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目の前に猫がいるというのに

お気に入りの猫写真集が3冊ある。

まずはこの1冊
『豪華写真シリーズ2 ねこ ma minette』 西川治 株式会社ベストセラーズ 1971年発行

ma minetteとはフランス語で「私の子猫」という意味だそう。

何年か前に京都に行った時、一乗寺にある大好きな書店、「恵文社」で偶然見つけた。

20〜30代の頃、毎年のように京都に行っていた。
恵文社をはじめ京都には面白い本屋さんがたくさんあるので、本屋さん巡りもよくやっていた。
恵文社に行くと2時間は出てこられなくなっていた(笑)。

出版年は1971年。
もう50年以上前の本だ。
軽く調べたが、今は手に入れるのが難しいようだ。

最初の方は猫の写真の下に日にちが書いてあって、切り取って1972年のカレンダーとして使えるようになっている。
カレンダーが終わると、なんともかわいらしい写真が次々とあらわれる。

食卓を興味津々な様子で歩き回る子猫、外で自由に遊び回る子猫、すやすや眠る子猫、ふわふわの子猫。
大人の猫たちも時折いる。

かわいらしいには違いないが、とにかく猫の愛くるしさを全面に出した写真集とはどこか違う。
一瞬の歩み、一瞬の視線、何かを狙う表情、風を切って外を駆ける姿。
猫の自然な様子を捉えている。
なかにはピンボケや逆光の写真もあり、そこがかえっていい。
かわいいけどかわいすぎない。

いや、やっぱりめちゃくちゃかわいい。

ちなみにこの表紙の写真は、アメリカの作家、ポール・ギャリコの『猫語のノート』の表紙にもなっている。
この写真集の最初の方にも、ポール・ギャリコ氏からの賛辞が寄せられている。


2冊目は
言わずと知れた動物写真家、岩合光昭さんの写真集。
『Love Cat Love 愛するねこたち』 岩合光昭 講談社 1978年発行

こちらも古い本。
若かりし頃の岩合さんの猫写真集だ。
岩合さんのファンならご存知の猫だと思うが、「海(かい)ちゃん」も登場している。

前半は海ちゃんを始め、岩合さんが一緒に暮らした猫たちの写真。
中盤はさまざまな品種の子猫たちの写真。
後半は猫の親子たちの写真。

岩合さんの猫の写真は外で撮った写真が多い。
「世界ねこ歩き」で出会う猫たちやこれまで出版されてきた写真集も外にいる猫たちがたくさん登場する。
飼い猫だけど外に出てる子もいるし、野良猫もいる。
そしてみんな生き生きとしている。

この写真集も、スタジオのような場所で撮った写真もあるが、多くは外で撮っている。

今は室内飼いが主流だし、マンションなどでは室内で飼うしかないだろう。
我が家の2匹の猫たちも室内で暮らしている。

猫を外に出さない私が言うのも矛盾しているが、猫が本来生きる場所は外(自然)だ。
色々な意見はあると思うが、猫が一生を家の中で生きていくというのはすごく不自然なことだと思う。

野良猫はかわいそう(かわいそうとは思わない人ももちろんいる)。
それは人間が猫たちを保護するべき対象として見てしまうからであって、あくまでも人間のものさしだ。
おそらく、猫の持つかわいらしさや、人になつく性質など、思わず守ってあげたくなるような生き物であることも一役買っていると思う。
私は汚れた野良猫を見るとなんとなくかわいそうと思ってしまうが、外にいれば汚れるのは当然だ。

かわいさばかりがもてはやされる猫だが、本来は自然の中で生きる動物だ。
そして猫は強い生き物だ。

とは言っても、都心や住宅密集地ではほぼ全てが人工物で、その中で猫たちが生きて行くのは確かに過酷だと思う。
食べるものも少ないだろう。
眠る場所も子育てする場所も少ないだろう。
交通事故にあうかもしれない、猫が嫌いな人間にいじめられるかもしれない。

私も様々な不安があって外には出せないでいる。


もともと野生のリビアヤマネコが人間と暮らし始め、イエネコとなっていったのは約1万年前からと言われている。
だいぶ人間との暮らしに馴染んでいる。

外に出したらダメとか外に出すべきとかではなく、
猫が外に行きたい時は外に行き、家の中に入りたい時は家に入る。
そういう、猫が自由に行き来できる暮らし方が猫にとってはストレスになりにくいと思う。
もちろん、家の中が好きで外に出たがらない猫は室内で過ごせばいい。
要するに、猫の好きなように過ごせるのがいい。

住宅事情とか周囲の環境の問題とか色々あってなかなか難しいが。。。

最近私自身が猫との暮らし方について模索中で、いろいろと思っていることを書いた(あくまでも私一人の意見です)。

そういうわけで、家の中だと猫の行動がどうしても制限される。
岩合さんの猫の写真から伝わってくる猫の生き生きとした様子は、
猫たちの本領発揮というか、彼らが本来生きて行く舞台である外で撮られているからなのかなと思った。

もちろん、岩合さんの動物写真家としての意識や技術は言うまでもなく(私が言うのもおこがましい限りですが)。


3冊目は
岩合さんに影響を与えた写真集として知られる猫写真集
『85枚の猫』 イーラ 1996年(初版は1952年)  新潮社

前書きは岩合さんが書いている。
岩合さんは中学生の頃にたまたまこの本を手に取り、衝撃を受けたそうだ。

この写真集、とにかくかわらしい。
子猫の写真が多いのだ。
ページをめくっていると、いつの間にか顔がニヤついている(笑)。

猫とネズミのツーショットなんてのもある。
どうやって撮ったのかと不思議に思う写真もある(前書きで岩合さんが種明かしをしている)。

だいぶ前だが、私は保護猫団体でボランティアをしたことがあった。
ある日、やたらかわいい子猫が保護されてきた。
案の定みんなでキャーキャー大騒ぎとなった。

その時その場にいた団体の代表がボソッと一言。
「子猫は悪魔ですよ」
子猫の魔力は人間を狂わせるのだ。


この写真集は多くがスタジオで撮られているので、いかにもねらったような印象を受ける人もいるかもしれない。

彼女自身、この写真集を出した1952年にアフリカを訪れ野生動物を撮影したことがきっかけで、野生のままの動物たちを撮影することを好むようになったという。

※余談だが、この『85枚の猫』に載っていたある猫の写真が、とある医学系の学術論文に盗用されているのを偶然見つけてしまった。その写真の他にももう1枚、明らかに盗用と思われる猫の写真が掲載されていた。詳細は書かないけど、どういう経緯があったのかは知らないが、ただただ呆れた。



とここまで猫写真集について熱く語ったが、目の前には愛する2匹の猫がいる。
今日もアンモニャイトやら香箱座りやらでかわいさ全開の2匹。

そして私はいつものように、とても人には聞かせられないような猫撫で声で彼らに話しかけるのであった。

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