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禁断の愛の行方

第1章:出会い

田嶋裕一はその日もいつものように建設現場で働いていた。東京の喧騒の中、彼の手は汗と埃にまみれながらも、確かな技術で木材を組み上げていく。26歳の一は物静かで寡黙な性格だが、その腕前は仲間たちから一目置かれていた。
「田嶋さん、そろそろ休憩にしましょうか?」同僚の田中が声をかける。
「うん、そうだな。ちょっと一服しよう。」
裕一は手元の工具を片付け、近くの休憩スペースへと向かった。そこで腰を下ろし、タバコに火をつけると、ふと目に留まったのは、遠くに見える病院の建物だった。
「あの病院、なんか近いうちに行くことになりそうな気がするな。」
彼は冗談半分でそう呟きながら、休憩を楽しんでいた。しかし、その予感は的中することになる。休憩が終わり、再び作業に戻った裕一は、不意にバランスを崩し、足を滑らせてしまった。
「くそっ!」
次の瞬間、激しい痛みが彼の脚を襲った。
裕一は地面に倒れ込み、周囲の仲間たちが駆け寄ってくるのを感じた。
「田嶋さん、大丈夫ですか?救急車を呼びます!」
痛みとともに意識が朦朧とする中、裕一は遠くの病院の建物をび見つめていた。
数時間後、裕一は病院のベッドに横たわっていた。目を覚ますと、周囲には白い壁と無機質な医療機器が並んでいる。脚には包帯が巻かれ、痛みが鈍く残っている。
「田嶋さん、目が覚めましたか?」
優しい声が耳に届き、裕一はそちらを見上げた。そこには、白衣をまとった看護師が立っていた。彼女は24歳くらいに見え、しっかりとした表情が印象的だった。
「あなたが運ばれてきたとき、かなり痛がっていましたね。でも、もう大丈夫です。
治療は無事に終わりましたから。」
「ありがとうございます....あなたは?」
「私は樋口杏香です。この病院で看護師をしています。」
裕一は杏香の笑顔にほっとしながら、彼女の丁寧な対応に感謝の意を示した。
「樋口さん、ありがとうございます。本当に助かりました。」
「いえいえ、これが私たちの仕事ですから。
でも、田嶋さん、無理をしないで、しっかりと治療を受けてくださいね。」
その後も、杏香は何度も裕一の病室を訪れ、彼のケアを続けた。彼女の優しさとプロフェッショナリズムに、裕一は次第に心を開いていった。
「樋口さん、あなたはいつもこんなに親切なんですか?」
「ええ、患者さんが早く元気になるためには、心のケアも大切ですから。」
杏香の言葉に、裕一は彼女の深い思いやりを感じた。そして、その思いは次第に彼の心の中で特別なものへと変わっていった。

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