私の好きな本『桜桃』
今回は私の好きな本を紹介しようと思う。
新潮文庫の太宰治『ヴィヨンの妻』の中に収録されている『桜桃』という作品だ。
あらすじ子供より親が大事、と思いたいと考えている夫は、家庭の父としての悩みや、子供たちへの思いを読者に打ち明けていく。物語の中盤からは、夫婦喧嘩の話になり、居心地が悪くなった夫は、まっすぐ酒を飲む場所に行く。そこで出た桜桃を、極めてまずそうに食べながら、心の中で虚勢みたいに呟く言葉は、子供よりも親は大事。自分の人間としてのエゴイズムと、エゴイズムを捨てて、子供