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禁断の愛の行方2

裕一の決意

退院の日、田嶋裕一はベッドの上で静かに服を着替えていた。脚に巻かれた包帯にはまだ少し痛みが残っていたが、それでも彼の心は軽かった。看護師たちが出入りする病室で、彼は最後の荷物をまとめ、退院手続きを終えようとしていた。病院の白い壁が薄くなり、日差しが差し込む窓から見える青空に希望を感じていた。

「田嶋さん、退院おめでとうございます。」

振り向くと、そこには樋口杏香が立っていた。彼女の笑顔は変わらず優しく、裕一の胸を温かくした。白いナース服に身を包んだ彼女の姿は、まるで天使のように見えた。

「樋口さん、いろいろとお世話になりました。本当に感謝しています。」

「いえいえ、こちらこそ。田嶋さんが元気になってくださって、本当に嬉しいです。」

裕一はその言葉に心からの感謝を感じた。彼女の優しさと献身的な態度は、彼の心に深く刻まれていた。

「これからもお体に気を付けてくださいね。また何かあれば、いつでも来てください。」

杏香はそう言って、軽く頭を下げた。裕一は彼女の言葉を胸に刻みながら、病院を後にした。しかし、彼の心には何かが残っていた。それは、もう一度杏香に会いたいという強い願いだった。

退院後の生活は、以前とは少し違った。脚の痛みは日に日に和らいでいったが、裕一の心には杏香の笑顔が深く刻み込まれていた。彼女の優しさ、そしてその温かな眼差しが、彼の胸を締め付けるようだった。毎日の仕事に戻り、大工としての忙しい日々が続く中でも、彼女のことを考えない日はなかった。

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