見出し画像

生命はめぐる/星の降った日



あの日からの夜、真暗な闇の中で、
様々な想いを巡らせながら、
沢山の人が、やはり夜空を見上げたのだろう。

津波の映像も、原発事故も、人々の叫び声も、全てが重くのしかかってくる。
のに、テレビ画面から目が離せない。

私はあの日以降、音楽が作れなくなった。
正確に言うと、作る気がおきなくなった。

私がそれまでに作ってきた音楽がいかに薄っぺらで覚悟のないものだったか、思い知らされた気がした。

私は別にプロのミュージシャンでもないし、積極的に音楽活動をしている訳でもない。私は私の為にしか音楽は作らないものだったので、誰かに聞いて欲しいという欲求も皆無に等しかった。


震災直後、全ての音楽は無力だった。
原発の力で作られた電気を使った音楽が、全て嘘っぱちのように聞こえた。

そんな中、震災後に初めて心許せた音楽が向井秀徳さんの歌う「ふるさと」だった。ナンバーガール・zazen boysの奇妙奇天烈とは違い、誠実に寄り添ってくれた。

生命はめぐる/星の降った日、の2曲ができるまで1年近くを要した。
そしてこの曲を人に聞いてもらいたいと思うまで10年以上かかった。

「生命はめぐる」では日本の四季が一年毎に巡るイメージを借り、生と死を繰り返す中で、いつかまた会えることを信じて生きる希望の為に。

「星の降った日」は、街のネオン・街灯が消え去った夜空に、満天の星が瞬いた情景を元に、自分なりの鎮魂の思いを込めた。


私は、宇宙兄弟の「天国で地獄」というエピソードが大好きだ。
月面でバギーに乗って無人探査機の捜索に向かう途中、事故に遭い、深い谷へ落ちてしまう。
その時、谷底で絶望の中、日々人は満天の星空と対峙することに。

日々人は言う「深い闇に落ちたせいで 死ぬほど星がキレイに見える」

宇宙兄弟 公式サイトより引用

あの日からの夜も、深い闇に身を置いたからこそ見えるものがあったと、自分なりに証明したかったのかもしれない。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?