【葬送儀礼2】土佐の葬送儀礼 いざなぎ流の通夜、葬式

!!注意事項!!

私個人の経験した葬送儀礼であり、一般的ないざなぎ流の祭礼がどのようなものかは分かりません、あくまで一体験記です。また、葬儀社の斎場で行ったため、いざなぎ流の慣習ではなく、高知一般での慣習や葬儀会社独特のサービスが含まれている可能性もあります。


葬送儀礼の流れ

人が亡くなった時のいざなぎ流での葬送儀礼の流れは、基本的には神道形式の葬送儀礼と同じ。まず、通夜祭、葬式を行い、その後、十日祭、五十日祭を執り行う。通夜や葬式に特別な日取りの制限はない。
仏式で言うと、十日祭は初七日、五十日祭は四十九日または忌明けのようなもの。十日祭は葬式とまとめて執り行ってしまうこともできる。

祭壇

焼香は用いない。ろうそくに火を灯す。
祭壇の横、向かって左に剣、右に鏡と勾玉が、それぞれ緑色の長細い旗の前に飾られる。
祭壇の最上段、神饌として酒、米、塩を祭壇向かって右側に供える。左側には鏡餅を供える。
その他の供え物は海、川、山の三種類のものを用意する。海のものは昆布やワカメなど。川のものは小魚の煮干しなど。山のものは果物などの他、最近では既製品のお菓子を用意することも多い。海、川、山を祭壇中段に右から順に並べる。
祭壇の手前、右側に後に参列者が使う玉串を、中央に大榊を並べる。また、ろうそくも2本ここに置く。

納棺

通夜の前に故人を棺に納める。
故人にはあの世への道中のお弁当をもたせる。特に縛りはなく、故人の好きなものでもコンビニのおにぎりでもよい。
また、遺族は自分の爪と髪を切り、まとめて棺に入れる。切った爪はあの世でのお金となる。

太夫

いざなぎ流の神職のことを太夫という。ほとんどの太夫は農業や会社員など普通の人と変わらない生活をするなかで、頼まれて太夫の仕事をする。
神職ではあるが、仏教や陰陽道も入った民間信仰であるいざなぎ流の太夫なので、装束も独特。通夜や葬式の際には、袷に水色の袴を合わせ、白足袋、草履を履く。通夜、葬式のときには半円を2つ合わせたような形の黒い帽子を被る。笏、錫杖、数珠を持つ。数珠は長く、両端に房飾りが2つずつ、合計4つある。房飾りの形は真言宗のものに近い。

通夜祭

参列者は一般的な喪服でよい。男性はブラックフォーマルに黒ネクタイ、女性はブラックフォーマルに黒ストッキング。真珠の有無は自由。数珠は不要。通夜祭の手順はだいたい以下の通り。

1 祭壇や参列者に対してお祓いをする。

2 神前に対して全員でお辞儀をする。

3 太夫が故人の安らかな眠りを祈る?祝詞を唱える。故人の名は〇〇主命(ぬしのみこと)となる。

4 参列者全員が故人に玉串を手向ける。

焼香はしない。参列者は榊に紙垂をつけた玉串を捧げる。まず、太夫に一礼して玉串を受けとる。次に祭壇に向かい、玉串を立てて一礼する。そして玉串を時計回りに回し、祭壇に捧げ、二礼二拍手一礼をする。柏手を打つ際には音を出さない。
 

遷霊祭

太夫は祝詞を唱え、霊璽(れいじ 白木でできた卒塔婆のような見た目のもの。仏教でいう位牌)に故人の魂を移す。その際、明かりはつけていてはいけないので、太夫の合図で電気を消す。

葬式

太夫が故人と会話をし、故人の希望を聞く。早めに墓に入れてほしいなど。太夫はそれを遺族に伝える。
その後、葬式の儀を執り行う。 だいたいの流れは通夜祭と同じ。
みくじ(御籤?)は太夫が数珠を使って占う。何度か数珠を伸ばし、右手と左手の間にある珠を数える。
太夫が祝詞を唱え、故人が神々の仲間に入れるようお願いする。近くの神々にお願いするが、伊勢、出雲、金毘羅など県外の神々、八十八ヶ所の札所や国分寺などお寺にも祈る。故人は氏神になり、遺族はその氏子となる。
葬儀が終わると、棺に花を入れていく。葬儀会社がカットした祭壇の花を、遺族が故人の周りに入れていく。

火葬祭

火葬場の火葬炉の前で火葬祭を行う。太夫によるお祓い、祝詞の奏上ののち、玉串を代表者が納める。今回は代表を三名とし、最後の一人に合わせ、残りの遺族も二礼二拍手一礼をする。通夜、葬式と同様音は鳴らさない。

拾骨

骨壷は用いない。白い布袋を濡らして絞り、骨箱の中に直接入れる。その中に拾った骨を入れていく。初めに骨を拾う際は、二人一組で行う。次からは一人で一膳の箸を使って拾うことができるが、一方は竹、もう一方は木でできた箸を使うことで、二人で拾ったことになる。骨箱には足から順に体、頭と入れていく。喉仏は前に向くよう、手のひらは合わせるよう配置したが、太夫ではなく、葬儀会社の指示なので、いざなぎ流とは関連性は薄いかもしれない。

精進落とし

太夫は食事に参加しない(今回だけなのか、一般的なのか不明)。食事内容や食材に制限はなく、肉でも魚でも食べられる。通夜、葬式が終わった後も、忌中としての制限として、90日は旅行や家の建築は慎んだ方がよいが、強い禁忌ではない。また、他に求められることもない。

おわりに

大きくは神式の通夜、葬式と変わらないと思う。特徴的だったのは、太夫が数珠を持っていること、その数珠を使ってみくじを行うこと、故人と会話し、その内容を遺族に伝えること。また、仏教や陰陽道の要素も入っていて、民間信仰らしかった。今回は自分の見た通夜、葬式を見た限りでメモしただけなので、先行研究を読むなり、話を聞くなりしてきちんとした形でいざなぎ流を知っていきたい。

参考サイト


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