りに思わせてしまったり、なかなか行動を起こせなかったり。
日光蕁麻疹のせいにして、「行動しない」選択をして自分で自分の楽しみとか可能性を奪っていた気がする。

例えば服装。
一昨年までは真夏でも必ず長袖を羽織っていた。
当然、汗だくで大変苦痛だが、蕁麻疹が出るよりはずっとマシだ。
昨年、家から歩いて行ける距離の職場に転職し、仕事の忙しさもだいぶ和らいだ。その影響か、なんとなく心の余裕を持てるようになった。
思い切って半袖で通勤してみたら、意外と大丈夫だった。

実は最近、幸いなことに若い頃に比べ症状がだいぶ落ち着いてきた。症状が治まるまでの時間も早くなった気がする(それでも、これくらいなら大丈夫!と油断すると蕁麻疹が出てくる)。

会社帰りに半袖を着て歩いていると、日傘をさしていても腕に西日が当たって痒くなるけど、割とすぐに治まる。
というわけで、今年の夏はお気に入りの半袖を着て通勤できた。

今まで日光蕁麻疹のせいにして自分に制限をかけてきたけど、最近は症状も落ち着いてきていることだし、色々な日よけグッズもあるので工夫次第で日差しを避けることはいくらでもできる。
あれもダメこれもダメな人生はつまらない。
油断して蕁麻疹が出ても、時間が経てば治る。
何事もやってみないことにはどこまで大丈夫か、どう工夫すれば大丈夫なのかも分からない。それがわかればできることも増えるかもしれない。

今年からはもう少し、自分の行動範囲を広げてみようと思う。

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