見出し画像

路面電車での出来事

ある雨の日。路面電車に乗っているとき、下校時間がかぶったのか、何人かの小学生のグループが乗っていた。

親指を立てて本数を当てる、こどもが大好きな例の遊びや、「ハワイハワイ」とか地名を唱えながらやる例のじゃんけんで盛り上がっていた。

令和になっても、地域が違っても、微妙に暇なときのこどもの遊びは変わらないだな〜と、微笑ましく見守っていた(後者のじゃんけんは本当に不謹慎だからせめてグリコとかパンダとか可愛らしい言葉に変えてほしい)。まぁ多少やかましかったけども、満員電車というわけでもなし、こどものことだし、迷惑ってほどでもないし〜と思っていたら、一時停車のときに運転手さんがやってきた。

「他にも人いるやろ、騒いだりジャンプしたり濡れたランドセルを向けたりする人が隣にいたら自分やったらどう思う!?」(意訳)

ごもっとも…。

運転手さんが偉かったのは、「騒ぐな!」「静かにしろ!」ではなく、はしゃいだり騒いだりしている人がいるとなぜだめなのかちゃんと考えさせていたところ。それに、こども相手でもちゃんと相手の顔を見て、わかりやすく、でも毅然と注意したところ。

正直、車内アナウンスで「お静かにお願いします〜」って流すだけ、っていう手もあったと思う。そのほうが絶対に楽。でもそうはせず、ちゃんと相手に考えさせて叱ってあげていたのがすごい。教師でも何でもないのに、こどものこと考えてあえて厳しく言ってあげているんだろうなって思えた。私の妄想かもしれないけど。

案の定、小学生たち、しゅーんってなっちゃって、その後はすっごく静かに座っていた。なぜ叱られたのかわかったから反省できたんだと思う。「怒られちゃった」ではなく、「やっちゃった」の顔をしてた。

そのあと、近くに座っていた女性が「次からちゃんとすればいいんよ」って、小学生たちに声をかけていたのも印象的だった。たぶん全然知人とかでもない、ただ乗り合わせただけの人。

こども相手でもちゃんと向き合って、きちんと叱ってあげられる厳しさ、落ち込んだこどもに寄り添ってフォローの言葉をかけられる温かさ。どちらも優しさで、こどもを社会の宝だと考え、大切に思ってのことだと思う。

こどもたち、今日は怒られちゃったけど、それでいいんだよ。誰も君たちのことを嫌いになんて思っていない。運転手さんは本当は怒ったんじゃなくて叱ってくれたんだよ。女の人が言っていたように、次からちゃんとすればいいんだよ。次乗るときは、周りの人のことちゃんと考えれるよね。

公共交通機関を利用して、こんなに温かな気持ちになったことはない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?